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続・はつこい 如月奏の憂鬱・16 

「この子には、何もわからないかもしれないけど・・・・僕が、こんな風に見返りなく人を心から愛おしいと思えるなんて・・・。愛し方を・・・初めて知りました。」

おずおずと、両手を回してKatie を婦人ごと抱きしめた。

「しばらく・・・しばらくの間、このままで・・・いさせて・・・」

******************************

婦人の洋服の肩に、奏の切ない想いが静かに零れ落ちて行く。
教授夫人は奏に抱きしめられた格好のまま、困ったように柔らかな微笑みを向けた。

「いい子ね・・・、奏。」

結局、思いの叶わぬ者ばかり求めてしまうのは、癖のようなものなのか・・・と、颯と白雪は、言葉を失って無言のまま顔を見合わせた。
この綺麗な男は、颯の知る限り、いつも感情のまま涙を拭いもしないで、静かに泣く。

周囲への配慮や気遣いを必要としないで生きてきた、一部の限られた上流社会の者だけが持つ感情の素直さなのだろうか。
周囲の思惑をよそに、静かに時間が過ぎた。

白雪は奏が素直に、自分の思いを口にしたことに、何故か肩の荷が下りた思いだった。
欲しいものを欲しいと言ったことのない主人が、本心を全身で告げていた。
静かな満ち足りた短い時間の後、教授夫人と愛する娘に軽くついばむように口唇を寄せて、振り向いた奏は二人の知るいつもの顔をしていた。

「行きましょう。」

「・・・・。」
「筋金入りの、見栄っ張りだな。」
「相当の、意地っ張りですね。」

颯と白雪が同時に、呟いた。
自尊心を立て直して、変わらなく見えた。

**************************

ほどなくして、届いた写真を眺め、奏はため息を吐いていた。

「嫌だな・・・ぼくは、こんな小生意気な顔なんですか?」

確かに銀板に焼かれた写真は表情が硬く、鏡で見る顔と違った印象を受ける。
だがその写真は、奏の特徴を捉えていたし、写真館の主人が出来るなら販売したいというほど美しかった。

「冗談じゃない。あの写真屋は酔狂が過ぎます。こんなもの買おうなんて輩は、僕の知る限りでは、あの赤毛の間抜けくらいですよ。」
「いや、たぶんモンテスキュウ教授も欲しいというだろう。」
「?・・・華桜陰高校の・・・?」

フランスに留学していた学生が、先日合流した際にとんでもない話をしていたらしい。
モンテスキュウ教授は、文学に造詣が深く優れた教師だが、故国で同性愛者として投獄の経験があるそうだ。

「投獄・・・?それは、またとんでもない過去が、出てきたものです。」

渡欧する折に、奏に気をつけろといったのは、そういう意味だったのかと、そこで颯はやっと腑に落ちたのだった。

「まあ、その忠告のおかげで、何事も無く一年間無事に終えて良かったじゃないか。」
「帰国したら、理事の権限で彼を解雇します。羊の群れの中に、狼を入れておくなんて冗談じゃない。」

そういいながら、奏のその目は笑っていた。

「この写真をKatieに届けるのなら、付き合うがどうするね。」
「あぁ・・・」

一瞬、目を泳がせて考え込んでしまう。
まるで人が変わるように、臆病になる奏は意外だった。

「あの・・・。僕の・・・こんな写真など、あの子が喜ぶでしょうか。」
「名付け親がどんな人間か、僕ならきっと知りたいと思う。」

困ったような顔を向けて、奏はため息をついた。

「実はね・・・」

奏は、颯に打ち明けた。

「自分でも自分がどうしたいのか、よくわからないんです。手放した後、何だか胸の辺りの風通しが良くなってしまって、一人でいると寒くて涙が出そうになる・・・」

「如月。それを「人恋しい」というんだ。」

颯は、恋わずらいのように乳飲み子に思いを寄せる奏を見つめた。
「如月。あの子が大きくなるのを待って、妻に迎えようなんて気はある?」
「まさか、いくつ離れてると思ってるんです。」

奏は肩をすくめた。

「颯。僕は、一生妻を持つ気は有りませんよ。」
「僕の代で、この澱んだ血はお終いにしなければなりません・・・。だからと言って、不幸だなんて思っていませんから、説得は不要です。」

