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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・69 

朝方近くになって、成瀬はやっとまゆちゃんに、みぃが女の子になりたいと言って泣いたらしいんだと話をした。

「今、何年生?」

「今度、中学生になる。」

まゆちゃんは、そう、そういうのは人それぞれだから・・・とふわりと柔らかく微笑んだ。

「常識に縛らないで、愛してやって。」

「もしかすると祥子がみぃちゃんを、父親みたいな最悪の男にさせたくなかったのかしら。」

俺は、みぃの父親を知らないが話を聞いているだけで相当酷いやつだったみたいだ。
見た目のよさを武器にしてのし上がる話は良く聞くが、あいつは目当てで通ってくる客を取り込んで、何人も風俗のどん底に叩き込んだのよとまゆちゃんは、声を潜めた。

「そんな奴に関わって、みぃの母親・・・祥子さんは大丈夫だったの?」

聞いても良いのかどうか分からなかったが、グラスを片手にカウンターに突っ伏した成瀬の背中越しに聞いてみた。

「大丈夫なわけないじゃない。軽く騙されたわよ。でもね。成瀬ちゃんは、祥子が好きで好きでどうしようもなかったから必死であの子を守ったの。」

「ソープの事務所に連れ込まれてそのまま売り飛ばされかけたときに、頼むから、祥子だけは連れて行かないでくれって、がんばったのよ。」

「元締めの組の事務所で、祥子の代わりに俺に金を作らせて下さい、死ぬ気で金を作りますからって土下座してね。」

「まるで、ドラマみたいだ・・・。」

風俗は、簡単に言えば落ちてゆくほど金は入ってくる仕組みになっている。
当然だが、酒を注ぎ話をするのと身体を売るのとでは、掠め取る方の収入も雲泥の差らしい。
女の稼ぎの上前をはねながら、高級マンションで贅沢に暮らしていたみぃの父親は、女を食い物にする寄生虫のような男だったそうだ。

「祥子はいい子だったけど、田舎育ちのせいか呆れるほど世間に疎くて・・・。
助けると思って知り合いの店で働いてくれと言う、あいつのたわいもない作り話に簡単に頷いてしまったのね。」

「契約書を盾に店の方は違約金をよこせというし、それにそこには騙されたとはいえ、確かに祥子のサインがしてあったしね。」

俺はⅤシネマでよくある話が実態としてあるのだと、驚きながらも黙って聞くしかできなかった。

「何で、そこまで・・・」

眠っていたはずの、成瀬が向き直った。

「そんなの。好きだからに決まってるじゃないっすか。」

スキダカラ・・・

松原さんが火傷したのと、たぶん同じ理由だと思いますよと成瀬が言う。
シンプルな言葉に全ての符丁が合う気がする。

「この人ね、それからよく働いたわ。朝から晩まで、まるで独楽鼠のように。」

出あった時、不潔に思えるほど小汚かったのを思い出した。
アダルトビデオの撮影を何本もこなし、夜通し声を入れて編集作業をするのだといっていた、あの頃はそんな大変な時期だったのだ。

みぃを預かると言ったときも、一瞬、救われたような顔をした。
だから、俺は誤解したままだった。

「それならそうと、言ってくれればよかったのに。」

社交辞令のように聞こえるかもしれないが、言わずにはいられなかった。
酔いの残る頬を照れたように赤くして、成瀬は困っていた。

「祥子と俺の問題だから。それにもう、借金は全額完済したんすよ。」

ふと気が付くと、夜中の3時半をまわっていた。
まゆちゃんに、礼を言って抱擁を交わした。
厚い胸板に包まれると、立ち上がる香水と脂粉の匂いにくらくらする。

「祥子に似ているなら、良かったわ。こんなごついガタイで中身が女だと余計に苦労するから・・・綺麗な子はそれだけで、十分幸せよ。」

哀しい笑顔だった。
苦労の多い人生を送ってきたのだろうか。

何も分からなくて申し訳ない気がした。







ふと気が付くと、内容がBLじゃない気もします。
でもこのお話は、いつか伝えたくて温めてきたお話なのでそのまま上げて行きます。
お読みいただきありがとうございます。    此花
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2 Comments

此花咲耶  

NoTitle

けいったんさま

BLからどんどん離れてゆくのに、コメントありがとうございます。その上、ちょっぴり拍手もいただける数が増えて、なんかもう嬉しくてなきそうですっ!
成瀬さんも、幸せになります。待っててください。
コメントありがとうございました。嬉しかったです。(^▽^)ノ♪

2010/09/17 (Fri) 11:30 | REPLY |   

けいったん  

いい話っす(ToT)

此花さまが その胸に暖めて来ただけ ホカホカと 湯気がたってます~
ほんと 成瀬が カッコよすぎて・・・

みぃくんが これから進む 茨の道で 困り果てて立ち止まった時に 成瀬の存在が 必要となるのでしょうね。

2010/09/17 (Fri) 09:28 | REPLY |   

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