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小説・初恋・16(夜会前) 

如月奏と、上野博物館に行くといったら清輝はご遠慮しましょうかと、聞いてきた。


「何故?」


「何だか鳥の雛の刷り込みみたいですね。

なついてくるのが可愛いじゃないですか。」


時々、清輝は訳知り顔で意味の判らないことを言う。


「言っておくけど、如月は清輝もご一緒にって言ってたんだから。」


おそらく、如月は清輝が面倒を見たのを恩に着ているのだと思う、自分でも収拾つかないような荒れようだったから・・・と颯は断言した。


「ぼくはひどく泣かせてしまったから、嫌われてると思うよ。」

「おや、気にしてたんですか?」


清輝は、痛いところを付く。


きっと英語の授業に遅刻したのを、根に持っているんだと思う・・・


「それは・・・そうだろう。

あんな泣き方をされると思わなかった。

正直言うと、すごい悪党になった気がしたよ。」


ただ現実の問題は、その招待されるはずの夜会には、何を着ていけば良いのかという話だった。


一応、威儀を正して正装で行くべきなんだろうけど、清輝は和装しか持っていないし、颯の洋服は余りに古すぎて友人から笑われた代物なのだ。

出来れば、ワルツとやらも踊れればいいのだけど・・・。


そんな話をした翌日、清輝は課題提出のついでに、外国人教授に指南を頼んできたらしかった。


「昼食の時間を削って教えてくださるそうですよ。」


いつも清輝は、驚くほど手際がいい。


「夜会用の正装は、いっそ借り着にします?」


「新しく誂えるのは、二人分合わせても仕送りじゃ足りませんから。」


寮内の、知り合った同級生に打ち明けると、二つ返事で貸してくれるという。


後日、彼も颯と同じように、華桜陰を卒業後、工大に進学し熱心にコンドルに師事する、何人かのうちの一人となる。

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