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紅蓮の虹・75 

爺さんが、ありえない声で叫んだ。


「四郎さまっ!?」


一体何がどうなったのか、俺は混乱していた。


現実世界に帰ってこれただけで、なぜかひどく安心した。


俺の腕の中の四郎は、ただ浅い息をしているだけで、命は尽きる寸前だった・・・と思う。


誰が見ても、命に関わる深手を負っていた。


俺は、袈裟懸けに斬られ、重傷を負った四郎を何も考えず救いたい一心で現代に連れ帰ってしまった。


たぶん、この状況は・・・ありえないほど、やばいかも・・・?


ほら・・・っ!


いつも沈着冷静なコウゲイが、すごい勢いで俺の首を絞めにかかった。


「ちょっ・・・コ・・・コウゲイ、くるし・・・」


「この人間風情が!わたしを乗っ取っるなど・・・」


「旦那さま!」

「お止め下さいっ!旦那さま!」


爺さんが、血相を変えたコウゲイと俺の間に割って入ってくれなかったら、殺されてしまったのかもしれなかった・・・・



「百合。」


「百合、頼むから今すぐ来て。」


俺は、コウゲイがくれた小さな宝珠に必死で願った。


「急ぐんだ、とにかく早く来て。」


コウゲイは、ものすごく怒っていた。


四郎より、俺のほうが先にパライソに行くんじゃないかと思う。


逆鱗にさ、触れたくて触れてるんじゃないよ、俺。


怒ったコウゲイの出す炎は、怖くて冷たくて綺麗だった。


「旦那さま。今はとにかく四郎さまを。」


「・・・手当ては、駄目だ。」


「旦那さまっ・・・」


コウゲイにしてみれば、歴史に介在するのは許されない禁忌(タブー)だった。


そうして自由を奪われ、異空間につながれたままの同属すらいるのだ。


・・・意識のない四郎は、玉の汗をぬぐうことも許されず、手当てもされないでただ寝かされていた。


たまに動く唇が、呪詛を語る・・・


四郎は生きながらに「いんへるの」(地獄)に落ちようとしていた・・・


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