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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・39 

次の朝、何もなかったかのように振舞った、パパとぼく。
パパはいつもどおり目玉焼きを作ってくれて、ぼくはいつもどおり食パンをトースターに入れた。
ふと、パパが何気なく聞く。

「みぃ。学校、お休みするか?」

パパの顔は、何だかいつもより少しはれぼったい気がする。

「ううん。翔兄ちゃんと一緒だから平気。」

心配をかけてはいけないと思った。
男の子なら、少しぐらい嫌なことがあっても元気に学校へ行くはずだから。
パパに又、大きなため息を、つかせたくなかった。
翔兄ちゃんと別れた渡り廊下で、ぼくはほんの少し暗い気持になった。

いきなり6年生の男子から「おい、おかま」って呼ばれたんだ。

「おかま・・・?なぁに、それ?」

ぼくは、それが自分に言われた事と思えなかった。

「みぃくんは、そんな名前じゃないよっ!」

「酷いこと、言わないでよ。」

翔兄ちゃんの、お友達の女の子が食って掛かってくれたけど、その6年生は、お姉ちゃん達にも、うんとひどいことを言った。

「ブス。おまえよりも、おかまのこいつの方がよっぽど可愛いじゃないか。」

「おまえ等みんな、ブスが目立つから、こいつと一緒にいないほうがいいんじゃね?」

酷い言葉を叩きつけられて、女の子は可哀想に悔しくて真っ赤な顔になった。
つないでいた手を振りほどいて、二人が駆けていった姿を見送って、ぼくはひとりになったんだ。
どうして・・・?
泣いて走った女の子を追いかけた子も、泣きそうな顔をしていた。
その日から、翔兄ちゃんがいくら頼んでくれても、女の子達はぼくと遊んでくれなくなった。
何が何だか、わからなかった。

「何でだよ、俺、ずっとみぃの側に居られないから、頼んでいるのに。」

翔兄ちゃんがふくれっ面になっても、みんなうんと言ってくれなかった。

「だって・・・みぃくん、可愛いんだもん。」

「一緒にいると、6年生が酷い事言うんだもの。」

6年生が「ブス」って投げつけた言葉は、鋭いトゲになって女の子達の心を深く傷つけた。
その日を境に、毎日、突然独りの時間が長くなった。
ぼくの欲しかった赤いランドセルを背負った女の子達が、待っているぼくの横を、黙ってうつむいて通り過ぎる。
気にしながらも、ぼくを見て見ない振りをする女の子達。
背中に向かって「お姉ちゃん、バイバイ」ってしたけど、もう遊んでくれないってわかってた。

6年生の男の子達は、何もしていないぼくに何故かいじわるだった。
ぼくのランドセルは、朝から6年生の間を行ったり来たりして中々返してもらえなかった。
放課後にも意地悪されて、中庭のゴミ箱に放り込まれたランドセルをやっと見つけて、ぼくは泣いた。
泣かないでいようと思ったけど、マジックで大きくパパが書いてくれた名前を見たら、パパの笑顔を思い出して、すごく悲しくなってしまった。
ぼくが悲しくて泣くと、「や~い、おかまが泣いた。」と言ってはやし立てた。

その頃、6年生に人気のあった先生が、ぼくのせいで学校に来れなくなったらしいと、噂が流れていた。
ぼくの知らないところで流れて、大きくなるひどい噂。
それは、一年間休職中のぼくの受け持ちの先生のことだった。

「あいつが親に、先生の何かやばいことを、ちくったらしいよ。」

「可愛い顔してるくせに、性格悪いのな、あいつ。」

誰ひとり、本当の事を知らないで、ありもしない無責任なデマが独り歩きしていた。
6年生ともなると、噂話もするし、大人の会話も十分理解できる年だから、家庭で親のする話を聞いたのだろう。
きっと、ぼくの名前が出てきたのだろう。
力の強い6年生につかまると、同級生の子達は遠巻きにしながらも、側から離れて行った。
意地悪な6年生からやっと開放されて、小学校の門の脇で、翔兄ちゃんが出てくるのを待ってると、朱里兄ちゃんが自転車で通りかかった。

「みぃ。何してんだ?」

「あ、朱里兄ちゃん。翔兄ちゃんを待ってるの。」

側に自転車を止めると生垣の石の上に、ぼくをひょいと抱き上げて乗せた。
下から、じっと顔を覗き込む。

「みぃ。さっきまで、泣いてたんだろ?」

「ううん・・・、みぃくん、泣かない。」

どうして分かったんだろうと思いながら、首を振った。



三人のお兄ちゃんは、皆優しいです。
余り綺麗なお子さんだと、実生活ではちょっとばかり浮いてしまいます。
みぃくん、がんばれ~  此花
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2 Comments

此花咲耶  

NoTitle

けいったんさま

きゃあ。けいったんさまのお目目ウルウルさせてたなんてどうしましょう。(ノ´▽`)ノ此花、すっご~い!!
「狂夏」は最初に年齢よりも幼い少年と言うことで、背景を考えました。でも、一応シリアスではないので、すこしづつ散りばめて気が付いたら過去にこんなことがあったのね~・・・と言う風になればいいなと思っています。
だから、号泣はないのですが泣いて欲しい気もするな~・・・いつか、けいったんさまを泣かせるものと、鼻血ぷぷっとなるものを書いてみたいです。(気長に待ってて下さいね。)
いつもお読みいただき、加えてコメントまでくださって、本当にありがとうございます。もう、うれしくてうれしくて、此花号泣です。
・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。え~ん、ありがとう~っっ!!

2010/08/18 (Wed) 20:23 | REPLY |   

けいったん  

今回は・・・

いつも「狂夏」で 大笑いをして その後 少し時間が過ぎてから「凍月」で お目目を ウルウルさせていたのです。
が、 今回は 「狂夏」も 何かシリアスな路線で ヤバイ感じですよねー。
どうしましょう此花さま、 エロでは無いのに 泣き顔を見られたくないから 背後注意で読むしかありませんーーー!

次は 絶対 お目目ウルウルで 済まされないかも・・・ (ToT)...号泣か?...byebye☆

2010/08/18 (Wed) 15:19 | REPLY |   

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