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続 星月夜の少年人形 4 

成瀬の彼女が急に産気づき、共同経営者の花村は、二人分の仕事を忙しくしていた。
苦労の末にやっと愛する女性と共に暮らす夢の叶った成瀬は、一見骨太の男に見えるが、戸籍上の性別は、まだ成瀬彩香(さやか)というれっきとした女性だった。兄弟の反対でいまだに裁判所の手続きができていない。
だから、決して子供を持てないはずの成瀬は、経過はともかく愛する女が授かった子供を自分の手で育てることを決めた。
生まれた子供は本当に綺麗な男の子で、彼らのこれまでの苦労を知る周囲は、有頂天になって子供の世話を焼く成瀬を祝福した。

成瀬は、生きにくい故郷を捨てて、逃げるようにこの町に流れてきた。この町は、歪なものを受け入れて大きな坩堝(るつぼ)で溶かしてしまうような町だ。様々な境遇の人間が、それぞれの生き方を探して生活している。成瀬は映像の専門学校に通った後、しばらく小さな会社に勤め独り立ちして映像会社を起こしていた。
抱えた俳優もアダルトビデオに出演するばかりだったが、成瀬はAV制作のシナリオライターから監督までこなしていた。

ゲイバー「スワン」で意気投合して以来、花村は成瀬の仕事上のパートナーになった。対外的なことや、事務関係、サイトの開設運営までこなす花村は、寡黙だったが驚くほど有能な男だった。
忙しくしていた花村が、しばらく桃李の顔を見に行けなかったとしても、もともと何の関わりもなかったのだから責められることはなかった。
黒いサングラスのおじさんを待って、桃李がビール瓶の空ケースをひっくり返して座り、涙で滲んだ目をこすったことも知る由もなかった。
大切な星条旗を、雑踏の中で踏まれてしまって、長い間泣いたことも花村は知らなかった。

桃李の母親は、出来の悪い紐のような男の尻拭いをさせられるため、出勤途中でいなくなった。事情を知った入駒組の幹部が、連れて行ったのだろうと言うもっぱらの噂だ。
顔だけの最低の男は、落とし前は女に付けさせると叫び命乞いしたらしい。いずれ数か月後、沈められたドラム缶が事情を語るが、籍にも入っていない桃李のことは誰も気に留めず、多忙な花村以外、桃李の事を思い出すものはなかった。

電話がかかってきたのは、スワンのママからだ。

「花村ちゃん?前に幻夜のホストが連れて行かれた日のことなんだけど。」

「うん?入駒関係?何か成瀬に面倒なことでも起こった?」

「違うのよ。一応報告だけしておこうと思ってかけたの。ほら、もしかすると祥子が生んだみぃくんの異母兄かもしれないって言ってたじゃない?キャバ嬢の息子に飯食わせてやったんだって。」

「ああ・・・あれね。腹を空かせた野良に優しくして、捨ててしまうようなことをしたくないからさ、あれから構うのをやめたんだ。女房が連れて行った俺の優月と同じ年だったからさ・・・期待させちゃ可哀想だと思っていたんだが、つい声掛けちまった、何かあったのか?」

口ごもるスワンのママは、電話口でしばらく沈黙していた。

「言いにくいんだけどさ・・・、あの子の母親が消えたらしいの。今、親子に部屋を貸していた大家さん・・・・?って人が、飲みにきててちょうどその話になったのよ。家賃も踏み倒して逃げたらしいの。」

ぞわ・・・と、嫌な予感が背筋を這いあがった。

「俺は母親と話したことなんてないぞ。一度、ファミレスでお子様ランチをおごってやっただけだ。」

「そうよね。ここらあたりの子供は大抵、花村ちゃんにご飯食べさせてもらってるんじゃない?」

「ちょっと待ってくれ。仕事がもうすぐ終わるから、そっちに行くわ。大家さんて人に俺のおごりで飮んで貰ってて。」

「だ、そうよ~~。」と、野太い声が会話を終えた。冗談じゃないと、思わず口をついて出たのは、余りにやせっぽちの桃李が哀れだったからだ。

急ぎ向う安アパートで、花村は桃李を抱きしめ涙することになる。





(ノ_・。) 王道目指すとか言いながら、BLを外れてゆく気がします・・・・やばす~~。

いつかはきっと。(`・ω・´)

成瀬が育てる子供「海広(みひろ)」の物語は、過去作品「凍える月」です。もし、宜しければお読みいただければうれしいです。
性同一性障害の「海広(みひろ)」のお話は、BLではないかもしれませんが自分でも色々調べて書いた思い入れのあるお話です。(*⌒▽⌒*)♪「CMです~~~」

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