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新しいパパができました・21 

しばしの静かな時間。
俺はその時・・・庭の向こうに人影を見た。

手招きをする長身の男、天音は、密かに俺だけを呼び口元に指を当てて内緒でという仕草をした。

詩鶴の小さな頃の写真をデジカメで撮りまくっていた母ちゃんに、ちょっとその辺歩いてくると言って、俺は天音の元へと向かった。
白衣を脱いだ澤田天音は、やはり父親に似ていて腺病質というのか、どこか人を寄せ付けない無機的な冷たさを持っている気がする。
俺の理性が、こいつに近づくなとサインを送ってきたけど、困ったことに俺は好奇心旺盛だった。

「君に、どうしても聞きたいことがあってね。」

聞きたいことがあるのはこっちのほうだと言いたかったが、頷いた。

「詩鶴は、どうして君の家に厄介になっているんだ?ここにいれば、何不自由なく暮らせるしこの先も約束されているのに。」

詩鶴の決別したいものが、ここに来てから俺には何となくわかりつつあった。
不自由の無い不自由・・・与えられる毎日が、詩鶴を追い詰めた。
窒息しそうになりながら、重なる身内の不幸で、頼るものも分かってくれる者もなく、きっと詩鶴は生きて来た。

「よく分からないけど・・・詩鶴くんは、身内から少し離れて、自分の未来を見てみたいって思ったんじゃないですか?」

「自分の未来・・・?そんなもの。ここにいれば、恵まれすぎるほどのものがあるじゃないか。生意気な・・・何の力も無いくせに。」

言い方が悪かったかなと思ったが、一度言ってしまったから仕方がない。

「与えられるんじゃなくて、自分で選んで決めてゆく道・・・ですかね。俺は、詩鶴・・・くんじゃないけど、息が出来なくなるような思いをしているんだとしたら、やっぱり家を出たいと思います。」

天音は、無礼な俺の言葉に、どこまでも静かだった。

「あ・・・・の。今朝言っていた億単位の借金って、詩鶴の借金ですか?」

ついでに聞いてみた。
だって、あの細い肩にそんな借金があるなんて聞いたら、まじでほおって置けない。
俺は密かに、割のいいバイト候補を頭に浮かべていた。

「ああ。そのことか、心配要らないよ。鴨川病院は法人経営だから、詩鶴個人の借金じゃない。病院を新しく建て増ししたのと最先端の医療機器がドイツからのレンタルで、代金が法外に高いだけのことだよ。」

「そっか・・・良かった。俺は、てっきり詩鶴がその借金にがんじがらめになっているのかと思った。」

がんじがらめね・・・と、天音が鼻先でふっと笑ったように見えたのは、気のせいだったろうか。

「出来ればわたしは、顔を見なくて済むほど詩鶴が遠くへ行ってくれないかと思っているんだが、父があれにはひどく執心していてね。側にいないと面倒なんだ・・・あ、詩鶴が来るよ。この話はお終いにしよう。」

「天音さん。柾くんには手を出さないで!」

詩鶴は、暴漢に襲われたいつかのように、俺を必死に背中に回して庇うようにした。
だから、どう見たって立ち居地が逆だってば。

「ま・・柾くんに手を出したら、一生許さないからっ!」

「おまえが・・・?俺を許さないというのか?」

天音は相当にその言葉が不愉快だったのだろう。
挑発されて顔色が変わり、こきっと首を鳴らすとあろうことか、詩鶴に背後にいる俺をぐいと引き寄せて噛み付くようなキスをした。

「天音さんっ!」

悲痛に叫んだ詩鶴が、天音の頬を打つ。


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二重カウントを止めています。
これからは、しばらくキリ番も来ないと思いますので、次の100000HPが年内最後だと思います。
もし踏んだ方がいらっしゃいましたら、リクエストにお応えしたいと思いますので、お知らせください。
どうぞよろしくお願いします。 此花

