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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・30 

第二章

小学校に上がる前、ぼく、松原海広(まつばらみひろ)はランドセルを買いに行ったデパートで、酷く泣いてパパを困らせた。
パパは、ランドセル売り場でしくしくと泣きじゃくるぼくに、何とか好きな色を選ばせようとしたらしいけど、ぼくは選べなくて泣いた。

「海広。泣いてばかりじゃパパには、何もわからないだろ?」

「何が気に入らないのか、言ってみなさい。」

「それとも・・・また、おなかが痛くなったの?」

そのころ、ぼくはたまに、原因不明の神経症のような腹痛を起こす事があった。
首をふるふると左右に振りながら、ぼくはぽろぽろ涙を零して悲しげにうつむいていたらしい。

「じゃ、パパが色を決めてもいいか?」

その手に、光る黒いランドセルが有るのを認めて、ぼくは
「いや・・・。」と言って、又泣いた。
・・・悲しくてたまらなかった。
最初にお店の人が、赤いランドセルをぼくの背中に乗せようとした。
ぼくが喜んで背負おうとした時、パパはお店の人にきっぱりと告げた。

「あ。この子は、男の子ですから赤いランドセルはしまってください。」

「まぁ、可愛らしいから、てっきり・・・。
ごめんなさいね。」

そうして、ぼくの目の前から、可愛い色のランドセルはさっと消えた。

パパ。
どうして、黒いランドセルじゃないといけないの?
お店の人がぼくの目の前に並べた、茶色と黒と紺のランドセル。
そのどれも、ぼくは嫌いだった。

結局その日は、ランドセルを買わずに帰宅して、忙しいパパは予定が狂ったと言って、すごく不機嫌だった。
部屋に帰って、ぼんやりしているぼくに、一番上の洸兄ちゃんが声をかけてくれた。

「みぃ。ランドセル買わなかったんだって?」

「・・・うん。」

「そっか。お兄ちゃん、一緒に行ってやればよかったな。」

ぼくには、近くに住む従兄弟のお兄ちゃんが三人居る。
パパのお兄さんの子供だけど、毎日一緒にご飯も食べるし、いっぱい遊んでくれる大好きなお兄ちゃん達だった。
翔兄ちゃんは、小学4年生。
朱里兄ちゃんは、中学1年生。
洸兄ちゃんは、中学2年生。
みんなサッカー部で、大抵、日曜日は試合が入ってるから、みんなで一緒に買い物に行くのは無理な話だった。
お兄ちゃんが一緒に行かなかったから、ランドセルを買うのが嫌だと、ぼくがごねたことになっているみたいだった。
だけど、本当はそんな理由で泣いたんじゃなかった。




他の人と違うって、自分でも薄々分かるみたいです。
自分も時々、普通じゃない自分を感じていたりしますけど、そのままで良いといわれたいです。
人の数ほど「普通」があると思ってます。 此花
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