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紅蓮の虹・77 

それでも、いい・・・

と、薄れ行く意識の中で、四郎は思う。


せめてこの身は、堕天しても憎い松倉に一矢報いて果てるなら。


道理に叛き、親にもなれないこの身を・・・許せ。


顔も見ぬ赤子と、もう永久に添えぬ妻に詫びた。


紅蓮の炎が、四郎の意識を奈落へと飲み込みかけた時、ドアが開き一陣の薫風が吹いた。


「虹っ!」


「何があったの・・・っ!」


「わ~~ん、百合~間に合った~。」


俺は思わず、泣きながら百合に取りすがった。


・・・忘れてください。


百合が着たとき、コウゲイににらみ付けられたまま、俺は蛇ににらまれたかえるみたいに、青ざめて固まっていた。


「百合、早くっ!


ここに来て、四郎に声をかけてっ!」


「四郎っ!四郎っ!」


「ほら、百合だよっ!


目を開けて!」


何が何だか分からなかった百合は、ベッドに寝かされた四郎の派手な着物に合点がいったらしい。


声にならない口の形は「うそ・・・」と言った。


図書館で、俺が借りた子供向けの読み物に、四郎と似た絵が描かれていたのを百合は覚えていた。


うなづいた百合は俺を押しのけると、四郎の枕元に近寄った。


「・・・四郎・・・さま・・?」


「百合です。四郎さま。」


その声に導かれるように、四郎が薄く目を開けた。


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