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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・63 

ちびの海広は、やっと胸の位置に頭が来るくらいしかない。

幼い頃のように、全身を抱え込んで眠ったのは何年ぶりだろう。

ふと見る二の腕に、小さなうっ血したいくつもの痣が散る。
痛ましくて、そっと指でなぞった。
おそらく、これが養護教諭の言ってた傷なのだろう。

話す事は山ほどあったが、今は何も考えないでパパと一緒に眠ろう、海広。
手離さないで済んだ存在が、何よりも愛おしかった。

足元には気を失ったように朱里が眠る。
ベッドでは大きな息子を抱き寄せて、心的外傷の発作を起こした子ども依存のばかな親父が眠っていた。
おそらく覗きにきた看護師は、このおかしな光景を見て、苦笑したに違いない。

でも、今は・・・

どんなに笑われても、この腕の中の愛しき者を、二度と手放さないでいようと思った。

「みぃ・・・」

担ぎ込まれた病院で、しばらくの入院治療を勧められたが、俺は何ともないと言い張って自宅に帰ることにした。

今回の事で、海広との目に見えない距離が、ほんの少し縮まったような気がする。
お互いに、気を使いすぎていたのだと思う。

「みぃ。帰ったら、パパといっぱい話をしような。」

そういうと、恥ずかしそうに嬉しそうな笑顔を向けた。
何を聞いてももう驚かないだけの覚悟はできていた。

だが、実際には海広は自分の性のことなどを、まだ俺に話そうとは思っていなかったようだ。
自分でも細かい部分までは説明のつかない戸惑った状態だったのかもしれない。
まだ俺の覚悟など浅いもので、この後俺はいやと言うほど自覚することになる。
俺の知っている常識では想像できなかったことが、世界には山のようにあった。

まだ病院にいる間に、成瀬から電話が入った。

「よう。」

懐かしい声に、何も変わらないなと声をかける。

「携帯開いたら、着信の嵐なんで驚いたよ。みぃに何かあったのか?」

「あぁ。実はそうなんだ。」

久し振りだが、声は以前と変わらないと思った。
ごまかすわけにもいかず、海広が家出した話と、今まだ東京にいるんだと告げた。

「心配かけるような真似をしてすまなかった。」

「色々有って、溺れる者はわらをも掴むってやつだったんだ。」

「覚えていてくれて、光栄だよ。」

しばらくすると、会えないかと振ってきた。

「こっちにいるなら、調度いい。良ければ一度会わないか?」

「仕事はいいのか?忙しいんだろう?」

「ああ、おかげさまで笑が止まらないほど、順調なんだ。世の中、一皮剥けば皆、りっしんべんに生きると書くってね。」




みぃくんが逢いたかった、成瀬のおじさん登場です。
今も「えっちのお仕事」しているみたいです。
いつもお読みいただきありがとうございます。拍手もポチもうれしいです。がんばりますっ!此花
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