何とか、間に合いました。
本日、BL小説の書き方という本を見つけて、参考になるかと買ってみたのだけど・・・ストーリーは重要じゃないって書いてあって、ちょっとショックでした。キャラさえよければそれでいいって。
一昔前の、少女マンガに近いものがある・・・と言うところには納得したけど、余り情報に振り回されるべきじゃないですね。むり~、やっぱりBLって厳しい世界だったんだ。(´・ω・`) 。
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4 Comments

此花咲耶  

nichika さま

> うーん ストーリーは重要じゃないって、そんなに面白くない本を読まれたのでしょうかね。 この本を手にとって真面目に取ってしまう方が少ない事を望みます。キャラだけではお話は進展しないでしょう。 ふつふつと憤りました。

ちょっと、お勉強用にBL小説の書き方の本を買ってみたのでっす!(`・ω・´)
普通の小説とは違うみたいで、マニュアルがあればいいなぁと思ったのですが、ちょっと想像と違いました。

> 詩鶴君の暗い闇が 弁慶柾君に解決できるか?
> そうだミニ余談ですが、前にママが親指を入れた拳のパンチ
> プロレス好きに聞いたのが、指を手の平の中に入れたら骨折するのでプロはしないとのことでした。 ママはプロじゃないし。。。

そんな~骨折するほどの力で、ぶちのめしたりはしませんわ……(*/∇\*) キャ~←母ちゃん
威力がほんの少し増すだけらしいです……そっか~勉強になりました。(`・ω・´)めもっとこ。
___φ(。_。*)メモメモ……プロはしない……nichika さんは、時々……うふふ~

2013/02/10 (Sun) 23:28 | REPLY |   

nichika  

それぞれだけど。。。

うーん ストーリーは重要じゃないって、そんなに面白くない本を読まれたのでしょうかね。 この本を手にとって真面目に取ってしまう方が少ない事を望みます。キャラだけではお話は進展しないでしょう。 ふつふつと憤りました。

詩鶴君の暗い闇が 弁慶柾君に解決できるか?
そうだミニ余談ですが、前にママが親指を入れた拳のパンチ
プロレス好きに聞いたのが、指を手の平の中に入れたら骨折するのでプロはしないとのことでした。 ママはプロじゃないし。。。

2013/02/09 (Sat) 23:36 | REPLY |   

此花咲耶  

Rinkさま

Rinkさま

> キャラが一番、話は二番ですか?

究極の選択と書かれていましたが、ちょっとがっかりしました。
最近、お邪魔させて頂いている皆様の所では、物語が在ってこそ素敵なキャラクターが動いている気がします。
濃厚なエチにも、そうなるだけの理由と納得させる設定があります。

> やっぱり私は話が大切だと思うなあ。

私もそう思います。ただ、商業誌を読まないのでそんな物なのかと、ちょっと驚いたのです。
色々、目からうろこが落ちまくってます。

> 此花さんのお話はきちんとストーリーがあって好きですよ!

きゃあ。優しいお言葉、ありがとうございます。回りくどい所があるので、気をつけないとな~と思っています。
自分を見失うことのないように、独りよがりは気をつけようと思います。

> 天音さん本性が出てきましたね。
> 柾くんにまでキスですか~!柾くんどんな気持ちになってることやら~
> アワワ~!

はい、あわあわして、泣いてます。普通の子ですから仕方ないです。
小説の書き方を読んでいたら、あまりに自分が目指している物と違うので、読むのをやめにしました。
コメントありがとうございました。嬉しかったです。(^▽^)ノ

2010/12/07 (Tue) 23:07 | REPLY |   

Rink  

BL小説の書き方!

キャラが一番、話は二番ですか?
やっぱり私は話が大切だと思うなあ。
此花さんのお話はきちんとストーリーがあって好きですよ!
いいんですこのまま書き続けてください。
天音さん本性が出てきましたね。
柾くんにまでキスですか~!柾くんどんな気持ちになってることやら~
アワワ~!

2010/12/07 (Tue) 22:36 | REPLY |   

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