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星月夜の少年人形 35 【最終話】 

制服のボタンに手を掛けて、紘一郎が優月の上着をはぎ取ってゆく。
ベルトが抜かれ、あっという間にズボンも引き抜かれた。

「やめて・・・やめて、桃李くん、紘一郎くん、冗談はやめてって。」

正面に回った桃李が、小さな小動物のような黒い瞳を輝かせて、シャツのボタンを喜々とはずして行く。

「やっぱり~!優月の乳首、ぴんくだ!可愛い!」

カシャ!・・・正面から、携帯電話のフラッシュが光る。シャツを掻き合わせた優月は、桃李の手から脱がされた制服を奪うと、その場に抱えた。

「可愛いよなぁ、優月。」

「キスしよ、優月。一回だけ・・・んっ・・・」

顎をついと持ち上げられて、深い大人のキスをされた。優しく優月の逃げる舌をつつき、誘うように桃李の舌先が歯裏をつついてゆく。
柔らかく撫でるように、ぐにぐにと薄い突起がこねられる。温度差を感じて、薄桃色の乳首の色が少し強くなった。

「感じて、優月・・・ほら・・・。こっちも、気持ちいいだろ。」

悲しいのか、感じているのか、自分でもわからないまま飮まれそうになる。無意識に涙が伝う。それでも、ぐいと両肩を押して離れた。二人にここで飮まれるわけにはいかなかった。

「駄目。もう・・・お終い。ぼく、好きな人がいるから、これ以上のことは誰ともしません。」

「携帯画像ばらまかれてもいいのか?この間の、パソコンの動画、ユーチューブで配信しちゃおうか・・・なぁ・・・。」

耳朶に囁く恐ろしい提案を、震えながら聞いた。一回だけ、やらしてくれたらみんな消してやるよと、悪魔が言葉でなぶり誘惑する。
しばらく俯いていた優月が、しっかりと意思を持って顔を上げた。黙ってシャツを身に付け、ズボンを穿いた。

「これ以上のことは、できません。知り合いに弁護士がいるから、間に入って貰います。もう・・・直接、お会いしません。」

二人を見つめて、きっぱり告げたが、優月の頬は濡れていた。小刻みに唇が震うのは、自分ではどうしようもなかった。

「い、ちばん…苦しかった時に助けてもらって・・・・うれしかったのに・・・桃李くんも紘一郎さんも・・・何で、急にこんな意地悪をする・・・・ひくっ・・・。」

我慢していた優月の喉がひゅっと鳴って、嗚咽に変わった。桃李と紘一郎が顔を見合わせた。

「あ~、もう、泣いちゃったじゃないか~。花村さんがやれっていうから~。」

「ごめんなぁ、優月、泣かせちゃって。みんな、あのおじさんが悪いんだよ~。」

狼狽しながら、優月の顔を覗き込んだ。「は、花・・・村さんって?」聞き覚えのない名前に顔を上げると、紘一郎がぺろ・・・と涙を舐めとってゆく。

「花村さんは、俺ら「星月夜」のてっぺんなんだ。ほら、あそこ。みんな、見てたってわけ。」

指をさす画面に映っていた男を、優月は知っていた。丸いWEBカメラのついたパソコン画面の向こうで、いつか家の前で出会った男が手を上げた。

「いつか訪ねて来た、お母さんの知り合いの、おじさん・・・?」

「泣かせて悪かったね。どんな子に育ったのかと思って、試させてもらった。ちゃんといい子で嬉しいよ、優月くん。」

優月は、懸命に記憶の引き出しの中を探っていた。母の知り合いだと言う、黒尽くめの男。一度会ったきりの男の表情は、黒いサングラスで判らなかったがふと顔を背けたとき、つっと流れるものを見た。
桃李が、こっちと腕を引っ張り、「花村さんは隣の部屋だよ、逢っておいで。」と、耳打ちした。

「たまにさ、俺らにひどいことする奴がいるんだ。薬を打とうとしたり、囲い込もうとしたりするんだ。AVに出るの決めたのは俺らだけど、面白がってとんでもないSMまがいのことさせようとするのを、庇って止めてくれたのが花村さんなんだ。」

