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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・64 

成瀬との軽妙な会話は、まるで昨日別れた親友と、話をしているような気分にさせられる。
相変わらず、どこまでが本気か冗談か判らないような話しっぷりで、取り止めが無い。

俺は成瀬に、真剣に海広の話をしてみようと思った。

性的な話は、案外餅は餅屋と言うことで、何か参考になる情報を持っているかもしれない。
まあ、その甘い考えはすぐに打ち消されるどころか、度肝を抜かれるのだが・・・。

すぐに、電話をかけなおす、と告げた後、俺は海広と朱里に東京で人に会うことにしたから、二人で電車で帰るように告げた。
朱里に金を渡しとりあえず、どこででもいいから着替えを買って来いと海広に告げた。

「みぃが好きな可愛いのを、買っておいで。どんなのでも良いから。」

ぱっと一瞬に明るくなる表情に、これまで興味がないわけではなかったのだと気付く。
おれは海広が、自分で洋服を買いに行った事がないのを思い出した。
大抵、従兄弟のお古で間に合わせていて、たまに飾り気のない白い下着(ブリーフ)を俺が買ってくるくらいのものだった。

「みぃくんは翔兄ちゃん達の、お下がりがいいの。」

そういうのも、内心血のつながりがないことへの遠慮なのだと思っていた。
季節ごとにあれこれ買ってはきていたが、新品が袖も通さぬまま置かれるばかりなので、とうとう俺は諦めたのだった。

お下がりといっても、海広はずいぶん小さいので、朱里や洸の古いものまで義姉が引っ張り出して持って来てくれた。
中には、女の子が欲しかった義姉の好みの可愛い物もあった。
子ども達が拒否した、新品のうさぎのワッペンのついた薄いピンクのポロシャツ。
海広は襟が伸びても手放さず、そればかり長く大切に着ていた・・・ような気がする。
あれは、色がピンクだったからなのか。

無理して手に入れた持ち家のローンを考えて、つい仕事に追われていた。
俺がする話は、いつもああしろ、こうしろと考えを押し付けるばかりで、海広の気持を聞いてやろうとした事などなかった。

成瀬ならきっと目線に降りて、海広の気持を聞いてやっただろう。
そんな気がする。
いつも俺のやることは後手後手で、ずっと反省するばかりだった。

兄貴にもひとまず電話をして、心配かけてすまないと詫びたら、電話口で思いがけない話になった。

「おい、朱里。千葉にある親会社の保養所に、二人分空きが有るってさ。取って貰おうか?」

「サッカーの試合が大丈夫だったら、みんなでディズニーランドで遊んでから帰るか?」

「明日?土曜だけなら一応休み貰ってるから、俺、行けるよ。」

海広は、目も口も大きく見開いて酸欠を起こしそうな顔だ。
無理もない、ゆっくり遊んでやる暇などずっとなかったのだ。

「周二叔父さん。大変だ。」

「みぃがうれしすぎて、金魚になってる。」

「やったぁっ・・・!パパとディズニーランド!」

海広のことを心配してくれていた兄貴が、せっかくだからといって問い合わせてくれたらしい。
洸は塾で模試があるので来れないそうだが、翔も兄貴が連れてくることになった。
帰りは車があるから、心配ない。

「今晩は、二人で保養所に泊まってくれ。明日は、なるべく早く俺も合流するから。」

海広は本当に嬉しそうだった。

「ほんと?ほんと?みんなで一緒・・・?」

まとわりつき腕に縋る海広は、幼い頃となにも変わっていなかった。
変わったのは、海広じゃなくて周囲の・・・むしろ、俺の方だった。

「こら~、みぃ。パパにくっついてばっかりいないでパパより朱里兄ちゃんの方が好きだと言えっ!」

くすぐられてみぃは、きゃあと声を上げた。
こんなに楽しそうにしている海広を見るのは、久し振りだと思う。





作った自分じゃなくて、やっと素でいられるようになったみぃくんです。
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