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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・8 

迷子の迷子の、子猫ちゃんに繰り返して問うてみた。

「あなたの、おうちはどこですか?」

大きな黒い目が、悲しそうに光る。

「みぃくんのおうち、どこかなぁ?」

単語の羅列はおぼつかなくて、会話にすらならない。
時間は有り余っているが、相手にするのは億劫だった。

大体、何故勝手に人の家に上がりこんでいるんだ?
その時、俺はやっと思い出した。

あ、夕べうっかり鍵をかけずに寝てしまったせいだな・・・。

迷子の子猫はベッドサイドに頬杖をついて、家猫のようにじっと信頼した目を向けた。

「パパは?」

「パパ?」

「昨日の金髪の人はパパじゃないの?」

「おじさん。ママのお友達。」

ああ、ママの再婚相手か、ボーイフレンドか何かかな。
ひどく乱暴で、蓮っ葉な物言いをしていた。

「ママが探してるよ、きっと。」

「ママ、いないの。」

「・・・ママ・・・病院。いつ帰ってくる?」

じんわりと瞳が濡れて来たのを見て、俺はちょっと焦った。
玄関先、と言うか廊下で、いらいらと焦れた男の声がする。

「みぃ!」

「隠れても、駄目だ!みぃ!出てこい!」

「仕事が押してるんだ、出て来いって。みぃ。」

昨日の金髪の青年に違いない。

「ほら、呼んでいるよ?」

顎の先で、そっと促したが動こうとしなかった。
今の俺は、面倒なことはごめんだった。
仕方なく玄関に向かい、青年に声をかけようと思い、立ち上がった。
横をすり抜けて部屋の外へ出た「みぃ」と名乗った子どもが、ボタンを留めていないせいで、はだけたシャツがなびいた。
季節は冬だというのに、驚いたことに、シャツの下には何もつけていなかった。
下着すらも。
何という保護者だと、内心俺は呆れた。

「みぃ!こら。」

根元の黒い髪が伸び始めているせいで、男は余計に無精に見える。
不自然な親子にも見えるが、やはりどこか違っていた。

猫をつまみあげるように、柔らかい髪の毛を掴むと、がくがくと頭を小突き揺らした。

「ほら、手間とらせるな。客が、待ってんぞ。」

「ふ・・ふぇっ・・・ん・・・」

と、子猫が細い声で鳴いた。
玄関の内側で、思わず声をかけようとする自分に気が付く。


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