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小説・約束・57 

その日、地上の蜘蛛の子を散らすように、爆撃機は民間人を狙った。


田畑に出ていたものを狩るように、子供や年寄りも大勢無差別に撃たれた。


亜米利加はなだめてもすかしても頑として無条件降伏しない日本に苛立ち、ついに普通の人トルーマンは、大統領として、初めての核兵器・原子爆弾を投下する決意を固めた。


数多の命が消えてゆき、空にそびえる不気味なきのこ雲が発した熱線は、石の階段に人影を焼き付けた。


無差別大量殺人兵器の前に、辛うじてここまで残された日本人の気力は粉塵と潰え、一面の焼け野原は荒涼として命の欠片も存在していない。


この先何十年も、果てのない苦しみに苛まれる存在を、彼は知らない・・・

黒い雨が降り・・・阿鼻叫喚の地獄絵図がそこかしこに描かれた。


長い長い戦争が終わる・・・

何もせずとも汗ばむ熱さの中、雑音だらけのラジオは日本の敗戦を告げた・・・


一部の軍人と利益を得た軍属の思惑をよそに、悔しさや悲しみよりも、やっと戦争が終わった安堵に日本中が包まれた・・・


何も生まない破壊だけの行為は、癒えない傷をそこかしこに穿つ。


呆然と、ただ呆然と・・・涙にくれて玉音放送を聞いた多くの傷ついた市井の者達。


誰もが、疲弊しきっていた。
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