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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・71 

「んっとね~。チュロスと、ポップコーンと、ソフトクリーム。」

・・・現実は、こんなものだ。
俺は笑って、財布を渡した。

「ああ、みんな買っておいで。」

向こうから、さりげなくすれ違うように、成瀬が歩いてくる。
せっかく東京にいるのだから、海広に会ってやってくれと無理に誘って連れてきたのだ。
追い詰められたみぃが、最後に縋ろうとしたのだから。
小さな恋人同士のように、朱里と二人代わりばんこにソフトクリームを舐めながら歩く海広と、成瀬がすれ違った。

「みぃ!」

大声で名を呼び、成瀬に指を差して、ジェスチャーを送った。
足を停め黙って見詰め合う、みぃと成瀬。

「ママの・・・?お友達のおじさん・・・?」

「あぁ。」

ほんの少し恥ずかしそうに成瀬の前に海広は立ち、成瀬は困っていた。

「おじさんっ。みぃくんね、前に住んでた所に、会いに行ったんだよ。」

「うん、パパに聞いたよ。悪かったね、みぃが居なくなってからすぐに引越ししたんだ。」

「ど・・・うして、教えてくれなかったの・・・ずっと、ずっと、会いたかったよ・・・っ。」

海広はその場にしゃがみこんで、ぽろぽろと泣いた。

「ごめんよ、みぃ。会わないほうがいいかと思ったんだ。みぃが幸せに暮らしているなら、俺は居ない方がいいかなって。」

涙をこらえようとしたのだろうか。
みぃは、小さく嗚咽を漏らしながら、ひっくとしゃくりあげた。
声にならずに、とうとうその場で丸くなってしまって、俺達は間抜けな顔をして見詰め合い、途方にくれていた。

「ほら、みぃ。これ、みぃの入学式の写真見せてもらったんだ。可愛いな。」

「・・・みぃくんの・・・入学写真?」

話に困った成瀬は、自分の携帯の待ち受けにしたらしいみぃの写真を、本人に見せた。

「なんでこんなの・・・持ってるの?」

「みぃのパパの携帯から、昨日送ってもらったんだ。」

海広は、自分の写真が俺の携帯に入っていると思ってもみなかったようだ。

「パパ・・・みぃくん・・・の写真?」

「いっぱい持ってるよ。デジカメでも撮ったし、パソコンにも入れてある。」

「みぃは、知らなかったか?」

今度こそ、海広は涙の川に溺れてしまった。

「ぼ・・・く、投げたのに。パパの大切な愁都君のこと、投げたのに・・・。」

「ご、ごめんなさい・・・わぁんっ・・・!」

愁都だけが俺の大切な存在で、一枚の待ち受けを見て俺の携帯電話の中を独り占めして住んでいると思ってしまった海広。

成瀬はすっかり困ってしまって、抱きしめて静かに頭を撫でてやることしか思いつかないようだった。
そっと目立たない場所に移動して、海広の涙が止まるのを待った。
成瀬は慈愛の目で包み込むように、長いこと海広を見つめていた。
朱里のハンカチをぐちゃぐちゃにして、海広はやっと泣き止んだ。

「ははっ、みぃは今でも泣き虫なんだな。」

はれた目で泣き笑いする海広は、成瀬の大事な祥子さんに似ていて理性が飛びそうだと、成瀬は別れ際そっと俺に打ち明けた。

「もうこれ以上一緒に居ると、みぃを返してくれとか、かっ攫いたいとか、馬鹿馬鹿しいことを言い出しそうなんで退散するよ。」

「いっそ、思い切りディープなキスがしたいんだが、一回だけいいか?」

本気かどうかもわからない申し出に、俺は苦笑した。

「親として、その申し出は断る。」

成瀬は、爆笑した。

「あ、そうだ。みぃと一緒の写真を撮ってやろうか?」

最近の携帯はデジカメ並みに画素数があって、やたらと綺麗な写真が簡単に取れる。
小さな液晶画面に、照れた成瀬とみぃは頬を寄せて収まった。

「俺も、みぃと撮る。」

遅れてきた翔と、朱里が負けじと、奪い合うように海広と収まり、海広はやたらとご機嫌だった。
兄貴は海広の恰好を見て、何か思ったようだったが口にはしなかった。
答えはもっと先でいい、今は誰もがそう思っていた。







でも、いつかは答えが必要なときがやってきます。
今は、少しだけこのままでいたいです。
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2 Comments

此花咲耶  

NoTitle

けいったんさま

愛された記憶のある人は、土壇場で引き返す力を持っているそうです。
愛された記憶、みぃくんには確かにあります。
そこだけは確かです。
コメントありがとうございました。励みになります。此花、日々噛みしめてます。

あのね・・・実はね、このあんぽんたんは自分の20000hitを自分の足で踏んでしまいました。(T▽T;)←ばか~!
え~ん・・・

2010/09/18 (Sat) 21:19 | REPLY |   

けいったん  

やっと みぃくんに 幸せが...

たとえ この先 茨の道が 待っていたとしても 溢れる愛情で 穏やかに育てられたみぃくんは きっと 負けずに 立ち向かって 生きていける人に 成長していけるでしょうね。

今は 幸せの時間を 過去の分も補う位に 充分に 噛み締め 味わって欲しいです。

2010/09/18 (Sat) 21:09 | REPLY |   

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