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紅蓮の虹・22 

イレーネが部屋を覗き込んだ。

「ちょっといいかしら。」

コウゲイは、ずっと落ち込んだままだ。

神域の存在が、ほんの遊び心で人の世界に介入するだけで、歴史が変わると悟ったのだ。

・・・遅いけど。

気が付かないよりは、ましなのかもしれない。

でないと、この軽薄な龍神はきっと又どこかで、綺麗な少年に声をかけたに違いなかった。

俺が一緒にいれば大丈夫だと思うけど・・・

俺は人間だしな~・・・

でもコウゲイの深い悲しみは、なぜか俺の深いところで共鳴して、そんな時俺も同じように悲しかった。

「わたしの虹。あなたの可愛いお友達が見えたわ。」

え?お友達・・?

一瞬、脳裏に四郎と手を取り合った、目の不自由な百合の姿が浮かんだ。

・・・違った。

俺の知っている百合は、口の悪いやせっぽちの女の子だった。


  
「虹にいちゃ~ん・・・」

ステレオの方だった。

双子の片割れが、俺を見るなり大泣きし始めた。

「泣かずに、ちゃんといえ。」

「百合ちゃんが、連れて行かれちゃった。」

誰に?

「百合ちゃんは行かないっていったのに。」

どこに?

「虹にいちゃ~ん・・・探したんだよ。」

だ~か~ら、日本語を話せ、頼むから。

仕方なく、俺は双子のおでこに手を当てた。

こいつらの話を聞くより、考えを読む方が早かった。

龍の片割れってのは、意外と便利だ。

百合のアル中の母親が、死んだらしかった。

夕方、交通量の多い交差点で、酒を飲んでふらついて車にはねられたらしい。

交通事故は金になる。

落ち度があろうとなかろうと、はねた車が保険にさえ入っていれば幾ばくかのまとまった金が入るのだ。

戸籍上の父親は、とうに母娘を見捨てて籍を抜いていたが、金に困っていたらしい。

どこで話を聞きつけたものか、葬式の後母親が死んで残した金を狙って、娘に会いたいと言ってきたらしかった。

施設に弁護士を連れて来て、父親の権利を振りかざした。

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