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続 星月夜の少年人形 13 

薔薇は、もちろん生花が良いのだろうが、予算の都合で造花と両方を使った。羽毛を敷き詰め横たわった桃李は艷めかしいだけでなく、性を感じさせない清らかな印象を受ける。
それは素の桃李を知っている、花村や成瀬にとっても意外なことだった。
カメラ写りの良いのに驚いた成瀬が、途中から一緒に映るはずだった青年を外して、桃李だけに夢中でシャッターを切った。

「花村さん。俺、帰ってすぐに写真に手を入れます。悪いけど、後片附けとかお願いできますか?なんか、脳内に浮かんだイメージが逃げない内に形にしたいっす。」

こういう仕事に慣れているはずの成瀬が夢中になるくらい、桃李はうっとりと綺麗な被写体だった。町を歩くたび声を掛けられるのも無理はない。きっと、彼らには成瀬のように桃李が蜜を湛えた花に見えているのだろう。天使のように限りなく清純な姿で人を惹きつけるのに理由はいらなかった。
雑誌の一コーナーに過ぎなかった注文も、写真を見せたら結局、特集になってしまい後々、その手の雑誌にしては珍しく完売することになった。誰もが知る有名なネットの掲示板で、騒ぎになっていたのは、パソコンを持たない桃李が知る由も無かった。

*******

数日後。

目的通り金を手に入れた桃李は、紘一郎の住むアパートを訪ねていた。笑顔で茶封筒を差し出した桃李に、紘一郎はいぶかしげな顔を向けた。

「どうしたんだ?桃李・・・こんな、大金。」

「お年玉を貯めてたから・・・って言いたいけど、紘ちゃんはおれがそんなもの貰ったこと無いの、知ってるからね。あのね、おれにも出来る仕事紹介してもらって、アルバイトしたんだよ。」

「アルバイト?どこで?」

「ふふっ、紘ちゃんには内緒・・・っ!」

突然、桃李の頬が派手な音を立て、身体が跳ね飛んだ。

「馬鹿野郎っ!何でそんなことしたんだよっ!」

桃李は紘一郎の怒りの意味が分からず、青ざめていた。元々、紘一郎は激昂しやすい質を持っている。だが、それはこれまで一度として、桃李には向けられたことの無いものだった。

「な、何するんだよ・・・、紘ちゃん。だって・・・紘ちゃん、勉強とアルバイトで大変じゃないか。おれ、紘ちゃんが大変なの知ってるんだもの。だから・・・。」

まさか、否定されると思わなかった。殴られた頬がじんじんと熱を持っていた。
「ありがとう、桃李。」そう言って笑ってくれると思っていた。「すげぇ、助かる。」そう言って、ぎゅっと抱きしめてくれるはずだった。
余りのことに、じわり…と、目元が熱くなる。泣きそうだったが、伝えなきゃと思って我慢したら声が上ずってひっくり返った。

「紘ちゃん。大学院、行きたいんだろう?誰よりも頭いいんだからさ、おれ・・・紘ちゃんには勉強してほしいよ・・・?」

封筒の中身を確かめた紘一郎は、桃李に封筒ごと金を投げつけて寄越した。
ぱさ・・・と、桃李に当たって落ちた封筒から、札束が覗く。
花村の気遣いが、かえって紘一郎に誤解をさせていた。

「とっとと、持って帰れ!」

「・・・え?」

「おれはな、お前に馬鹿な真似させてまで、勉強続けたいとは思わない。汚い金で親切ごかしされるなんざ真っ平だ。それを持って、さっさとおれの前から消えてくれ!でないと、何をするか分からないぞ!」

「紘ちゃ・・ん・・・。」

桃李は酷くショックを受けたが、泣かなかった。むしろ、硬直してしまったように、その場で紘一郎を見つめたまま強張っていた。喉元にこみ上げてくる苦い涙を、何とか嚥下し薄く笑ってさえ見せた。

「・・・め・・・いわく、だなんて・・・思わなかった・・んだ。おれ、紘ちゃんのこと、本当の兄ちゃんだと思ってて・・・好きだから、心配だったから、ちょっとでも力になりたかっ・・・。」