奏は寂しげにそう言うと、じっと写真に目を落とした。


********************************

前作「はつこい」をお読みになってくださった方へ。
たくさんの拍手ありがとうございました。
移しただけで、ちゃんと推敲、加筆できていないので申し訳ないです。
お読みいただきめっちゃうれしかったです~!(*⌒∇⌒*)♪


|ω・`) 白雪:「奏さま…また、ケイティの写真を見つめてる。」

(*⌒▽⌒*)(*⌒▽⌒*)←二人で写った写真

(´/ω;`) 奏:「・・・ひ・・くっ・・・」

|ω;`) 「奏さま・・・。」

いかん…なんだかものすごく可哀想になってきた。

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4 Comments

此花咲耶  

Rink さま

> 悲しいかな、自分でこの汚れた血は絶やすというのね・・・
> 異国の血が混じるのもいいかと思うけど・・・
> ロマンだから・・・

どうしてもファンタジーなのに、その中のリアルな感情を追ってしまいます。
なかなか、これぞBLというものになりません。
さすがの塾長さま、今やどちらの作品もコメント入れに行っては、此花、おうちに帰ってくる根性無しになっています。
湯あみの描写がすごすぎて、はぁはぁします。しかも、そうなるまでの過程と流れに説得させてしまう背景が描かれていて___φ(。_。*)勉強中~。
塾生、鼻血噴きすぎて、やわらか鼻セレブティッシュ、鼻の穴に詰めてます。(つ∀`*)っ))⌒☆
「コメント書きにいかずに、ここで返すなっ!ヾ(。`Д´。)ノ彡☆」すみません~・・・

> でも時代が時代ですから・・・明治が明けたら
> 活気に満ちた楽しい大正時代・・・
> しかし、その先は・・・昭和の歴史は痛いこと多いからね・・・
> 私実は戦争もの弱いです・・・BLじゃないけどね・・・
> いつでも死を覚悟して生きてるってだけで涙です・・・
> 知覧に行ったらお目目真っ赤になりますきっと(特攻隊の記念館があるところ…まだ言ってませんけどねいつか行ってみたい)

はい。特攻隊の方々が残した文章など読みますと、落涙間違いなしです。
無言館の、美大生が残した絵も文章並みに語ります。
ただの美談にしてはいけないと思います。
命のやり取りは残酷です。

コメントありがとうございました。うれしかったです。(*⌒∇⌒*)♪
で、宣伝しちゃうと~「約束」戦争ものです~

2011/01/27 (Thu) 20:54 | REPLY |   

Rink  

愛しく思っても

悲しいかな、自分でこの汚れた血は絶やすというのね・・・
異国の血が混じるのもいいかと思うけど・・・
ロマンだから・・・
でも時代が時代ですから・・・明治が明けたら
活気に満ちた楽しい大正時代・・・
しかし、その先は・・・昭和の歴史は痛いこと多いからね・・・
私実は戦争もの弱いです・・・BLじゃないけどね・・・
いつでも死を覚悟して生きてるってだけで涙です・・・
知覧に行ったらお目目真っ赤になりますきっと(特攻隊の記念館があるところ…まだ言ってませんけどねいつか行ってみたい)

2011/01/27 (Thu) 19:20 | REPLY |   

此花咲耶  

小春さま

小春さま

> 朝から胸の奥がね、目の奥がね・・・辛い・・・

感情移入してお読みいただき、ありがとうございます。嬉しいです。(*⌒▽⌒*)♪
> ~kanade~
> 自分の気持ちの変化っていうか、本来の自然な感情の起伏にとまどってる。
>
そうです。戸惑っている・・・そんな表現が合います。
> どんどん解放して
> まわりのみんなが愛情たっぷりに導いてくれるから
>
これまでだと、「大きなお世話です~(`・ω・´)」 とか言ってそうだけど今は、素直な奏です。

> (此花ちんがしてくれるからね)
>
> あう~・・・|ω・`)ぷれっしゃ~?小春ちん

> 私も写真見たいよ~此花ちん!
> 見たい!みたい!

下手くそだぞ~。でも、小春ちんが見たいとおっしゃってくれるなら、此花ちょっとがんばるかもしれない。
連載終わるかもしれないけど、待っててね。
ヾ(。`Д´。)ノ彡☆遅いわ~!

コメントありがとうございました。嬉しかったです。(*⌒▽⌒*)♪

2011/01/27 (Thu) 10:39 | REPLY |   

小春  

じわぁ~

朝から胸の奥がね、目の奥がね・・・辛い・・・

~kanade~
自分の気持ちの変化っていうか、本来の自然な感情の起伏にとまどってる。

どんどん解放して

まわりのみんなが愛情たっぷりに導いてくれるから


(此花ちんがしてくれるからね)


私も写真見たいよ~此花ちん!
見たい!みたい!

2011/01/27 (Thu) 06:58 | EDIT | REPLY |   

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