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新しいパパができました・22 

俺をどんとその場に突き放すと、天音は庭を突っ切って去っていった。
俺をにらみつけた顔がゆがみ、垂れた前髪から覗く目が辛そうだった。
何故だか一瞬、天音が泣いているのかもしれないと思った。
って、違うっ、泣きたいのは俺のほうだろっ。

「うわぁあああああっ!!母ちゃん~~!!俺のファーストキスが~~~~!!」

「キスくらいで、おたおたすんじゃないよ。まったく、情けない子だね~。減るもんじゃ無し。」

「だって、母ちゃん~・・・何がうれしゅうて、あんなおっさん相手に~~!」

正真正銘の俺のファースト・キスが、今日初めて会ったばかりの、あんなやつに強引に持っていかれるなんて・・・と、正直俺はへこんだ。
詩鶴相手ならまだしも・・・。(いや、そこもちょっと違うけど)

「柾のファースト・キスなら、生まれて直ぐに、もっと立派なおっさんの父ちゃんに奪われているよ。安心して。」

「わ~ん。何で、父ちゃん~~。」

「柾くん。ぼくなんて、されたのはキスだけじゃないよ。だから、ここは交通事故にあったと思って我慢して。」

ドサクサに紛れて、驚愕の事実を打ち明けられたような気がしたが、そこは聞かなかったことにする。

「ごめん・・・ごめんね、いやな目に遭わせてしまって、許してね。」

ほら・・・詩鶴が泣くじゃないか・・・。
きっと、詩鶴の涙腺は壊れてしまっているに違いない。
気が付くと俺は詩鶴をよしよしと宥める方に回っていて、ふるふると震える唇をじっと見ていた。
・・・うまそう。

「詩鶴の唇、ぷるぷる・・・」

「美味しそうだよね~、柾。男だったら、食っちまえ。」

母ちゃん・・・その台詞、腐女子とか貴腐人しては正しいのだろうけど、たぶん母親としては最低だと思うぜ。

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詩鶴の淹れたお茶はぬるくなっていたけど、どこか柔らかく落ち着く味がした。

「詩鶴。おばあさんとは長く一緒に暮らしていたのか?」

「ううん・・・お父さんが倒れてから、しばらくの間。父があんな状態になってから、伯父さんが、ちょっと普通じゃなくなって、側にいるのが怖かったから・・・探したんだ。お母さんのほうの身内。」

怖かったと聞いて、俺は病院で伯父ってやつに、のしかかられていた詩鶴を思い出した。
今も、首筋から覗く赤い斑点。
俺は、それがどうやって出来たか知っていた。

「いいよ、無理に話さなくて。」

「ううん・・・おばあさんの話は、柾くんにも聞いて欲しいよ。亜由美さんには、出会った頃にとうに聞いてもらったんだ。」

ここまで連れ戻しに来ただけの俺は、詩鶴のことを知るために来たような状況に、もう腹を決めた。
詩鶴と関わった以上、きっと全てを知らないではすまないのだと思う。
元々、詩鶴の両親の結婚は、両方の家への報告が遅くなったこともあって、双方余り良い顔をしなかったらしい。
ほんの少し、聞きかじっただけでも、兄弟が詩津さん一人を争った波風立ちまくりの話を聞いたばかりだ。
しかも一方には、れっきとした妻子があるのにだ。

「おばあさまはね、ぼくが尋ねていったとき、何も言わなかった。」

「きっと、少しは揉め事も知っていただろうし、靴も履いていない着の身着のままだったから、不思議に思っただろうね。でも、黙ってお茶を淹れてくれたんだ。美味しかったよ、すごく・・・」

娘と同じ顔の孫が現れて、そこで詩鶴のばあちゃんはそのままここにいらっしゃいと、告げたのだった。

「長男夫婦と折り合いが悪くてね、一人暮らしも不便だから施設に行くつもりでいたのよと、祖母は言ってくれたんだ。だから、一人の寂しさは知っているの・・・って。」

たった3年間しか一緒にいられなかったけど、おばあさまはそれまで勉強だけしかしてこなかった、いびつなぼくに他の世界を見せてくれた、と、詩鶴は言う。

身内は居ても、寂しい二人が肩を寄せて暮らした3年間だった。

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二重カウントを止めています。
これからは、しばらくキリ番も来ないと思いますので、次の100000HPが年内最後だと思います。
もし踏んだ方がいらっしゃいましたら、リクエストにお応えしたいと思いますので、お知らせください。
どうぞよろしくお願いします。 此花

