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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・68 

男に騙された女がいる。

その女を愛し、丸ごと抱えようとする優しい男。
生まれてきた子どもと、守ろうとする両親。

何の矛盾もなかった。
・・・ただ、性別だけが捩(ね)じれて違っていた。

「本物の恋をしたんだな。」

「あはは・・・、やっぱり松原さんは俺の知っている男の中では、上物っすよ。」

宝物があるんだ・・と言って、成瀬が俺に見せた写真は紛れもない家族写真だった。
お宮参りの写真だろうか、ピンクのベビードレスを着た海広と愛し子を守る若い両親が頬を寄せ合い、満面の笑顔で写っていた。

幸せな過去の欠片。

死によって引き裂かれた家族が見せる、胸が悼む笑顔だった。
思わずその写真の笑顔が滲んだ。
俺が失ったものと同じものを、成瀬は失っていたのだ。
しかもその一部は俺が奪って、俺の元にある。

「成瀬・・・」

俺とおまえは同じだ。
町の写真屋のショウウインドウーにたった一枚遺された、幸せな家族写真が遺影になって俺は胸に抱いた。
でも、俺は今更みぃを手放したり出来ないんだ、すまない、すまない・・・飲みつけないワインのような発酵酒は合わないのだろうか、俺はうわごとのように繰り返した。

成瀬は俺の肩を抱いて、いつかと同じ台詞を言った。

「みぃは祥子と同じ顔をしてるだろ?」

顔だけ見ると女の子にしか見えないみぃを思い浮かべて、俺は頷いた。

「みぃが側にいたら、こっちの理性が吹っ飛びそうで怖いんすよ。」

「違うと分かっていても、祥子と瓜二つなんすから、頭では分かっていても手を出してしまいそうでね。」

成瀬はそう言い、それからどこかに電話をした。

「じゃ、これから先輩の所へ後学のために出かけますか?」

酔っ払った男が二人、仲良く出向いた先は表通りから外れた、控えめな作りの店だった。
バーだと言ったが、初めて訪れたそこは俗に言うゲイバーだった。
その昔、歌舞伎町に歌舞伎座が来なかったから、新宿二丁目が成長したなどと本当かどうかよく分からない薀蓄を繰り広げながら、成瀬はやたらと饒舌だった。

「成瀬ちゃん。こちらがみぃちゃんのパパなの?」

野太い声に、思わず俺の酔いは醒め、名刺を出そうとして成瀬に笑われた。

「まゆちゃん。そうだよ。この人が前に話した、みぃの父親になってくれた人。」

まぁ・・・と、野太い声の女・・・?は、俺を抱きしめて咽んだ。

「ありがとね。あの子、ちゃんと幸せに暮らしてるのね。」

俺の酔いが醒めると同時に、あっという間に周囲に人だかりが出来る。
みぃの母親、祥子と言う名の女性はこの怪しくも切ない人たちにずいぶん愛されていたらしかった。

「みぃちゃんは、どんな子になったのかしら?」

写真はないのと矢継ぎ早に言われて、携帯を取り出して、中の数枚をスライドにして見せた。
どれも少し前の写真だったが、笑っているものばかりで俺は内心ほっとしていた。
入学式の写真は、そこにいる海広の話を知る人間にとっては、まるで身内のもののようだ。
何枚も赤外線通信で、貰われていった海広の笑顔。

「ずいぶん、愛されてたんだな。」
と、思わず自分の携帯にも送信する成瀬に、笑ってしまった。

俺より年は上だろうと思う、まゆちゃんと呼ばれたお姉さん(?)が、みぃちゃんはね、ここにいるあたし達みんなの子どもよと泣いた。
俺の知らない、海広と祥子さんと成瀬の歴史が確かにそこにあった。

そして、はじめ見た目の違いに驚いた俺は、いつの間にかその場が心地よいことに気付く。
気が付くと一緒になって、自然に声を上げて笑っていた。
まるで昔からの知り合いに会ったかのように、俺達は酒を飲み、たくさんの話をした。
普段飲みに行くのと何ら変わりのない空間で、酒を注いでくれる相手は捻れた性別を持っている。
だが、細やかな心配りにも馴れていつしか気にならなくなっていた。






みぃくんに聞かせてあげたい、真実の恋のお話。

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4 Comments

此花咲耶  

Re: 良いね~~~

> 良い感じだよ!
>
> ふたりのパパが良い感じ、
>
> みぃは沢山の人に愛されているんだね!

たくさんの人に愛される子で居て欲しかったです。
みぃくんはいっぱい苦労もしたけど、周囲に恵まれていると此花も思います。←書いておいて。(*⌒▽⌒*) にこっ♪
いっぱいお読みいただき、ありがとうございます。
多くの方にお声をかけていただいた作品でした。
BLでもないので、どうかなと思いながら上げた作品でした。
コメントありがとうございます。
こんなにいっぱいいただいて、うれしくてくるくるしてしまいます。わ~い!(〃∇〃)

2010/12/30 (Thu) 01:30 | REPLY |   

小春  

良いね~~~

良い感じだよ!

ふたりのパパが良い感じ、

みぃは沢山の人に愛されているんだね!

2010/12/29 (Wed) 23:57 | EDIT | REPLY |   

此花咲耶  

NoTitle

けいったんさま

常識に囚われない世界で、初めてパパは自由な考え方ができたのだと思います。
何が大切で、何が必要か。
笑顔のみぃくんで、このまま行ければいいと思います。自分で書いておいて「茨の道」ってちょっと、酷いんじゃない?って思ってしまいました。
コメントありがとうございます。嬉しかったですっ!

pioさまのおうちで、けいったんさまのうしろの正面のお話、拝見しました。背筋ぞくぞく、心臓きゅうっの背徳と被虐を感じさせる扇情的な素敵作品でした。かごめ、かごめってね、実は「篭目」という字を当てる説があります。駕籠の中の鳥は~って、売られてゆく子のお話だったりします。うふふ、妄想広がってしまいますね~。けいったんさまの作品いっぱい読みたいです。・・・と、ここでおねだりってどうなんでしょう・・・?

2010/09/15 (Wed) 21:48 | REPLY |   

けいったん  

パパも 笑った!

良かったぁ、パパが 笑ってる♪
笑顔の親の許で 育てられた子供も きっと 可愛い笑顔の子!

みいくんも これからは 可愛い笑顔の みぃくんで 生きていけるね。でも 茨の道が 待ってるんだよね~

2010/09/15 (Wed) 21:29 | REPLY |   

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