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続 星月夜の少年人形 16 

花村の携帯が、騒ぎ立てた。

「はい、花村。・・・ああ?桃李が、わんわん泣いてる?だろうなぁ・・・」

ちらと、紘一郎を見やって「スワンで、ちびトラが潰れているそうだ。回収して来い。」と笑いかけた。まるで追い払うように、ひらひらと手を動かした。

*******

ゲイバースワンのカウンターに、突っ伏して桃李は涙でぐちゃぐちゃになっていた。

「何とかしなさい。営業妨害よ。」

スワンのママはすっかり機嫌を悪くして、腕組みをしたまま顎で指図をした。ここでも紘一郎は小さく頭を下げてすみませんと言うしかなかった。全て自分が蒔いた種だ。

「ほら。桃李、帰るぞ。」

「やだぁ・・・紘ちゃんのばかぁ・・・。」

食前酒一杯で、良くこれだけ泣き喚けたものねと自衛隊上がりのママが、ため息を吐く。逞しい腕をむき出しにした色っぽいドレス姿で顎をしゃくった。カウンターで梅酒を飮んでいた客のグラスを、水と間違えてほんの一杯飲みほしただけで、すっかり桃李は酔っ払っていた。

「おまえ、泣き上戸だったのか。」

桃李は、しくしくと泣き続けていた。身体中の水分が全部涙になってしまったようだ。腕をつかんで背中に乗せたら、首にきゅっと腕を巻き付けて、背後から紘一郎を抱きしめた。くすん・・・と鼻が鳴る。

「桃李、帰ろう。おれが悪かったよ。」背負った尻を、ぽんぽんと叩いた。

「おれの為に、一生懸命頑張って仕事したんだってな。誤解して、怒鳴って悪かった。」そう言ったが桃李の返事は一つだけだった。

「紘ちゃんの、ばか・・・。」

「うん。ばかだよなぁ・・・桃李を誰かにとられた気がしてさ、おれ、やきもちを焼いたんだ。桃李が、おれの知らないところに一人で行っちゃう気がして、悔しくなったんだ。ガキだな。」

泣き上戸の桃李は、聞いているのかどうかわからないまま、背中でしくしくと泣き続けていた。スワンのママにもう一度頭を下げ、紘一郎は今度こそ背中の桃李を支える手に力を込めた。
ネオンサインの溢れる町で、見上げた夜空は、雨の日でも変わりなく晴れて見える。
雲の上ではまたたく星の光が月のように明るく輝いている日もあるのだろう。

*******

グラビアを飾った雑誌の売れ行きが良く、数社から声がかかり桃李は少しずつ仕事を増やしていった。無名のモデル、「桃李」は透明な少年性を売りにして、写真集を出すことになった。ユニセックスのどちらとも取れるように、写真を陶器の肌に加工したら球体間接人形にも見えるだろうと成瀬は大張り切りだった。昔、こういう写真を山と撮っていたから、嗅覚が働くのだと言う。

「俺は、両方の気持ちが分かるからね。桃李は女の子のなりたい男の子になればいい。」

「どういうこと?」

「説明つかないなぁ・・・。まあ、おちんちんの無い、少年ってことかな。無性の天使ってことだ。」

「おれ、ちゃんと付いてるのに~。」

桃李は不服そうだったが、編集者はそれで行きましょうと大乗り気だった。桃李の初写真集には、「星月夜の少年人形」というタイトルが付いた。表紙のぽかりと宙を見つめる少年人形の瞳には何も写っていない。

『ゴミ捨て場で、青年に拾われた人形は、青年に恋をして夢見る瞳と心を得る。』

言葉を持たない少年人形は、連れて行かれた青年の部屋で毎日、青年を見つめていた。
長い願いの末に、流星の流れる星月夜のある夜、ついに人形の願いは叶い一夜だけ生身の人間の姿に変身した少年人形は、愛する青年と結ばれる。
夢の叶った少年人形は、うっとりと青年の胸に頬を寄せるが、それは哀しい少年人形の見た夢に過ぎなかった。

青年に想いを寄せる女性は、青年が拾ってきて大切にする人形を毛嫌いしていた。じっと物言いたげに見つめる瞳を気味悪がって、青年の留守に人形を捨ててしまう。
雨に打たれたゴミ捨て場に、情け容赦なく打ち捨てられた汚れた人形は、寒さに震え膝を抱き泣いていた。人になって愛された人形は感情を持ち、もう物言わぬ人形には戻れなかった。夜半、柔らかな肌に、零れ落ちる雨は冷たく人形の手足を凍えさせた。
足音が近づき、闇に飮まれかかった少年の耳に青年の声が響く。濡れた人形は、再び青年の腕に抱かれた。

「捜したよ。さあ、一緒に帰ろう。」

おずおずと、少年人形は愛する青年に腕を伸ばした。
いつしか陶器の肌は、柔らかな少年のものとなり人形の夢はかなった。

*******

「おれね、この話、すげぇ好き。」

送られてきた粗筋を読んで、桃李は涙ぐんでいた。

「ハッピーエンドだね。『捜したよ・・・桃李』って、言ってみてよ、紘ちゃん。」

相手役は劇団の人間を予定していたが、桃李がどうしても紘ちゃんがいいと言い張り、とうとう写真だけだから素人でもいいだろうということで、一度だけ出演することになった。
桃李の頬にはまだ青い痣があり、紘一郎は頷くしかなかった。

『捜したよ・・・桃李。さあ、一緒に帰ろう・・・?』

互いに、ただ抱きしめるだけの理由だったかもしれない。






(`・ω・´) 後、一話で終わるかな~・・・と思っています。

桃李の写真を描こうと思っています。いつになるかわからないけど、頑張るね~

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4 Comments

此花咲耶  

tukiyo さま

> >桃李の写真を描こうと思っています。いつになるかわからない>けど、頑張るね~
>
> うん。頑張ってね~wwきゅんきゅん
>
がんばりました~~(`・ω・´)
もう少し、描ける子だったんですけど、ブランクが長すぎて大変です。

> 桃李ちゃんも後1話か~寂しいですぅ~しゅぼしょぼ

お読みいただきありがとうございました。あ、みぃくんとあってない・・・ま、いいか~

コメントありがとうございました。うれしかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2011/07/04 (Mon) 01:58 | REPLY |   

此花咲耶  

鍵付きコメント様

最終回になりました。
書けなかった部分とかは、そのうちまた…と思います。

少年人形のお話、気に入って下さってありがとうございます。此花のオリジナルです。
これもいつか、形にしてみたいと思っていたネタですが、童話ですね、きっと。

桃李はみぃくんのお兄さんです。すごく綺麗なはずですが、画力が追い付かないです。ごめんね~~
がんばりましたが、精いっぱいです。(´・ω・`)

いつもお読みいただき、ありがとうございました。コメントありがとうございました。

うれしかったです。きゅんきゅん~~(*⌒▽⌒*)♪

2011/07/04 (Mon) 01:55 | REPLY |   

tukiyo  

>桃李の写真を描こうと思っています。いつになるかわからない>けど、頑張るね~

うん。頑張ってね~wwきゅんきゅん

桃李ちゃんも後1話か~寂しいですぅ~しゅぼしょぼ

2011/07/03 (Sun) 09:51 | EDIT | REPLY |   

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2011/07/03 (Sun) 06:34 | REPLY |   

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