「悪い人じゃない・・・?」

「まさか。花村さんが拾って呉れなかったら、桃李なんか今頃、制作会社に何されてたかわかんないよ。ほら、あいつ、優月みたいに小さくて可愛いだろ?金積んで欲しがる奴いっぱいいてさ。だけど花村さんが、桃李のこと、壊さないでやってくれって。息子みたいなもんだから手を出さないでくれって掛け合ってくれて、無事でいられたんだ。」

「・・・怖いやくざさんかと思った。」

「怖く見えるのって、あのサングラスのせいだろ?外すと、やべぇ位の男前なんだけど、業界でなめられるからって絶対はずさないの。あ、誤解するなよ、業界って一応芸能関係だからな。」

「うん。」

*******

入ってきた優月に、少し驚いたようだった花村という男は、それでも何とか笑顔を作り向けた。
長椅子に座るように、促した。

「確か、妹が出来たんだったね?なんて名前?」

「あ、お父さんとお母さんの名前を一字ずつ貰って、「美紘(みひろ)」です。」

「かわいい?」

「一度会ったけど、まだ、ちょっとお猿みたいでした。」

「そう。」

まるで確かめるように、ぎこちなく些細な質問を重ねてゆく花村に、優月はたったひとつの疑問をぶつけてみた。

「あの・・・花村さんは、ぼくのお父さん・・・ですか?」

「君のお父さんは、神村さんだよ。これからもずっとね。」

「ええ。そうですけど、神村の父と血のつながりはないです。ぼくには会えないけど、血のつながった父親がいるって、小さな頃に母から聞いています。違うんですか?」

「美晴さんから?それは、きっとろくでもない奴だってことだな。」

自嘲気味に花村は軽く笑った。否定しないと言うことは、やはり父親なのだと優月は理解した。父親参観に父の居ない淋しさを口にした息子に、母は「ごめんね。」と打ち明けたのだった。

「お母さんね、優月がお腹の中に居る時に、お父さんと大喧嘩してしまったの。お父さんは本当は、おじいさんの所で大きなお仕事もできる人だったのに、お母さんが好きになっちゃってみんな失くしてしまったの。お父さんが、辛いんだ…って泣いたときに、お母さん、自分のことしか考えられなくて酷いこといっぱい言ってしまったの。」

「だから、優月とお母さんが二人きりでいるのは、お母さんのせいなの。お父さんが参観日に来れなくしちゃってごめんね。」

その日から、優月は幼いなりに大人の事情を理解し、母の前で父親の話をするのを、きっぱりとやめた。その父親が、眼前の花村だと知って優月は不思議な気持ちだった。

「花村さん。もしかすると・・・いつも、ぼくのこと、見守っていてくれた?だって、あの日、気分が悪くなった時、桃李くんと紘一郎くんに会ったのって・・・できすぎ・・・。」

桃李が思わずぷっと吹き、紘一郎は「優月、やっぱり華桜陰高校だ、賢いわ。」と手を叩いた。どこか、目元を赤くした花村の表情は黒いサングラスで隱されて、詳しくは判らなかった。

*******

住む世界が違うから、もう逢うことはないと、花村は優月に告げた。

「土光のじいさんに会えたんだったら、もう心配いらないな。お母さんは、意地っ張りだから、今回のことは仲直りするいいきっかけになったと思うよ。」

「はい。おじいさんにお願いして、週末は向こうで過ごすことになりました。お母さんも、何かいい雰囲気でした。伯父さんも、身体ももう心配いらないって言うし、良かったです。」

立ち上がった花村は、優月よりもずいぶん背が高く、黒いサングラスを外して優しい表情を向けた。自分でも、どこか不自然だと思いながら、最後に声を掛けた。

「優月。幸せになれ。」

優月は父に向かって、母に似た面差しを向けた。

「はい。」

困ったように浮かべた笑顔に思わず手を伸ばし、花村は優月を抱きしめた。
ただ一度だけ・・・そう思い、回した腕に力を込めた。
しばらくそうしていた親子に、桃李と紘一郎が声を掛けた。

「優月。俺等、お前のことすごく好きだったよ。めっちゃ、色っぽくて可愛かった。」

「いつか、有名になったらサインしてやるからな。サイン会に来いよ。」

「うん。待ってる。」

ぐりぐりと優月の柔らかい髪を、寄ってたかって混ぜた。黙って笑っていた優月は、彼等が二度と優月と関わる気が無いと感じていた。

「ほら、大好きな人が迎えが来たぞ。」

「え?迎えって、頼んでないですけど・・・あっ!」

見下ろした優月には、階下に止めた車に見覚えがあった。
挨拶もそこそこに、大急ぎで部屋を飛び出た優月を見送る三人は、顔を見合わせ微笑んで見守った。止めた車のドアにもたれた男が、呼びかけられて振り返る。

