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杏樹と蘇芳 5 

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BL KANCHORO・春企画参加作品 

【杏樹と蘇芳 5】




平安のころの話である。



その夜、約束通り寝所に現れた杏樹に、次郎は思わず眉を曇らせた。
まさか、本当に自分から寝所へと足を運ぶ事はあるまいと思っていた。
何も知らない無垢な美童を哀れに思い、そのまま来ずとも見逃してやろうと思っていた。

これまで人買い、山椒大夫の元に連れてこられたものは、最初は殊勝でもすぐに自分の事だけを考える。
次郎が抱いたものも皆そうであった。
媚とへつらいを浮かべ、おもねる仕草で次郎を誘った。
うわべだけ取り繕って、我が身かわいさに平気で身内を売るようなものばかりだったのだ。
それなのに、白い夜着の襟をきつくあわせて現れた杏樹は、弟の為に手をついた。
その顔は、紙のように白くなっている。

「何もわかりませぬが、どうぞご存分に・・・なさってください。」

唇を震わせてやっと口にしたその言葉に、嘘はないと思った。

「おまえは、それで良いのか?」
「・・・父母には、返しきれない大恩がございますれば。」

次郎を見上げた目は、心なしか熱っぽく潤んでいた。
流刑になった父の元へと向かう途中、船頭にかどわかされて屋敷へ売られてきた毛色の良い兄弟だった。
突然、降ってわいた理不尽に、畏まった杏樹の心は千千(ちぢ)に乱れているだろう。
元より平気なはずなどなかったのだ。
握り締めた拳が、哀れにも小刻みに震えていた。

「まだ、その方の名を聞いていなかったな。」
「杏樹と申します。」
「良い名だ。お前に似合いの美々しい名だな、杏樹。」
「はい。母上が付けてくださいました。里山に杏の花が咲く場所があるのです。麓(ふもと)は薄桃色の裳裾を引いたように霞むのです。」

ふっと一瞬、柔らかく微笑んだ顔に、次郎は見覚えがあった。
どこか、亡くなった兄嫁に似ているような気がした。
あの日、兄嫁を襲った不幸を、守れなかった山椒大夫と次郎が忘れられるわけなどなかったのだ。

*******

一方、蘇芳は粗末な布団の上に転がって、壁に向かい大きな目を凝らしていた。
決して眠るわけにはいかなかった。
兄が蘇芳が眠るのを待って、そっと寝床を抜け出すつもりなのを蘇芳は知っていた。

背後から、自分の気配をうかがう兄の様子が見て取れた。
くるりと寝返りを打つ振りをして、蘇芳は布団に顔をうずめた。
燭台が、自分を照らすのを感じたが、身じろぎもせず寝息を立てる振りをした。

兄は弟をひたすら思い、弟は兄に心配を掛けぬように、泣くまいと歯を食いしばっていた。
たん・・・と板戸が滑るのを背中で聞き、蘇芳は灯りの無い部屋に半身を起こした。
蘇芳はただ兄が心配で、足音をさせぬように密かに兄の後を追った。
追ったからとて、どうしようもなかったのだが・・・。

空に冴え冴えと輝く月だけが、蘇芳を励ました。




エチに突入するはずが、短くなってしまいました。
ごめんね。(´・ω・`)
明日こそ。←ほんとか~・・・

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6 Comments

此花咲耶  

サフランさま

> 満開の八重桜が散る前に挨拶しようと思いました。
> 大阪主導の関西広域連合にただ一つ参加していない奈良県。あをによし奈良の都…。立場は違いますが、その孤高の清々しさ、羨ましいですね。

未曽有の災害が国中に影を落としていますが、季節は廻り花は咲きます。
いつかより良い未来になると願っています。
>
> さて、娘の中学校で父母会の役員を指名されました。息子の小・中学校、娘の小学校に続いて新1年の時に、学校からの指名が必ず当たります。
> これも務めと思って奉仕していますが、まさか今回も当たるとは思っていなかっただけに驚きました。
> 年度がわりに加えて、忙しくなりました。

色々とリアルがお忙しいのですね、ご苦労様です。
>
> 山椒太夫の話、子供の頃から大好きです。最終回まで、頑張って下さい。

ありがとうございます。がんばります!(`・ω・´)
>
> 此花様、楽しかったです。ありがとうございました。愉しい時間はあっという間でした。

こちらこそ、いろいろ遊んでいただいて楽しかったです。
琥珀の君のお話、とても楽しかったです。

> 『ローマの/休日』を思い出しました。
> 楽しかった事を胸に刻んで帰ります。

王女様が違う世界に帰って行かれたように、サフランママンともお別れなのでしょうか。(´;ω;`)

> いつまでもお元気で!
> ごきげんよう!

いつも、ここにいますのでたまには覗きに来てください。
お別れは好きではないので言いません。
いつかまた、お会いしましょう。
お健やかにお過ごしください。(*⌒▽⌒*)♪

コメントありがとうございました。楽しかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2011/04/23 (Sat) 21:08 | REPLY |   

サフラン  

ごきげんよう

満開の八重桜が散る前に挨拶しようと思いました。
大阪主導の関西広域連合にただ一つ参加していない奈良県。あをによし奈良の都…。立場は違いますが、その孤高の清々しさ、羨ましいですね。

さて、娘の中学校で父母会の役員を指名されました。息子の小・中学校、娘の小学校に続いて新1年の時に、学校からの指名が必ず当たります。
これも務めと思って奉仕していますが、まさか今回も当たるとは思っていなかっただけに驚きました。
年度がわりに加えて、忙しくなりました。

山椒太夫の話、子供の頃から大好きです。最終回まで、頑張って下さい。

此花様、楽しかったです。ありがとうございました。愉しい時間はあっという間でした。
『ローマの/休日』を思い出しました。
楽しかった事を胸に刻んで帰ります。
いつまでもお元気で!
ごきげんよう!

2011/04/23 (Sat) 13:53 | EDIT | REPLY |   

此花咲耶  

鍵付きコメントb様

がんばったんですけど、何しろテクがないのでめちゃくちゃ時間がかかります。
期待が大きくなったら、針でぷちっとついて萎ませてくださいね。(*⌒▽⌒*)♪

続き、楽しみにしてくださってありがとうございます。
(`・ω・´) だめっこなりにがんばります!しゃき~ん!

コメントありがとうございました。
嬉しかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2011/04/23 (Sat) 10:56 | REPLY |   

此花咲耶  

奏音 有華葉 さま




(´・ω・`)有華葉 さま:「 蘇芳、行っちゃダメーーーー」

(`・ω・´)蘇芳:「せっかくのお言葉ですが、兄上が心配なのでちょっとだけ様子を見て参ります!」

(〃^∇^)o彡 此花:「蘇芳、気を付けて行ってらっしゃい~」


(*⌒▽⌒*)♪コメントありがとうございました。うれしかったです←ろくなやつじゃない・・・

2011/04/23 (Sat) 10:52 | REPLY |   

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2011/04/23 (Sat) 08:14 | REPLY |   

奏音 有華葉  

No title

蘇芳、行っちゃダメーーーー

2011/04/22 (Fri) 22:42 | REPLY |   

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