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おとうと・10 

その後、兄は多くの大学を受験し、海外の大学へと進学することを望んだ。
広い世界で、自分の腕を試したいと思ったのも事実だった。
誰もが知る有名大学で、腕を磨き名を上げていずれは帰国するつもりだと悟は宣言し、実際そうなった。

翌年、弟、聡も国内で有名大学への入学を果たし、両親は大いに喜んだ。

*******

時が流れ、兄は在学中に、大学教授のすすめるままに気高い伴侶を持つ。
打算で結婚したとはいえ、すぐに長男の天音も生まれ傍目には何の不足もない順風満帆な人生だった。
悟は妻を確かに愛していた。
澤田家主導の元、総合病院の建設が決まり、悟が病院長になってさえいれば詩鶴が生まれるようなことはなく天音の苦しみも起きなかったのかもしれない。

全ての不幸な出来事は、悟に起因していた。
そのもっと向こうに、種は撒かれていたのかもしれない。
詩鶴の哀しみも、天音の苦悩も悟の分別のない行動から起こった。
悟の過ごしてきた過去に同情する余地はあっても、決して許される生き方ではない。

詩津をめぐる兄弟の話を、家政婦佐々岡に聞き天音は混乱していた。
聞くべきではなかったと思った。
むしろ、一番責められるのは父親で、生まれて来た詩鶴には何の落ち度もない。
そう思いながら、母の長年の苦悩の原因がわかってしまった今、詩鶴と元通り仲の良い従弟に戻れるはずもなかったのだ。
心から愛おしいと思いながら、天音は詩鶴を弟して認めるわけにはいかなかった。
父に蹂躙された後、まるで雨の日に捨てられた古い人形のような詩鶴を天音は抱いた。

いたわるような気持ちでいたと言っても、それは言い訳にしかすぎない。
天音と詩鶴の、過ぎ去った過去はもう二度と取り戻せない。
天音は自らの手で、詩鶴を傷付け永遠に失ってしまったのだ。
押し寄せる後悔に指先が震えた。


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例え、どんな理由があっても許されるわけではないのですけれど・・・
天音がちょっと可哀想になったりします。

ちょっと寄り道してしまいました。

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2 Comments

此花咲耶  

鍵付きコメントさま

どんどん悲しい方向へ進んでゆきます。
混乱のままの行動とはいえ、同情の余地もありません。
ヾ(。`Д´。)ノこら~、天音~!←書いといて。

テンパりチェリーボーイくんと出会い、前向き裸エプロンを着こなせる日が、なんだか遠いです。
さきに書いて置いて良かった。でないと、此花とんでもない鬼畜さん?・・・Σ( ̄口 ̄*)

コメントくださった先輩作家さんが名付けてくださったと思います。

このお話にかぶるお話しってあるんですね。
驚いてしまいます。
事実は小説より奇なり…といいますけど、驚きます。
天音のぱぱんも、不幸ですけど誰かに押し付けちゃいけませんよね~。

クソオヤジは詩鶴くんを、お母さんの身代わりにしか見てないし、実子に対してやっちゃいけないコトをしてしまいました。
同情出来ないけど、天音さんは何とかしてやってぇ(/ _ ; )と言ってくださって、天音も報われます。
動転しているのでしょうが、もう少し知性を感じさせてほしいです。←書いたのだれだ~ヾ(。`Д´。)ノ

暗いお話になってくると、だれも何も言ってくれなくなってしまいます。
(´;ω;`) …コメントありがとうございました。うれしかったです。

がんばります~!(*⌒▽⌒*)♪

2011/03/08 (Tue) 21:08 | REPLY |   

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2011/03/08 (Tue) 00:17 | REPLY |   

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