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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・43 

「海広君、これ・・・酷い痣。」

「まだ、女の子達のいじめは続いているのね?」

体操着から出た二の腕の内側に、小さな痣がいくつもあった。
赤と青紫、そして色のさめかけた汚い黄土色の痕がいくつも散っていた。

「これも、クラスの女の子がやったの?」

ぼくは頷かずに、じっと保健の先生を見つめた。
どう返事をして良いのか、分からなかった。

「原因は、何かしら?」

「えっ・・・と。ぼくが・・・全然、男らしくないからだと思います・・・」

『クラスの佐伯さんの好きな男子が、松原って女子より可愛いな。
付き合うんだったら俺は、松原みたいなタイプの女の子がいいなと言ったからです。』

そんな真実は佐伯さんの名誉のためにも、口が裂けても誰にも言えなかった。

女の子達は、揃ってブラジャーを買いに行った話や、新製品のナプキンが出た話をわざとぼくに振った。
ぼくを、困らせたかったみたいだ。
でも、ぼくは何も思わなかった。
女の子達にいつ生理が来るのかどうかも知らないぼくは、知らない話をする彼女達が、ただずいぶん大人に見えていただけだ。
彼女達は、いつも理不尽な話をする。

「松原。あんたさ。女子より、可愛いってどうなのよ?」

「嫌味としか思えないんだけど、松原の存在。」

そんな事いわれても、ぼくにはどうしようもないんだよ。

「何か、むかつくのよね、その可愛い顔。」

可愛いなんて、自分で分からない。

何人かの女の子たちが、外から見えない柔らかい場所をつねった。
苦痛に歪んだ僕の顔を見て、泣きなさいよと笑う子もいたけど、佐伯さんは悲しそうだった。

女の子たちは、何かあるといつも結束する。
仲間を守るのに一致団結して敵(たぶん、ぼく)を、倒そうとする。
佐伯さんの好きな男子が誰か知らないけど、余計なこと言わなきゃいいのにと、思わず大きなため息が出た。
静かに俯いて、目立たないようにしていた毎日だった。

鼻の横に大きなほくろがあるのを、佐伯さんは気にしていた。
利発そうな眉をきりりと上げて、クラス委員をしている彼女はかっこいいと思う。
ほくろなんて、全然気にならないくらい佐伯さんは、凛々しく見えた。
ぼくは、女の子の中で普通に話をしてくれる、少年のような佐伯さんの事をとても好きだった。
でもぼくが何か言おうとしても、何故か佐伯さん以外の女の子達は、何も聞いてくれなかった。

ぼくは、女の子の中では男のくせにと言われ、男の子の中では女扱いされた。
どっちかになりきれないぼくの居場所は、学校にはなかった。
けどね、身体の方はちゃんとパパの望みどおり、男の成長をしているみたいだった。

ある朝。

自宅でぼくは、シーツを握りしめて、真っ青になった。

「ど・・・どうしよう・・・。」

「どうしよう・・・お漏らししちゃった・・・。」

「あ・・違う・・・?」

それは、おねしょではなく「夢精」といって、健康な男の子は、誰でもそうなる現象だった。
だけど、性教育の授業を受けようとすると気分が悪くなっていたぼくは知らなくて、シーツに付いた白いものが病気だと思って真っ青になった。

中学になっても、毎日ぼくがちゃんと学校にいっているか心配してくれる翔兄ちゃんが、その日もぼくの姿が見えなかったので心配してくれたらしい。

「みぃ!早くしないと、遅刻するぞ。」

玄関が突然開き、ぼくは驚いて抱えたシーツやパンツを取り落として、立ち尽くした。

「あ。」

「おまえ、下半身丸出しで何やってんの?
今頃、洗濯か?」

「・・・うん。」

顔から火が出そうになって、ぼくは俯いて困っていた。






見られたくないことってあるよね。みぃくんの場合は、特別複雑です。
お読みいただきありがとうございます。
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