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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・74 

海広がプールで溺れたと電話を貰った俺は、放課後大急ぎで学校に向かった。

松原君を抱えた四宮君が、まるで王子様のようでしたと、年若い養護教諭が迎えに行った俺に笑顔で語った。

「そうですか。海広が、色々お世話になりまして・・・」

海広が教室へかばんを取りに行っている間に、まだ、精神科医に見てもらったわけではないが、普段から本人に少し自覚がある話を打ち明けた。
最近は、教師の間でもそういったマイノリティに関する話題は頻繁に上り、養護教諭も学生時代から何度も講演会に出かけているという話をした。

「私は、そういった個性に偏見を持って居りません。」

「実際、思春期には同性に恋をすることなどは珍しい事じゃありませんし、松原君のようなケースも何例か県内でも報告を受けています。」

彼女は、悪びれもせず言った。

「お父さん。大事なのは人としての中身です。その点、とても優しい良い子ですよ、松原君。」

学校に理解者が居るのを確認し、俺はほっとしていた。

「頭もいいし、誰にでも公明正大です。まだ大人になりきれていない中学生で、そういうのって珍しいんですよ、お父さん。」

周囲には出来るだけ自然に過ごすことで理解してもらいましょうと、彼女は言った。
校内では、責任を持って見守りますから。
決め付けて海広を量るようなことは俺もしたくない。

海広はいじめられていた小学生の間、図書館に入り浸って本ばかり読んでいたせいか、勉強だけは苦労せずに出来た。
中学生ともなると、運動でも勉強でも何か一つ秀でたところがあると、一目置かれるようになる。
誰とでも分け隔てなく接し、誰にでも優しいといわれて俺は正直しごく気分が良かった。

家に帰ると、第二次性徴、思春期と、難しい頃を一緒に見守ってくれた洸が、みぃに好きな子は居ないのかと聞いてみたんだよと言って来た。
洸は医大の三回生で、出来ればみぃの力になってやりたいという頼もしい存在だ。
トランスジェンダーはとても多岐にわたっていて、一くくりには出来ないよと洸が言うのはまゆちゃんや、成瀬を見ていてもわかる。

思わず海広の好きな子と言うのは、誰なんだと真剣に聞いてしまった。
驚くべきことに・・・海広の好きな相手は俺の予想を裏切った。

みぃの初恋は、佐伯さんと言う小学校から一緒のクラスのしっかり者の「女の子」だった。
ああ・・・と、思わず天を仰いだ。

わからない・・・。

海広を理解するのは、至難の荒行のようで、徳の高い高僧でも無い俺にはまるで先が見えなかった。


第三章   ―完―





お読みいただきありがとうございます。ここまでやってきました。いよいよ最終章になります。
第四章は、みぃくんの目線で進みます。
これからもよろしくお願いします。
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4 Comments

此花咲耶  

NoTitle

けいったんさま

きゃあ。ごめんなさい~~~っ。待って~~~~っ。
何も気がつきませんでした。何も考えずに、普通に貼ってました。
魔法の国の扉は、一度閉じておくことにしました。
そういえば、前に先に読みました~と言うコメントいただいて、あ、閉じなきゃと思ったのに、ころりと・・・綺麗に忘却の彼方に。
元々、制限ありの場所だったので、加筆修正しようと思ってここを始めたの。
え~ん・・・鬼畜ドSのけいったんさまを泣かせてしまいました。
此花鬼畜ドMのはずなのに、Sの素質ありですか。ごめんね。

2010/09/22 (Wed) 00:03 | REPLY |   

けいったん  

ダメですぅ~(ー3ー)

此花さま、「メッ!」 先のことは 楽しみにしてるのにぃ~

『魔法 i らんど』の方を ほんとは すっごく凄く 読みたいのを がまんしてるんだからッ!!

此花たんの あんぽんたんーーーc= c=c=「(*To)」

2010/09/21 (Tue) 23:28 | REPLY |   

此花咲耶  

NoTitle

けいったんさま

この後、うんと先なんですけどパパもうれし泣きする事態が起こります。
・・・と、書いてしまうとけいったんさまは、不思議な力で未来を見ちゃうかな。
きゃあっ。忘れて、忘れてーーっ!

根性が続く限り、明日から第4章がんばります。
ち・・・力尽きそうなんですけど、楽しくて困ってシマウマ。←ほら。壊れかけてる・・・コメントありがとうございました。嬉しかったですっ!!きゅんきゅん。

2010/09/21 (Tue) 22:10 | REPLY |   

けいったん  

佐伯さんですか・・・

「パパ~ 普通で 良かったね!」 『・・・』
「佐伯さんって 女の子だし!!」 『・・・』
「オイって 何か言ったらー」    『・・・』
「・・・」 『わからん...』

ダメです、パパは 今 脳内パニックでーす。

では 此花さま、 第四章を 待ってますからねー♪

2010/09/21 (Tue) 21:32 | REPLY |   

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