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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・6 

目に付いた駅前の不動産屋に入り、家を探してくれるように頼んだ。

「しばらく、この町で暮らそうと思ってね。」

不動産屋は、火傷の癒えていないこめかみの大きな絆創膏と頭部に目をやって胡散臭い目で、しばらく見つめていた。
仕方なく、自宅の土地を処分してもらうはずの不動産屋の名刺を出したら、ころりと態度が変わった。
どうやら系列の業者同士で、すぐに確認し、家賃滞納の心配などないと思ったらしい。
マンションを買ってもよかったんだが、この街に根を下ろすかどうかも分からなかった。

始めてマンションを下見に行き、その日から入れる所に決めた。
正直、どこでも良かった。
家具も全て揃っていて、すぐに住める場所。
何から逃げようとしているのか、自分でも分からない。
マンションの下で、もうここでいいですといったら、担当者が驚いていた。

「よろしければ、近くのマンションの他の部屋をご覧になりませんか?」

「地デジ対応の、アンテナとインターネットの光が・・・」

俺は、真面目なセールスマンに、傷が痛むので今すぐ休みたいんだと、嘘をいった。
誰とも会話をしたくなかっただけだ。

303号室。

鍵と、もう1つスペアを貰って、スーツケース一つ提げての入居だ。
今時分の学生だって、もっと持ち物は多いだろうなと思う。

エレベーターを使おうとして、ふと子どもがいるのに気が付いた。

「愁都・・・?」

・・・のわけは無い。
・・・あたり前だ、俺は何を考えたんだ。
背格好の似た子どもなど、世間には、はいて捨てるほど居る。
年のころが同じくらいだと、皆、愁都に見える。
じっと見つめる子どもに、何やら違和感を感じて思わず視線を廻らせた。

ああ、この子は靴を履いていないのか。
もじもじと、裸足の細い親指を重ねていた。

「乗らないのかい?」

紳士物のワイシャツを、胸の辺りでしっかりと押さえ、ゆるく袖をたくし上げて着ていた。
子どもにしちゃ、不自然な格好だ。

「あ、うん・・・」

口許、転んだのかな、赤いものが付いている。
子どもは頭が重いから、何も無い所で転ぶのよ、と脳内で妻が笑う・・・




お読みいただきありがとうございます。
 やっと、バナーの貼りかたが分かりました。書くの好きだけどパソコン分からないんだもん・・・
あなたが大好きです。此花
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