背中を向けたままの紘一郎に、何とか絞り出すように声を掛け、足元の封筒を拾ってきちんと封をすると、もう一度置き直しドアを閉めた。

アパートの外壁に張り付けられたような、粗末な階段は昇降の度にがたがたと揺れた。
錆た階段をいつも、軽く駆け下りているのに今日は、足が重くてもつれた。
最後の三段を、足を滑らせて転んでしまった桃李の膝小僧に、血が滲む。

「い・・ったぁ・・・」

「紘ちゃん、おれ馬鹿だもん・・・意味わかんないよ。何がいけなかったのか、おれに判るようにちゃんと教えてよ。何で、怒るんだよぉ・・・・紘ちゃんの、ばか・・・え~ん・・・。」

擦りむいた膝が痛いのか、傷付けられた心が痛いのか、夕暮れの消え行く太陽のせいかわからない。何もかも失った気がして、とうとう桃李はその場で膝を抱えて泣いた。
桃李の傍にいるのは、長く伸びた影だけだった。





たぶん、後日の会話。

ウワァァ-----。゚(゚´Д`゚)゚。-----ン!!!!桃李:「紘ちゃんのばか~~~!」

ヾ(。`Д´。)ノ紘一郎:「金のためなら、お前は何でもやるのかよ~~!」

(´;ω;`) 桃李:「何でもって・・・?モデルしちゃいけなかったの?」

(°∇°;) 紘一郎:「え?・・・モデル・・・?おれ、てっきり・・・」←




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4 Comments

此花咲耶  

美月さま

> とっても、美しい写真がとれたと思ったのに。
> がんばったのに。
> 紘ちゃん、勝手に勘違いですか?

(´;ω;`) 「がんばったのに、勘違い~~~」
>
> なんてことだ……。
>
きっと誤解は解けるはずです。早くぎゅっとしたいです。

> しかし、やはり、あいかわらず、全体に広がる透明感のある雰囲気が
> 好きでございます。

わ~い!(*ノ▽ノ)キャッありがとうございます。うれしいです。

> 桃李の写真、みたいなぁ。(ため息)

画力がもう少しあれば描いてみたいです。小説書いてると絵を描く暇がないし、絵を描いてると文章が止まります。一日が、もう少し長ければいいのにと思います。
へたっぴだけど、描いちゃおうかなぁ・・・
コメントありがとうございます。うれしかったです(*⌒▽⌒*)♪

2011/06/30 (Thu) 22:09 | REPLY |   

此花咲耶  

けいったんさま

> 桃李、お初の仕事を 頑張ったのに~(´。・ω・。`)シクシク

(´;ω;`) 「頑張ったのに、紘ちゃんが怒った~」
>
> あまりの大金で 桃李が良からぬバイトをしたと 紘一郎は、思っちゃったんだぁ。

そういう誘惑の多い町に住んでいる設定です。可愛い子は、簡単にお金になると紘一郎も知っているのだと思います。
>
> 真っ当とは 言いがたいけど でも 紘一郎の想像したよりは・・・(:。・ω・)bd(・ω・。:)ネー♪

きっと、きれいな写真のはずです。
>
> 桃李とって 紘一郎が大切な様に 紘一郎にとっても 桃李が大切なのですから。
> ゚+.(*´pωq`)゚+.バカァ...byebye☆

色々、ばれてるなぁ・・・
コメントありがとうございました。うれしかったです。(*⌒▽⌒*)♪


2011/06/30 (Thu) 22:03 | REPLY |   

美月  

あらら

とっても、美しい写真がとれたと思ったのに。
がんばったのに。
紘ちゃん、勝手に勘違いですか?

なんてことだ……。

しかし、やはり、あいかわらず、全体に広がる透明感のある雰囲気が
好きでございます。
桃李の写真、みたいなぁ。(ため息)

2011/06/30 (Thu) 21:57 | EDIT | REPLY |   

けいったん  

桃李、お初の仕事を 頑張ったのに~(´。・ω・。`)シクシク

あまりの大金で 桃李が良からぬバイトをしたと 紘一郎は、思っちゃったんだぁ。

真っ当とは 言いがたいけど でも 紘一郎の想像したよりは・・・(:。・ω・)bd(・ω・。:)ネー♪

桃李とって 紘一郎が大切な様に 紘一郎にとっても 桃李が大切なのですから。
゚+.(*´pωq`)゚+.バカァ...byebye☆

2011/06/30 (Thu) 11:10 | REPLY |   

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