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紅蓮の虹・44 

そこは、城とはいえ天守も何もない平城だった。


人々は島原の城を落とせず、やむなく原城へ立てこもった。


何十年も捨て置かれた城に、手をいれ、小屋を立て人々は四郎を旗印に掲げて神の名を呼んだ。


26年前に追放された神父が残した書付が、全ての始まりだった。



「今から26年後、この地に善き人現れるだろう。

その幼き子は、習わざるに諸事をきわめ

やがては野山に白旗をたて

諸人の頭に十字架(クルス)をたてるだろう 」


虐げられた人々には、よりどころが必要だった。


そして、四郎は選ばれたのかもしれなかった。


コウゲイが失いたくない掌中の珠は、燃え盛る炎の中に投げ込まれようとしていた・・・


「山田右衛門作を、呼んできてくれないか。」


四郎に頼まれて、コウゲイは指揮本部に向かった。


コウゲイの姿は人には見えないが、心に訴えることで四郎が呼んでいると気づくのだ。


陣中で指揮を執る五人の中に、矢文を準備しているものがいた。


俺の良く知る爺さんの、似ても似つかない過去の姿だった。


四郎は何か深刻に話をしている。


・・・そうだ、ここで山田右衛門作は激昂する。


「わたしに、そのような裏切りはできません。」


「いくら、四郎様のお考えとはいえ、ここから離れよとはあまりにご無体です・・・」


幕府と交渉する矢文に、内通したいと書けと四郎は言っているのだ。


内通とは裏切りの事だ。


身をよじって山田右衛門作は、涙ながらに全身で拒絶した。


「わたしは武士ではないが、ここにいる方々と共にバライソ(天国)へ召されたい。」





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