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びいどろ時舟 40 【最終話】 

まるで大切な家族の一員が遠くから帰って来た時のように、シンとセマノはカガミをじゃれるように奪い合いながらも、慈しみ大切に扱った。
鏡は利発な質のようで、戸惑うことも多かっただろうが、様子を聞いた管理省が驚くほどの柔軟さを見せた。まるで乾いた砂地に水が染み込むように多くを吸収して行く。
さすがに、まだ地上に下ろすことはできなかったが、いつかはカガミもサンプルを見つけ関わってゆくのだろう。
カガミにも自分たちのように、存在を無くす苦しみに耐えかねて泣き喚く日が来るかもしれない。だが…と、なぜか妙な安堵のようなものさえ感じながら、シンとセマノはカガミを見つめた。
きっと、カガミは過去から未来へ救いをもたらす安らかな希望の贈り物なのだ。

*******

いつか当たり前のように、大きな寝台の上で川の字になりカガミは真ん中で眠る。
カガミの見る夢が、ログを通し立体映像となって枕元に結ばれていた。

「すごいだろう?これは、旧暦の重陽の節句に行われる、諏訪神社の祭礼なんだ。」

「そうか、ずいぶん大きな催しらしいな。音の出ないのが残念だ。」

祭礼は「宮日」「供日」(くにち)とも呼ばれ、やがて「くんち」と言われるようになった。
節句も九月九日(くにち)である。そんな鏡が生きてきた丸山の話を、シンはセマノに語った。
セマノは、カガミの見てきた世界を食い入るように見つめている。

「龍踊(じゃおどり)」「鯨の潮吹き」「太鼓山」「阿蘭陀万歳」といった、南蛮色豊かな奉納踊りは、今も華やかに続く長崎の風物詩である。
謡曲「小舞」を二人の太夫が奉納し、満座の人々のため息を誘ったのもまるで昨日のことのようだ。
千歳太夫の絵踏衣装の華やかさは、例えるなら錦糸は日輪の如く輝き、一指し舞うごとに、牡丹の花弁が恥じて散ると言われた。
まるで天女伝説のように、千歳太夫の噂は丸山だけではなく周辺へと広がっていった。
菩薩の化身と言われた千歳太夫を一目見ようと、徹夜で待った遠来の客で桟敷席も鈴なりで、どこからこれだけの人が集まってくるのかと思う。
老人などはありがたがって、はらはらと静かに涙を零しながら手を合わせる始末だった。
なぜ人々が千歳に逢いたがったのか、今の二人は理解していた。
カガミの腕から流れるログは、懐かしい祭礼の様子を長く投射していた。
失った面差しに、いつか会えると信じて、時の旅を続けようとセマノは決意している。

映像は次々流れて行き、勇壮な龍踊りに変わっていた。
とぐろを巻いた一匹の龍が、隠れた玉(宝玉)をひたすら探している。
十数名もの囃子方が声を掛け、大勢の龍衆に操られる龍が、翻弄されるように激しく動くさまは、まるでのたうちもがいているようだ。追えば逃げ、止まれば誘う操られた存在・・・。宝玉が失ったように見えて、必ずそこにあった。

輪郭の滲んだ千歳が繰り返す言葉を、信じてみようと思った。

「あい。いつか、巡り会いんす。いちど結ばれた縁は、未来永劫切れることはないのでありんすぇ。 姿かたちは見えなくても、愛しい人の魂は側にありんす。」

聖なる太夫が、迷い人を掻き抱いて、蕩ける微笑みをよこした。

「シンさん。鏡をよろしゅうお頼みしんす。」

思わず頷いたシンだった。

*******

遠くパタヴィアで、千歳の胸に抱かれた小さな小吉が、天空を指を指す。

「お母しゃま!おれ星たい!」

きらり。

願いを叶える「おれ星(流れ星)」の軌跡を残して、暁の空にびいどろの時舟が翔けた。



                        びいどろ時舟 ―完―




(*⌒▽⌒*)♪鏡:「ハピエンたいね~!」

(*´・ω・)(・ω・`*)シン、セマノ:「ちょっと、違うんじゃないかな~」「BL的にはね~」

(´;ω;`)鏡:「・・・・違うんね・・・?」

(`・ω・´)セマノ:「「いや!たぶん、ぼくはハピエンだと思う!」

(*⌒▽⌒*)♪鏡:「天神様~♡」

( *`ω´) シン:「おいっ!抜け駆けすんな。」




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8 Comments

此花咲耶  

拍手コメントさま

お読みいただきありがとうございます。(*⌒▽⌒*)♪

実は鏡は此花も好きなキャラクターです。長崎弁がネックでしたが、変換サイトを見つけて使いました。なのでおかしいところもあるかなと、心配していたのですが読み手さまの中に、長崎弁が分かる方がいらして大丈夫と言っていただきました。
一安心です。

