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金銀童話・王の金糸雀(かなりあ) 1 

始まりのお話




遠い遠い国に、緑の森と青い湖に囲まれた、白い小さなお城がありました。
お城の一室では、金色のお姫さまが、女官に物語をねだっていました。

「ねぇ。この絵本を、読んでちょうだい。」

女官は「王の金糸雀(カナリア)」と書かれた一冊の薄い童話を取り上げると、豪奢な青い天蓋の付いた寝台に近寄り、ひざまずきました。
表紙に描かれた繊細なペン画の一枚絵は、金箔で周囲を押され淡く彩色されています。

絵の中の、王さまの大切な金糸雀(カナリア)は、背中まで流れる銀色の糸のような細い髪を持ち、繊細な白い手織りのレースのローブを上質のリンネルの下着の上に、ふわりとまとっているのでした。

金糸雀の住む金の鳥籠の中には、薄桃色の肌に傷をつけないようにトゲを抜かれた純白のつる薔薇が、ブランコに柔らかく巻きついています。
闇の王と呼ばれた黒髪の王さまと、王さまの大切な「金糸雀(カナリア)」と言う名の、清らかな王子さまのお話は、何度も何度も読まれて、今やページの端っこが擦り切れるくらい、お姫さまのお気に入りなのでした。
物語の、書き出しはこうでした。

『・・・・むかし。

あるところに、人々に闇(やみ)の王とよばれている王さまがおりました。
さびしい黒髪の王さまは、病気になって床にふせっておりました。
弱々しい声で、忠実な家来に問いかけました。

「飛んでいってしまった、わたしの金糸雀は、まだ見つからないのか?」

忠実な家来は、王さまと一緒に国を大きくするために、軍隊をひきいたとても勇ましい軍人でした。
家来は悲しい顔をして、王さまの願いがかなえられないことを告げなければなりませんでした。

「残念ですが、王さま。金糸雀の行方は、わかりません。」

王さまは、このまま悲しみの中、神の元へ召されてゆくのでしょうか。
家来が泣きたくなるほど、王さまの青ざめたほほはすっかりやせてしまって、軍隊の先頭にたって勇ましく行進していたとは思えないほど、やつれているのです。

「このまま、死ぬのはしかたがないが、わたしは金糸雀に謝りたいのだ。」

王さまは、心から後悔しているようでした。

「どうか、忠実な家来よ。約束しておくれ。」
「わたしが死んだあと、わたしのお墓に金糸雀を連れてきて、もしも許してくれるなら歌を歌ってくれるように頼んでおくれ。」

王さまは病気でしたが、明日の朝、広場で処刑されると決まっていました。
長い戦いの末、大きな国に負けてしまった王さまは、大きな国の王さまに許してもらえなかったのです。
忠実な家来は、自分も同じように神さまの元へ召されるのですと、王さまには本当のことを告げずに、必ず金糸雀に歌ってくれるように頼みますと、できない約束をしました。

「わたしの金糸雀よ。どうかわたしを許しておくれ。」
「おまえを信じなかった、愚かなわたしを許しておくれ。」

寝台の上から、鉄格子の入った窓を見ても、四角の小さな青い空が広がるばかりでした。
そして、その青いすみれ色に似た深い空の色は、王さまの愛した可愛い声の金糸雀の瞳の色と同じなのでした。

部屋に置かれた、大きな金の鳥籠は住むものがいなくなって、ブランコに巻きついたつる薔薇も枯れました・・・・・』

「ああ・・・何と可哀想な王さまかしら。」

明るい巻き毛のお姫さまも、女官も、毎夜同じところで泣きたくなるのでした。

「悲しい王さまを慰めに、王さまの金糸雀は来るかしら?」

何度も絵本を読んで、結末を知っているはずなのに、お姫さまはいつも聞かずにはおれないのでした。

「お姫さま。続きはまた、明日の夜に致しましょう。」

絵本は閉じられて、可愛いお姫さまは小さなあくびを一つすると、羽根枕に深々と顔を埋めたのでした。
閉じられた絵本の幸せな結末を知る、女官は、薔薇色の頬に優しくキスを送ると、枕辺の明かりを消しました。

「おやすみなさい。お姫さま。」

「良い夢を・・・。」



********************************

王さまと、王さまの金糸雀と呼ばれた、カストラート(男性去勢歌手)のお話が始まります。

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4 Comments

此花咲耶  

千菊丸さま

> 新しい物語が始まりますね。

イタリアとか、スペインとか、その辺りの架空の国を作りました。
お読みいただければうれしいです。

> カストラートの存在は少し知っておりましたが、中性的な美しさを持った歌手が過去に実在したというのは、何だか歴史のロマンを感じてしまいます。

男性であり、女性であり、優美な姿と声量で多くのご婦人方は卒倒したそうです。
美しいお話を書きたいです。

> イラストの可憐な印象の少年・・どんな運命を辿るのでしょうか?

イラスト、ちゃんと書きたかったのですが間に合わず…イメージだけ見てください。
カストラートになるまで遠そうです。
コメントありがとうございました。うれしかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2011/03/16 (Wed) 15:06 | REPLY |   

千菊丸  

NoTitle

新しい物語が始まりますね。
カストラートの存在は少し知っておりましたが、中性的な美しさを持った歌手が過去に実在したというのは、何だか歴史のロマンを感じてしまいます。

イラストの可憐な印象の少年・・どんな運命を辿るのでしょうか?

2011/03/16 (Wed) 12:45 | EDIT | REPLY |   

此花咲耶  

鍵付きコメント様

カストラート、という存在はそう遠くない過去に実在していました。
此花は最後のカストラートという人の残した、原盤を聞いたのですがそれはかなり年を取ってからのもので、少しがっかりしました。

男性女性を合わせた、幅広い音域をもち、その姿は優美で性別を超えたものです。
食いついてきて~~(*⌒▽⌒*)♪

これも一つの愛の形・・・ということになりそうです。
ヨーロッパの綺麗な風景に、いじめっ子を隱そうと思ってたのに。Σ( ̄口 ̄*)見破られてる・・・?
やばす~

コメントありがとうございました。うれしかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2011/03/16 (Wed) 01:48 | REPLY |   

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2011/03/15 (Tue) 22:43 | REPLY |   

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