何か、どんどん昼ドラの様相を呈してきました。
う~ん。
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4 Comments

此花咲耶  

Rinkさま

> 詩鶴くんてば、僕はキスだけじゃない・・・なんてサラリと激白してるし。
> 柾くん確かにここは詩鶴くんのキスでお清めのチャンスだったよ(笑)

どさくさに紛れてしまいました。(`・ω・´) ←居直ったか、ついに。あう~・・・
しまった~、来るべきBL表現を妄想していたら、その展開を失念してました~。このままだと、一人で告白して、一人で立ち直って、強く歩んで行ってしまいそうです。
しかも、主人公高校生にもなって今頃キスって、どんだけ奥手。←またか~~・゜゜・(/□\*)・゜不憫。

> 昼ドラ大好きです。
> この先も楽しみにしてます~

ありがとうございます。(//▽//)
Rinkさまの、許しあったお互いの心まで溶けてしまうようなエチにたどり着くの、楽しみにしています。
こちらこそ日参しております。コメントありがとうございました。うれしかったですっ!

2010/12/09 (Thu) 08:43 | REPLY |   

Rink  

さらりと告白

詩鶴くんてば、僕はキスだけじゃない・・・なんてサラリと激白してるし。
柾くん確かにここは詩鶴くんのキスでお清めのチャンスだったよ(笑)
昼ドラ大好きです。
この先も楽しみにしてます~

2010/12/09 (Thu) 08:32 | REPLY |   

此花咲耶  

千菊丸さま

> 咲耶さま、お久しぶりです。

きゃあ。千菊丸さま、お久しぶりです。(*⌒―⌒*)にこっ♪

> 「新しいパパができました」、1話から拝読しております。
> 詩鶴の複雑な家庭環境が明らかになりましたね。
> 彼の出生の秘密は昼ドラや韓国ドラマのようですね。
> 昼ドラ的な展開、大好きですよw

お読みいただき、ありがとうございます。
自分でも書きながら昼ドラ~と思いながら書いています。どこがBLやね~ん・・・と、突っ込み入れながら。
でも、基本小心者なのでハッピーエンドになるはずです。
ただ、ほとんど最近のテレビドラマは拝見しませんし、韓国ドラマも見たことがないので、この先もちゃんとドラマになるかどうか心配です。どきどき。
時代物とあまりにテイストが違いますね。読んでくださっている方がたぶん困惑してるのではないかと思います。

> わたしも過去に一次・二次とドロドロものを書いたことがありますが、ラストはハッピーエンドで締めました。

ハッピーエンドが好きです。常に、読後感のいい物を書くつもりでいます。がんばります。

> にしても、天音さんやら詩鶴の叔父さんがなんか厄介な親族ばかりですね。
> 現実にこんな親族がいたらやですねぇ~!

ね~。現実にいたら此花もやです~!(*⌒▽⌒*)♪ 結局、いじめっ子に、なってる作者です。
コメントありがとうございました。うれしかったです!

2010/12/08 (Wed) 22:34 | REPLY |   

千菊丸  

お久しぶりです。

咲耶さま、お久しぶりです。
「新しいパパができました」、1話から拝読しております。
詩鶴の複雑な家庭環境が明らかになりましたね。
彼の出生の秘密は昼ドラや韓国ドラマのようですね。
昼ドラ的な展開、大好きですよw
わたしも過去に一次・二次とドロドロものを書いたことがありますが、ラストはハッピーエンドで締めました。
にしても、天音さんやら詩鶴の叔父さんがなんか厄介な親族ばかりですね。
現実にこんな親族がいたらやですねぇ~!

2010/12/08 (Wed) 22:11 | EDIT | REPLY |   

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