FC2ブログ

小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・31 

あのね、パパ。

怒らないで聞いてくれるなら、ぼくは本当は言いたかった。
ぼくは、男の子だけが持つ、カラスの羽のような黒いランドセルがいやだったの。

でも、そんなことはパパに言ってはいけないと、ぼくは知っていた。
パパはぼくに、いつでも男の子らしく外で元気に遊べって言う。
自転車に乗って欲しいと思っているのも、顔つきで分かったんだ。
本当は余り乗りたくなかったけど、青い自転車を買ってもらって練習した。
バットもグローブも、買ってきたパパの笑顔が眩しくて、ぼくは野球はしたくないって言えなかった。
部屋で絵を描いたり、本を読む方が好きだった。

夕暮れの道路で、パパはぼくを誘ってキャッチボールをしたり、サッカーボールをけるのが、夢だったみたい。
こんな風にしたかったんだと、よく言っていた。

パパの心の中には、男の子が独り住んでいた。
昔、おうちの火事で燃えてしまったという、ぼくと同じ年のパパの本当の大切な子ども。
パパは、その子のことぼくには何も言わないけど、ぼくはずっと前から知っていた。
パパの持っている携帯電話を開くと、そこにはその子、愁都君の笑った顔がある。

パパが一番大好きな、本当の子供。

その頃、ぼくは、パパの大好きなその子みたいになろうと、毎日一生けんめいだった
お日様の下で、サッカーボールを蹴る翔兄ちゃんや、朱里兄ちゃんみたいに、焼けた肌で笑うと白い歯が光る男の子になりたかった。
でも、長いこと外にいてもぼくは少し赤くなるばかりで、焼けた肌にはならない。
鏡を見ては、毎日がっかりだった。

「みぃくんは色が白くて、何だか女の子みたいだな。」

叔父さんが冗談めかして笑っていたけど、ぼくは困っていた。
女の子みたいと言われるたびに、じんわりと背中が汗で冷たくなって、心の中がどきどきした。
どうしてかは分からなかったけれど・・・
叔母さんだけが、ぼくの事をいいじゃないと言ってくれた。

「こんなに可愛いんだもの、いいじゃない。ねぇ。」

叔母さん、ぼくを誰かが可愛いって言うのを、パパは喜ばないの。
だから、ぼくは・・・俯いてしまう。
洸兄ちゃんが、ぼくの口の中にぽんと大きな飴玉を放り込んだ。

「んぁっ?」

「泣き虫、みぃ。ランドセルさ、新しいの買うの止めて、お兄ちゃん達のお古使うか?」

「朱里のランドセルが、使えるんじゃないかな?あいつ乱暴だったから、確か5年生で買い換えたはずだよ。」

覗き込んだ洸兄ちゃんの顔が、返事を待っていた。

「すりにいちゃ・・・ぐふっ・・・」

喉の奥に、大きな飴玉が転がり込もうとして、ぼくはむせた。

「あ~ぁ。みぃは、どこもかも小さいんだな。ほら、ここにぺっとしてみな。」

「ん。」

洸兄ちゃんの手のひらに、食べかけの飴をころりと吐き出すと、がじと噛んで半分にしてもう一度くれた。

「洸兄ちゃん。あのね、ぼく、黒いランドセルがきらい。」

「パパね、赤いのもピンクのも、女の子の色だから絶対だめって言うの。」

洸兄ちゃんは、膝の上にぼくを抱き上げて乗せて、やっぱりと言った。
何が「やっぱり」なのか分からないけど、洸兄ちゃんは、黒と茶色と紺のランドセルを前にして泣いたぼくのことを、怒らなかった。

「みぃ、大丈夫だよ。洸兄ちゃんが、うまいことおじさんに話つけてやるからな。」

大丈夫かなぁ・・・

「ピカピカしたランドセルは、みぃの苦手なかぶと虫の背中みたいで怖かったんだよ。」

次の日の朝、洸兄ちゃんがお古のランドセルを持って来て、パパにそう言ってくれた。

「でっかい、カブトムシになった気がしたんだよな。」

「ね、みぃ?」

「・・・うん。」

ぼくは、パパに嘘をついた。

「みぃくん、朱里兄ちゃんの、ランドセルにするの。」

「なぁんだ、そうか・・・。」

パパの心配は、本当は違うところに有ったみたいだ。

「せっかくだから、みぃには、一番いいやつを買ってやりたかったのに。」

少し不満そうだったけど、パパはランドセルにマジックで名前を書いてくれた。




うわ~・・・昨日、予約投稿間違えて29話と30話が前後して上がってしまいました。
余りドラマチックな場面ではなかったので、話の流れは大丈夫だと思うのですがすが、うう~・・・すみません。
今度からきちんとします。。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。どんくさすぎる・・・此花 
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
にほんブログ村



関連記事

0 Comments

Leave a comment