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青い海の底の浄土・9 

「この天児は、主上の御着物の端切れを頂戴して、わたくしが作らせたのです。」

「大層お気に入り、わたくしの天児とお呼びになり、いつしか天児も恋うるようになったのでありましょうか。」

弟は、気が気ではなかった。
何しろ、いつしかあばら家が海の底にあるようで、このまま家ごとここに留め置かれてはたまらない。
そっと、兄の袖を引っ張ると暇乞いをしようと告げた。

「明日の漁の支度もありますれば、そろそろお暇しようと存じ奉ります。」

ふと気が付いて、神妙に誓った。

「ここで見聞きしたことは、決して口外いたしません。お誓いいたします。」
端整な公達の顔で、虹彩だけをぬめと光らせて龍王が声を上げた。

「気の毒だが・・・。」

ゆらと立ち上がると術が解け、鱗に彩られた錦の肌が、どっと目映い光を弾いた。
思わず臥した頭上から、轟々と大声が降ってくる。

「海の者と契った兄は、もう陸地には住めぬ。あきらめよ!」

「あっ!兄者ーっ!」

押し寄せる気泡に包まれて、波の上に押し上げられながら遠く兄の声を聞いた。

「すまぬ・・・!わしは、ここで龍王さまの御近習になる。」

「そなたは、人の世で達者で暮らせ。龍王さまが、伴侶に這子(ほうこ)をお遣わし下さるそうじゃ!」

泡に揉まれながら、ただ一つ、人の姿では二度と会えぬ確かな予感だけがした。

「いやだ!いやだ!兄者―――!わしを、おいてゆくな――っ!」


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二重カウントを止めています。
これからは、しばらくキリ番も来ないと思いますので、次の100000HPが年内最後だと思います。
もし踏んだ方がいらっしゃいましたら、リクエストにお応えしたいと思いますので、お知らせください。くるくる回って喜びます。 此花


いつも、お昼休みに覗いてくださって拍手をしてくださっている、読み手の皆さま。
すみません、こけてしまいました。(´・ω・`)あう~・・・
リアルが忙しくなって来ましたので、時々こけるかもしれません。
もう直ぐ終わるのに、ごめんね。
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