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新しいパパができました・31 

もしかすると、母ちゃんと出会わなければ、詩鶴はこの世からも消えうせていたかもしれなかった。
きっと詩鶴のことを、誰かが一生懸命守ろうとしたに違いないとしか思えない、偶然の出会いだった。

今は誰に許しを請えば良いのか分からないけれど、覚悟を決めたらいつか胸をはって詩鶴の両親と俺の父ちゃんの眠るあの桜の木の下に行こう。
そんな約束を交わしながら、俺は詩鶴と深い大人のキスを・・・ん?

視線を感じて振り向けば、仁王の顔の母ちゃんがそこにいた。

「げっ!母ちゃんっ!」

「柾。洗面所のこの染みだらけのタオルはどういうことかな?説明してもらおうか、あ~ん?」

「あ、やべ。」

後ろに隠そうとしたが、身体を拭いてる途中だったから隠しようもない。
内出血だらけの詩鶴の上半身は、母ちゃんに丸見えだった。
そこにあった使用済みティッシュの山は、昨日、詩鶴の腿を拭った痕跡を残していた。
ティシュの山に、母ちゃんの視線が向けられた。

「うわー。棄てるの忘れてた。」

飛んできた母ちゃんのパンチは、半端なく俺の顔面にヒットし、矢吹ジョーはキャンパスに沈んだ。
立て、立つんだジョー~・・・
とにかく、母ちゃんに俺の本気を伝えなければ。

「柾。こうなったってことは、覚悟を決めたのね。」

俺はきっぱりと頷いた。

「詩鶴を守る。まだ、自分では金も稼げない半端な奴だけど、俺、真剣だから。」

「そう、わかった。詩鶴くんは?本当にこの馬鹿でいいの?」

「はい。柾くんが好きです。」

母ちゃんは、俺のことはぐ~で殴ったくせに、詩鶴の頭をよしよしと撫でた。
この差は何だよ!
いきなり、ぐーで殴るなんて酷いよ、母ちゃん。
俺は殴られて、ヒリヒリするほっぺたを撫でていた。

「ちょっと、母ちゃん。一応、反対とかするんじゃないの?おかしくね?こいつ、見た目はこうでも一応れっきとした男だよ。俺、見たけどちゃんと付いてたよ。」

「そこに、何か問題があるの?」

「問題?・・・俺にはないけど。」

母ちゃんは、元々しがらみや世間体などに囚われる事はなかったが、父ちゃんを亡くしてから、奔放っぷりにもっと拍車がかかっていた。
いずれ、自分のほうが先にいなくなるのだから、悔いのないように生きるんだよと、母ちゃんは俺と詩鶴の頭を同時に抱いた。
抱えられて俺たちは、目を見交わしてちょっと涙ぐんでいた。
ささやかな祝福が嬉しかった。

********************************

母ちゃんがコンクールに出品した義経主従は、一次審査で海外の審査員に高い評価を受けたらしい。
小さな人形の詩鶴は、ほんの少し小首を曲げて、弁慶の胸に寄り添っていた。
初めて信頼できる人に出会ってやっと安堵した、まだ幼い遮那王と呼ばれていた頃の姿だ。

そっと大切に箱の中で彼らは抱き合って、これから二次審査に向かう。
そして、母ちゃんは宣言した。

「母ちゃんね。フランスに行く事にしたよ。一度きりの人生だもん、夢を見ることにした。」

「母ちゃんの師事している先生が、アンティークドールのジュモーの人形の勉強に行くの。もし、その気があるなら一緒に行きましょうって誘っていただいたの。何年か向こうで住んで勉強する。いいかな?」

母ちゃんは熱く語っていた。
こっちで作った人形を販売しながら、色々な方法を習うらしい。

否応もなかった。


*******************************

子供のために全てを諦めるしかなかったと、たまにおっしゃる方がいます。
そんな話、大きくなって聞かされた子供はなんて思うんだろう。
一人に一つの人生。
諦めるのはいつでもできるし、夢を捨ててしまうのはとても簡単です。
だから、母ちゃんは諦めないでBL小説書いてるんだよ。・・・なんて、言えないよ~(´・ω・`) あう~

