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紅蓮の虹・29 

「コウゲイ!」


龍は水をつかさどる神か、または眷属(従者)らしい。


コウゲイは水神だといっていた。


めったに人の来ない自分の場所で、心ゆくまで水浴びしていたらしかった。


「四郎、ここに来い。」


「・・・濡れてしまう。」


やっと、子供らしい笑顔になって四郎は笑った。


人外のコウゲイの元でなら素の自分に戻れるということなのだろう。


何故だか、俺には四郎の気持ちがすごく良くわかる・・・気がする。


コウゲイの尾(髪?)が水面に広がった。


「これで、渡れるぞ。」


「水の上を歩けるの?」


そうっと踏み出した、四郎の足は沈まなかった。


四郎は湖面の中心まで来て、神の眷属にひざまずいた。


「沈まなかっただろう?」


「すごいな、コウゲイ。」


無垢な四郎の心のように、湖面は白く光った。




「本当だとも。確かに俺は見た。」


噂が、広まっていた・・・・


水面を歩く四郎の姿を誰かが見ていて、瞬く間に話は人々の間に広がった。


白い羽根を背負った神の御使いが、四郎に言葉を与えたとか、知らないところで四郎はただの利発な子供から、神に選ばれた少年になっていた。


「コウゲイ・・・?」


グラスを覗くのをやめて、俺は隣を見た。


コウゲイがどんな顔をしているのか、とても気になった。


コウゲイにとっては、ほんの些細な遊び心が、四郎を追い詰めた枷になっている。


過ぎたこととはいえ、このしなやかな人型が自分を責めないわけなどなかった。


「誰かに見られていたなんて、知らなかったことだ。わたしの虹、誰でも油断することはある。」


それに・・・とコウゲイは続けた。


「今のは全て、過去のビジョンだ。」




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