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小説・凍える月(オンナノコニナリタイ)・4 

気が付いたのは、総合病院の寝台の上だった。
喉に包帯が巻かれ、声は出ない。
頭と喉が酷く痛んだ。
上げた手にも、白い包帯が巻かれていた。

「松原さん、気が付きましたか?」

遠くで看護師の声がする。

「すぐに先生をお呼びしますから・・・」

同情と哀れみ。
憐憫の表情に、俺は失ったものの重さを知った。
全てが俺を残して、手の届かぬ場所へ行ってしまったのだ。
同じ病院の遺体安置所で、俺は最愛の家族に別れを告げた。

御遺体は、ご覧にならないほうが良いでしょうと医師が止めた。
寝袋のような、遺体を入れた袋が三つ並んでストレッチャーの上に乗っていた。
車椅子から手を伸ばし、そっと触れたら、中身がかさ・・・と乾いた音を立てた。
息をしていないだけで、そこにいるのが何故、家族ではなくなるのだろう。

小さな愁都は、荼毘に付されてもっと小さくなり、細い煙となり、白っぽい骨の欠片になった。
妻の優しいなで肩も、笑うと片頬に笑窪の出来る小さな顔も、今や携帯の液晶の中に残っているだけだ。

愁都が生まれたときに買った、デジカメもアルバムも、編集したパソコンも何もかも失ってしまった。
葬儀に使った写真は、毎年正月に撮る家族写真が、写真屋のショーウインドーに飾られていたものだ。

それが唯一の、残された家族写真。
慟哭は続いたが、涙も嗚咽も出なかった。




あみさま。
拍手コメントありがとうございました。
きっと、胸の痛くなる部分や、ちょっと性的な部分が詳しくなるはずです。
内容は大筋変わりませんけど、終わりましたらおまけも書くつもりです。
励みになるコメント、本当にありがとうございました。


皆様。今日も、拍手ありがとうございます。
がんばります。此花

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