「諦めたら、そこで終了ですよ。」

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4 Comments

此花咲耶  

Rink さま

Rink さま

ぞうさんのついてる(はずの)Rink さま。←そのうち、ぐ~で殴ってやってください。
冬の切ないお話に胸がきゅんきゅんです。

・・・じゃなく、うちの話でした。
なんとっ!今夜いきなりの最終回です。
おしりの傷も良くなっています。
エチ場面が一回で逃亡するのもどうかと思うのですが、この次こそがんばります、(`・ω・´) ←いつも言ってます~
詩鶴くんの普通って、どうなんだろう・・・(*ノェノ)きゃあ。想像してみた。
コメントありがとうございました。読み手さまの想像力頼みですっ!

2010/12/18 (Sat) 17:57 | REPLY |   

Rink  

太っ腹なお母様

お許しもいただけて
もう何の障害もないお二人。
これで詩鶴くんも普通の生活に戻れるのかな?
どうなんだろう?

2010/12/18 (Sat) 17:12 | REPLY |   

此花咲耶  

サフラン さま

サフラン さま

> 立て、立つんだジョー…。
> (ヤベッ、違うトコロがタッちゃった~。)

そうです、そうです。そんな感じなのです。(/▽\)きゃー♪←かまとと。

> そうか~、「スパイシー内弁慶」君は、覚悟をしたか!!幸せにおなりよ、「弱虫オッパッピー」ちゃん…(しみじみ)
> 亜由美さんは、やっぱり「天然大黒柱」だったわ♪お見事です!

本当に良くできたあだ名です。幸せになると良いなと思います。
なんとっ!今夜でいきなり、最終回です。

> ところで、家の腹黒息子をお気に召されたんでしょうか?A様の「若葉のころ・4」へのコメントで、その後の先輩との事を書きました。

おお~、A様の「若葉のころ・4」はもう拝見しましたが、コメントはまだでしたのでこれから読ませていただきます。(〃∇〃) 興味津々です~

>息子は薄い琥珀みたいな瞳の色をしていて、感情をなかなか見せませんからね。仰天エピソードはまだあるんですよ…。

まるで何かの作品の主人公になりそうな、息子さんですね。どんな仰天エピソードでしょう。わくわく♪

> こんな事なら京都の大学にしとけば良かったと、思う時があります。現役で合格した時は、号泣したんですけどね…。

京都は百鬼夜行と陰陽師の世界でしょうか、天孫系の方は大丈夫かしら。
頭のいい人は、時々視点が違っていて驚かせることがあります。
此花はあんぽんたんなので、頭のいい人の話を書くときはほとんど想像の世界です。想像力によりをかけて大嘘こいて頑張ります。
サフランさまの周囲には、ねたが転がっていそうです。メモのご準備お忘れなく~(*^▽^)ノ
コメントありがとうございました。A様のお宅に行ってきます~(〃∇〃)

2010/12/18 (Sat) 15:19 | REPLY |   

サフラン  

いよっ、ご両人!

立て、立つんだジョー…。
(ヤベッ、違うトコロがタッちゃった~。)

そうか~、「スパイシー内弁慶」君は、覚悟をしたか!!幸せにおなりよ、「弱虫オッパッピー」ちゃん…(しみじみ)
亜由美さんは、やっぱり「天然大黒柱」だったわ♪お見事です!

ところで、家の腹黒息子をお気に召されたんでしょうか?A様の「若葉のころ・4」へのコメントで、その後の先輩との事を書きました。この先輩は頭が良すぎるんでしょうか、常人には理解し難い予測不能な行動をします。又、研究者なので、興味を持った対象に食らい付きますね。大変、貪欲な感じです。しかも、息子も何を考えているのか分かりません。親戚に外国人がいるせいで、息子は薄い琥珀みたいな瞳の色をしていて、感情をなかなか見せませんからね。仰天エピソードはまだあるんですよ…。
こんな事なら京都の大学にしとけば良かったと、思う時があります。現役で合格した時は、号泣したんですけどね…。

2010/12/18 (Sat) 14:42 | EDIT | REPLY |   

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