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小説・初恋・44 

渡欧を慌しく決め、自分もしたいように生きて良いのかと何度も自問したが、今も困窮する自尊心だけ高い華族の話をあちこちで聞き、とうとう政府に持ち掛け銀行創業の決意をした。


奏が思いついたのには、大きな理由が有った。


公家華族というだけで高額の終生年金を貰ったりしても、彼らは無労働を当然とし、何も考えないで浪費を繰り返すのでいつも呆れるほど金に困窮している。


一見、貧困と無縁の貴人達は、伝手を頼って要職に下賜金の無心を繰り返し、市井の者が川柳や狂歌で笑うほど利己的な欲求を繰り返してばかりなのだ。


明治の時代、公職についた華族たちは余りに無能で、一部を除いていつしか動乱の時代下級武士だった者達の荷物になっている始末だった。

爵位によって年金の額が違うから、爵位にさえ文句をつけ、「足る」ということを知らない。


酷いものになると、他家とくらべて額が少ないと要人の下へ、陳情詣でを繰り返した。


困窮から這い上がるのに、呆れるほど他力本願だった。


方法は間違っていたが、如月老人のように己の才覚で財を極めようとするものなど、皆無だったのだ。


奏はそんな華族の高額な終生年金を使ってしまわぬように預かって、利子を生み出す銀行という機構を作ろうとしていた。


西欧列国で銀行と言う新しい機構が作られ、その方法を学び日本に取り入れることが、今回の渡欧の一番の目的だった。

公家(卿)華族の家に生れ落ちたことは、如月奏とこの国の重大な運命だったのかもしれない。


明治の時代から始まって、昭和の時代の初期まで、開国以来燦然と輝く国家に咲いた徒花は、今も微かにその香りを残す。


いずれ儚く華族制度は、散るべきだろうが終幕を引くのは自分ではないと奏は思っていた。


今はただ、青写真すら描けない未知の事業を学ぶために、多くの留学生と共に船出する。


行くては洋々と、波頭は真っ白に砕け、果てない希望に青年の瞳は煌いていた。

留学を終えたこの後、奏は財界を牽引し、颯は後の世に数々の名のある建築物を遺すことになる。


清輝も細菌学の権威となり、彼らの活躍は目覚しいものだった。



汽笛が別れを促した・・・


新妻の肩を抱く最愛の友人の横をするりと抜けて、奏は遠く水平線を見やった。


父の声を持つ颯に、あの日出会った事が、奏にとっては陽の当たる場所で再び活きよと言う、天の啓示だった。

青年達は、燦然と煌く明治の代に確かな轍を残す。


船首に並び立つ三人は、眠れぬまま夜明けを迎えていた。


そして、今まさに昇る朝日に向かい、偶然にも同じ言葉を口にした。


「・・・黎明だ。」・・・と。


文字通り、新しい時代の夜明けであった。 


                 完

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2 Comments

此花咲耶  

小春さま

小春さま

> じぇんぶ読みましたv-238
>
> 夜中にネボケテ読んだところは2回読むことが出来たよ^^

お疲れ様でした~(*⌒∇⌒*)♪
直せてないので、行間も空きすぎていて読みにくかったと思います。
ありがとうございました。小春ちん、がんばった~!

> 奏~自分の人生歩み始めたね(*^ω^)ノ∠※PAN!オメデトクラッカー♪
>
> 颯~良く出来ました゚.+:。(・ω・)b゚.+:。グッ
>
> さ~て、続編始めから読み直すぞ~宜しくd(ゝ∀・*)ネッ!!

こちらこそ、お読みいただきて嬉しいです。(*⌒∇⌒*)♪
よろしくお願いします。

2011/01/24 (Mon) 20:01 | REPLY |   

小春  

゚.+:。∩(・ω・)∩゚.+:。ゎ~ぃ

じぇんぶ読みましたv-238

夜中にネボケテ読んだところは2回読むことが出来たよ^^

奏~自分の人生歩み始めたね(*^ω^)ノ∠※PAN!オメデトクラッカー♪

颯~良く出来ました゚.+:。(・ω・)b゚.+:。グッ

さ~て、続編始めから読み直すぞ~宜しくd(ゝ∀・*)ネッ!!

2011/01/24 (Mon) 16:43 | EDIT | REPLY |   

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