互いを認めた二人が、急いで傍に近寄る。

手を伸ばす若い恋人が、ずっと欲しかった腕を手に入れた。

「優成さん」


                              
                                   星月夜の少年人形―完―




#9426;すもも4


ⓒすももさんが描いてくださった、優月と優成です。この絵の通りの、幸せな最終話になりました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。

(*⌒▽⌒*)♪「優成さ~~~ん!」

(`・ω・´)「優月くん!良かった、捜したよ!」


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6 Comments

此花咲耶  

鍵付きコメント様

あんまり痛くしなかったのです。
現在、此花は絶賛、王道練習中です!(`・ω・´)←色々足りない・・・


中々色っぽい話にならないので、思案してます。油断すると、すぐに可哀想な目に合わせたくなってしまいます。♪ψ(=ФωФ)ψうふふふ・・・

意外な展開・・といっていただいて、よかったです。
コメントありがとうございました。うれしかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2011/06/16 (Thu) 09:31 | REPLY |   

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2011/06/15 (Wed) 21:18 | REPLY |   

此花咲耶  

Re: 鍵付きコメントさま

> はい、花村さんはパパでしたね。バレバレでした。(*⌒▽⌒*)♪
>
> と気になる人物を放り込むだけ放り込んで放置は、あんまりだと思っています。
> 此花大魔王としては、もう少ししたら続編を書くつもりなので、待っててください。
>
> 社長と榊原弁護士…、おお、そこにも気が付いていましたか?伏線張りまくりで、回収しないという大技でした。少年人形の桃李と紘一郎の出会いのお話を続編で書きたいと思っています。
> 桃李を容赦なくぼろ雑巾に・・・・ψ(=ФωФ)ψうふふ・・・
> ヾ(。`Д´。)ノ王道の練習は、どうした~~~!!
>
> いつも、お読みいただきありがとうございます。
> 長くなりそうだったので、一度終了させました。(`・ω・´)←ちょっと、違う話が書きたくなりました・・・
>
> コメントありがとうございました。うれしかったです!(*⌒▽⌒*)♪

2011/06/15 (Wed) 20:10 | REPLY |   

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2011/06/15 (Wed) 15:54 | REPLY |   

此花咲耶  

けいったんさま

> 完結 お疲れ様でした~♪゚*。(b・∀・b)。*゚

長らくお読みいただき、ありがとうございました。(*⌒▽⌒*)♪
何とか最後まで来ましたが、いろいろ物足りない最後になりました。
最終話もう少し、付けたししようと思います 。

> 最後の話しに 優月パパを登場させるなんて さすが 大魔王だぁーー!
> あの人が 花村だったんですね。
> 優月のパパだから カッコイイし~゚.+:。(〃ω〃)゚.+:。 キャァ♪

伏線張ったまま、ほったらかしでしたがやっと出演できました。予定では切れる男のはずでしたが、覗き見とかしてました。♪ψ(=ФωФ)ψ←させといて・・・
>
> やっと 優成に会えた優月、お幸せにね♪
> (○ゝз・)b⌒byebye☆

(*⌒▽⌒*)♪「やっと、会えたね。今夜は寢かせないぞ。」

(*ノ▽ノ)キャ~~ッ「優成さん~」

ヽ(゚∀゚)ノバカップルになってしまった優月と優成の「その後の星月夜」書きます。
お読みいただければ嬉しいです。ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

2011/06/15 (Wed) 09:33 | REPLY |   

けいったん  

完結 お疲れ様でした~♪゚*。(b・∀・b)。*゚

最後の話しに 優月パパを登場させるなんて さすが 大魔王だぁーー!
あの人が 花村だったんですね。
優月のパパだから カッコイイし~゚.+:。(〃ω〃)゚.+:。 キャァ♪

やっと 優成に会えた優月、お幸せにね♪
(○ゝз・)b⌒byebye☆

2011/06/14 (Tue) 22:13 | REPLY |   

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