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愛し君の頭上に花降る 9 

祥一朗は秋星を抱き起すと、優しく懐に抱いた。

「……秋星、君は誤解しているよ。見えなくともぼくの心は歪で、傷だらけだ。誰かに好かれたいとずっと思い続けてきたが、誰も手に入れられなかった。ぼくが愛するものは、いつも手に入らない。これまで、思い通りにならない人生を送って来たよ。だから……もし君が、ぼくを欲しいと思ってくれたなら、とても嬉しいよ……」

「望月先生……」

微かにくすんだ薔薇色の尖りに、祥一朗は滑らせた唇を落とした。
歯を当てて吸い上げると、秋星が息を呑むのがわかる。そのまま顔を下げて、白い腹に半分屹立しかけた持ち物に手を添えて口に含んだ。

「……あ……っ……」

これまでそんな行為をしたことがない。
祥一朗のセクスは、誰かと身体を重ねても、常に奉仕を受ける立場にいた。
祥一朗は、会ったばかりのこの青年を欲しいと思った。
どこをどう愛撫すべきかは経験で知っている。
口の中で秋星の細いセクスの先端に舌を這わせて絞めると、くんと感じて硬くなるのを感じた。

「……ああ……っ……望月先生……」

波のように脇腹が波打つ。
浜に打ち上げられた生きのいい魚のように、酸素を求めて白い体が色づいてびくびくと跳ねる。
声を漏らすまいと、口を覆って首を振る秋星の白い咽喉が晒された。もしも、この青年が自分を求めてくれたなら、長く渇望し続けてきた飢えが、今度こそ満たされるような気がする。

「祥一朗だ。秋星……辛くはない?」

じわりと滲んだ露を認めると、体を横たえ顔を覗き込んだ。
秋星の腕が伸びて来て、もどかしく祥一朗を求める。祥一朗の手淫を求めて、すっかり屹立したセクスが誘うように揺れるのを扱く。

「どうぞ……どうぞ……ああ……祥一朗さん……」

紅い唇を震わせ、殆ど言葉にならない声を振り絞って、求める秋星が喘ぐ。
オリーブ油と、秋星の持ち物から幾つもこぼれた薄く粘る雫を、最奥に広げてやろうと、祥一朗は片足を持ち上げた。

「あ……」

何気なく秋星の薄い茶色の絞りに目をやり、思わず息を詰めた。
治癒しているが、赤くひきつれた裂傷の痕がある。

医師になったばかりの頃、先輩医師に研修という名目で連れられて行った遊郭で、何度も目にしたことのある男娼の傷は、愛のない激しい性行為による見慣れたものだ。
湿気のこもる布団部屋で、乱暴な性行為によって下肢に重傷を負った身体を開き、何度も治療したことがある。
多量の失血で蒼白になった身体は、怯えて薬も受け付けなかった。
その時の治療で、先輩医師から、後孔の括約筋を緩めるのにオリーブ油を使うことを教えられた。

気づかれたと知って、すっと光の消えた黒い黒曜石の瞳が、責めるように祥一朗を見つめる。
諦めて上体を起こそうとした秋星の肩を抑えて、寝台に張り付けた。
秋星は視線を外し、身を捩って再び逃げようとした。
寝台に涙が散った。

「……興味がなくなったでしょう?優雅に見えた元華族の中身が……とんだ傷物だったとお分かりになって……」

「それでもいい」

秋星の横顔が強張った。

「同情なんてまっぴらです。ぼくは道端で泣いている猫じゃありません……」

「泣いているのは、ぼくの方だよ、秋星。……慰めてくれないか?ぼくは、ずっと一人で誰かに愛されたかったんだ。君がぼくのものになってくれたなら、どんなにいいだろう」

「祥一朗さん……こんな身体でも良いんですか?ぼくは廓で……」

秋星の唇に自身の唇を重ねて、言いかけた言葉がそれ以上零れ落ちないように吸った。




火 木 土曜日更新の予定です。
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