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金銀童話・王の金糸雀(かなりあ) 3 

バロックオペラなどに多く見られる女性役、天使役、少年役は、過去にはすべてカストラートと呼ばれる男性の去勢歌手が歌っている。
絶大な人気と、超絶技法で、当時教皇さえ動かすほどの、人気を集めたカストラートになるしかなかった王子と、敵国の王の物語。
歴史の仇花として大輪の華を咲かせた、カストラートの名を継ぐ者は、今や人道的な見地からもこの地上に存在しない。




「わたくしたちの、歌を聞いて、涙を零されるような方が新しい領主となるのですね。」
「どうぞ、父の城へわたくしをお連れ下さい。」

幼いながらも、よどみなく答えた利発な王子に、王さまの忠実な司令官は驚いた。
いつしか自分が、この王子を救う日が来るなどとは、今は何も知らず、司令官は赤いマントを深く被せてやった。
聖歌隊の少年達は、勇ましい馬上の騎士達の腕に抱えられて、こうして湖の城中に入ったのだった。

王子が久し振りに帰って来た懐かしいお城の中では、訪れた新しい城主のために、華やかに晩餐会が催されていた。
小鳩の焼き物、焼き栗と子じかのパイ、野うさぎのシチュー、密林檎のシロップ漬けと言った、貧しい聖歌隊の子供たちが見たこともない沢山の贅沢なご馳走が並んでいる。

上座の玉座に腰掛けた、森の王さまは、入ってきた少年達に手招きをし、腰をかけて共に食事を取るのを許した。
優しい笑顔は、教会で彼らの歌を聞いたときに浮かべていたもので、少年たちはぎこちなくフォークを取り上げた。

「新王さまの思し召しだ。さあ、存分に食するがいい。」

忠実な司令官の合図で、多くの女官達が甲斐甲斐しく給仕を始めた。


どんな無理難題を吹きかけられるか、始めのうち戦々恐々としていた前領主は、微笑を浮かべた若い王が組み易しと見るや、ついにぞんざいな言葉で話しかけ始めた。

「若い王よ、若さだけでは家臣は付いて来るまいよ。賢明な王は忠節を誓えない家臣を持つべきではないのだ。」

王さまはそれには返事をよこさず、ただにこにことして少年達が珍しい食事に目を丸くするのを楽しそうに見ておいでになった。
子供を持っていない若い王は、マナーもろくにできない田舎の子供に手づかみで食べることすら許した。

「料理人に、甘い焼き菓子を、もっと持って来るように言っておくれ。」
「お皿の空いた子に、同じものは要らないかと聞いてやってくれ。」

王は、上機嫌に見えた。

「上手に歌った褒美を約束したのだ。どの子にも、菓子と金貨を持たせてやってくれ。」

だが機嫌良く見えた王さまは、子ども達が菓子と金貨を貰って退出すると、前領主に向かって話かけた。

「さて・・・。」
「戦争に敗れた前王よ。あなたには、この国の新しい王の名前がお分かりでないようだ。」
「わたしがここに来たのは、教会の子どもと遊ぶためではないし、ましてや暇つぶしのためなどではない。何やら、わたしに意見をお持ちのようだが、言っておこう。」
「わたしは、この国をあなたに代わって、統治するために入植したのだ。」

前領主の顔から一瞬で血が引き、ぱっと白い紙のようになった。

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