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星月夜の少年人形 3 

「兄ちゃん、羽藤さんの車かっこよかったね~。」

「そうだね、ハンドルが左側にあったね。」

「今度、乗せてっていう~。」

「一緒に頼もうか、乗せてくださいって。」

い~ち、に~い、さ~ん・・・と、数えはじめると、湯船の塔矢は半分眠ってしまいそうになっている。

「ほら、塔矢、お風呂でねんねすると、歯磨きできないだろう?」

「う~ん・・・兄ちゃん、抱っこ~。」

「仕方ないなぁ。」

塔矢を抱いて湯船からざっと上がり、ふと脱衣場で鏡を見やった。
部活も何もやっていないせいだろうか、男らしいとは言えない細い首、薄い胸、華奢な腕が目立つ・・・。
優月は華奢な肢体を、自分でも少し気にしていた。
毎日、女子の話ばかりしているクラスの友人に比べると、性欲も少ない気がする。
塔矢がいつも傍にいるから、ゆっくり綺麗なお姉さんの写真やDVDを見れないのもあるかもと思う。

たまに塔矢が眠りについたのを見計らって、もう一度風呂に入り自分の物に手を伸ばすことがある。そんな時、優月の脳裏に浮かぶのは結婚した両親を祝福する、社長に就任したばかりの羽藤だった。
殆ど黒に見える濃い灰色のスーツに、黒のシャツを合わせ銀糸の入った黒のネクタイを合わせていた。塔矢の手をつないで、花嫁姿の母の横に立っていた優月は、そのすっきりとした立ち姿から目をらすことができなかった。
今日、思いがけず私用電話の番号を貰って、優月は天にも昇る心持だったが、内に秘めた思いが覗いたりはしなかっただろうかと胸を押さえた。

今日、訪ねて来たあの人も、息子さんという前に娘さんと言いかけた気がする。
隣に立って、不自然に見えないようになるまでには、どれだけの月日がかかるだろう。
「大人になったら、羽藤さんみたいに男らしくなるもんね・・・。」と、小さく呟きながら、バスタオルに眠りに落ちてしまった塔矢を巻きリビングに移動した。
関節の赤い線にアトピーの塗り薬を薄く伸ばしてやりながら、優月はじっと塔矢を見ていた。
母の連れ子の自分と父の連れ子の塔矢とは、まだ暮らし始めて3年しか経たない。
血のつながりのない義弟が、こんなに愛おしい存在になるとは思っても見なかった。

*******

脱いだものは洗濯機にすべて放り込み、二人分の食器も洗い終えた。
鳥モモを薄くそぎ切りにして、小さな塔矢にも食べやすい様に隱し包丁を入れ、玉ねぎをすって下味をつける。もう当たり前になったお弁当の下ごしらえも、きちんと済ませた。
軽いアトピーのある、塔矢の為になるべく既製品は使わないと決めていた。
玄関で静かにドアの開く気配がし、スリッパの滑る音がする。

「すまん、優月!あぁ…塔矢はもう寝ちゃったか。」

「お帰りなさい、お父さん。時間切れだよ、塔矢の電池は切れました。」と、優月は振り返ってふふっ・・・と笑いかけた。

「塔矢はお風呂で眠ってしまって、今日もベッドには辿りつけなかったよ。晩御飯はカレーだけど、よそう?それとも、先にお風呂に入っちゃう?」

父はぐいとネクタイを緩めると、ふっと優しい顔を向けた。

「先に風呂に入ってくるよ。後は自分でやるから、優月はテレビでも見ててくれ。」

「うん。着替え持って行くから、そのまま行っちゃっていいよ。」

「そうか、頼むな。」

無理をさせているのは父も知っていた。母親との二人暮らしが長かったから、何でもできる息子に家事一切を押し付けるつもりはなかったが自然とそうなってしまっていた。
人生で一番睡眠を得たい年頃だろうに、朝5時には起きて塔矢の弁当を作っていた。
ママが帰ってくるまでの辛抱だから、コンビニのお弁当で良いじゃないかと因果を含めたら、塔矢はしょんぼりと頷いたが、優月が自分が作ると言い始めた。
塔矢のこぼれそうな目に、溢れそうなほど涙が溜まっていたのを見てしまったらしい。

「駄目だよ、お父さん。お母さんがいないだけでも、小さい塔矢には可哀想なのに。保育園のお弁当はぼくが作るよ。簡単な物だったら、できるから任せて。」

「でも、できないときはあるかもしれないよ。テスト前とかは買って来たお弁当でもいいかな?」

「うん!」

泣き笑いの塔矢は、大好きな義兄の優月にべったりだった。




(°∇°;) 「優月、あんた一回りも違う人が好きなの?」

(〃ー〃) 「・・・・うん。」


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2 Comments

此花咲耶  

けいったんさま

> 優月にとって 優しい母と そして 血は繋がってなくても 掛け替えの無い可愛い弟の塔矢と 暖かく見守ってくれる父
> 永遠に続くと思われた幸せを 壊すのは、なに?誰?

ささやかな幸せなんですけど、優月はこれからどうなりますやら・・・涙の向こうに求める幸せがあればいいなと思っています。

> 今が 幸せなだけに 怖いな。。。
> あっ そうだった!
> 優月に 不幸を連れて来るのは 此花大魔王だよーー!
> ニャハハハ ♪ψ(=ФωФ)ψ不幸やるよ!⌒☠ ...酷いッd(T▽T)...byebye☆

や~ん、此花、大魔王っすか~、ちょっと偉くなった気分です。(*⌒▽⌒*)♪←顔文字違うぞ~~~
不幸って連鎖するんだよねぇ・・・頑張って断ち切れ、優月!!(´;ω;`) ←作者~~

コメントありがとうございました。うれしかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2011/05/14 (Sat) 20:21 | REPLY |   

けいったん  

No title

優月にとって 優しい母と そして 血は繋がってなくても 掛け替えの無い可愛い弟の塔矢と 暖かく見守ってくれる父

永遠に続くと思われた幸せを 壊すのは、なに?誰?

今が 幸せなだけに 怖いな。。。

あっ そうだった!
優月に 不幸を連れて来るのは 此花大魔王だよーー!
ニャハハハ ♪ψ(=ФωФ)ψ不幸やるよ!⌒☠ ...酷いッd(T▽T)...byebye☆

2011/05/14 (Sat) 10:15 | REPLY |   

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