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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・45 

翔兄ちゃんが卒業した時、本当は学校にはもう行きたくなかった。
6年生は、毎日ぼくをいじめたし、クラスでも馴染めないで一人浮いていると自覚していた。

翔兄ちゃんのいない学校に、一人ぼっちで通うことを、想像しただけで涙が出そうになった。
でも、パパにそう言ったらきっと悲しむってわかっているから、ぼくは休まないで学校に通った。
時々、きゅうっと痛くなるお腹を抱えて、授業を受ける。
今朝も机の上に、マジックで大きく「オトコオンナ」「オカマ」って書いてあった。
濡れた雑巾で一生けんめい拭いても、消えないようにそれは丁寧に油性ペンで書かれていた。

駄目。
・・・こんなことで、泣いては駄目。

大好きなパパやお兄ちゃん達に、心配かけないようにがんばらないと。
がんばろうと思うけど、涙を飲み込んだらお腹が痛くなって、いつしかぼくは、保健室の常連になった。
四之宮君が保健委員だからといって、しょっちゅう一緒に付いて来てくれた。
ぼくに親切にしたら、四之宮君がいじめられないかと、ぼくは心配したんだけどさすがに、柔道部で身体が大きいからいじめられたりはしなかったみたい。
そこは、少しだけほっとした。

四之宮君には
「いいから、松原は人のことより自分のことを心配しろ。」
と言われた。

うん、そうだね。
四之宮君が側にいると、何だかすごく安心するけど、悲しそうに見つめる佐伯さんとやたらと目が合うのに気が付いた。
もしかして佐伯さんが好きな人って、四之宮君なの・・・?
だったら、ぼくのことはもういいからって、四之宮君に言わないと。
オンナノコミタイナぼくが、四之宮君の側にいたら、誤解を招きそうだった。

ぼくは6年生になっても、相変わらずのちびで、余り背も伸びなかった。
食も細いし、色も白い。

パパは忙しいのに、少しでもぼくに肉をつけようとして毎日栄養を考えて、一所懸命ぼくのご飯を作ってくれる。
勿論、叔母さんも殆ど毎日差し入れをしてくれた。
大好きなハンバーグを持って来てくれたときは、うんとちびの時に泣いてるぼくが、ハンバーグに釣られて思わず笑ったという話を、叔母さんはいまだにする。
・・・ちょっと恥ずかしい。

「目にいっぱい涙をためてね、みぃくん、はんばーぐ好きって言ったの。」

「もうねぇ、ぎゅ~っとしたいくらい可愛かった~!」

仕方なく笑ったけど、実はそう言ったことを、ぼくはぼんやりと覚えてたりする。
初めての新幹線とバスに乗って、知らない町に行ったのが始まりだった。
初めてパパと二人で、お出かけした日親戚になったみんなと会った。
優しい洸兄ちゃんに、初めておぶってもらった懐かしい幸せな記憶。

ぼくは今も、あのマンションへの帰り道をきっと知っている・・・と思う。




お読みいただき、ありがとうございます。王道のBL作品ではありませんが、読んでくださる方がいてくださるのがとてもうれしいです。よろしくお願いします。感謝を込めて、本日もう一話続きをアップします。  此花
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