セマノと遠い昔のフランスの王子さまのお話を、いつか書きたいと思っています。
大好きとおっしゃってくださって、とてもうれしいです。
此花も感想コメントいただいて、どきどきです。きゅんきゅん~♡(〃゚∇゚〃)

2012/06/18 (Mon) 20:44 | REPLY |   

此花咲耶  

拍手コメントSさま

コメントありがとうございました。(*⌒▽⌒*)♪
間に挟まれて眠っている鏡は、いったいどっちを選ぶのかなって考えるのも楽しいですね♪
あまりにねんねで、書いてて二人が気の毒になりそうです。
きゃあ~、続編リクエストしてくださるんですか?うれしいな~(〃▽〃)
がんばります!(`・ω・´)

2011/08/16 (Tue) 08:11 | REPLY |   

此花咲耶  

鍵付きコメントBさま

お忙しいのに、お読み下さったんですね。うれしいです。ありがとうございます。(*⌒▽⌒*)♪

長崎言葉って、すごくやわらかで素敵です。夢千代日記とか、長崎ぶらぶら物語とか借りて来て、言葉を拾いまくりましたけど此花も、きゅんきゅんでした。
はい、花魁SFでしたね~。番外編を考えたいです。でも、一応資料を読む派なのでいつになりますやら・・・です。
一応終わりのつもりなんですけど…Σ( ̄口 ̄*)BLなのに、キスだけで逃亡しかかっていました。
どこがアダルトやね~んと、自分でも思ってます。
川の字から、つんつんしないといけませんね。

後日談・・・ないテク振り絞ってがんばります!(`・ω・´)←ほんとにないし。

コメントありがとうございました。うれしかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2011/08/16 (Tue) 00:53 | REPLY |   

此花咲耶  

tukiyo さま

> これから鏡はふたりに思いっきり可愛がってもらいたいわ~。

(*⌒▽⌒*)♪「そうします~」←たぶん、思いっきりわかってないな・・・。

> 鏡はまだ腹出して?おしり出して?寝てるような子供だから今は可愛い寝顔を見ておっさんふたりで語らうしかないわね~ww

たぶん、「寝巻のほうが慣れとうからすいとっばい。(`・ω・´)」とかいいながら、お腹もおしりも丸見えで寝てると思います。おっさん…あはは・・・頑張れ、おっさん。手玉に取られてしまえ~!(*⌒▽⌒*)♪

> もう少し大人になったら鏡はどちらを選ぶのかしら~。

第三者が出てきたりしたら、立場ないですね~。案外小悪魔っだったりして。

コメントありがとうございました。うれしかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2011/08/16 (Tue) 00:46 | REPLY |   

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2011/08/15 (Mon) 23:38 | REPLY |   

tukiyo  

最終話お疲れさまですー

これから鏡はふたりに思いっきり可愛がってもらいたいわ~。
鏡はまだ腹出して?おしり出して?寝てるような子供だから今は可愛い寝顔を見ておっさんふたりで語らうしかないわね~ww
もう少し大人になったら鏡はどちらを選ぶのかしら~。

2011/08/15 (Mon) 22:57 | EDIT | REPLY |   

此花咲耶  

鍵付きコメントM様

Σ( ̄口 ̄*) 川の字……3P!・・・・にすれば良かったのか~・・・

此花は、こんなうっすらしか書けないで、悲しいっす。(´;ω;`) がんばります~
再掲載されている作品で、きっと誰かがまたこっちの世界に転がってくると思います。
大いなるお話で、人生変わった私としては多くの方に読んでいただきたい気持ちでいっぱいです。
コメントありがとうございました。うれしかったです~(*⌒▽⌒*)♪

2011/08/15 (Mon) 22:03 | REPLY |   

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2011/08/15 (Mon) 21:39 | REPLY |   

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