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明けない夜の向こう側 第二章 8 

陸は、鳴澤の家に引き取られて以来、これまで自由だった。
明るく快活に、使用人のいる生活にも少しずつ慣れながら、少年らしく日々を過ごしていた。
引き取られた当初、郁人と同じように、家庭教師をつけて勉強させればいいと鳴澤は告げたが、一度に環境を変えるのは良くないだろうという、最上家令の意見を聞き入れて近くの中学に編入した。
だが、郁人が貧血で倒れたあの日から、少しずつ周囲が変わり始めた。
まず、足の傷が癒えても、陸は学校へは戻れなかった。
それどころか、付き添いなしに寝台から降りることも許されなかった。
郁人の主治医、望月医師が、陸の主治医も兼任することになったと、最上家令が告げに来たが、それ以来、陸の全ては望月医師によって管理された。
使用人たちは遠くから気の毒そうに陸を見つめ、視線を絡ませようともしない。

「どういう事だよ……」

陸は笹崎と最上家令に相談しようとしたが、望月は自分以外の使用人との会話も許さなかった。
三部屋ある郁人の部屋の角部屋に、陸の寝台は持ち込まれ、望月医師の監視を受けることになった。
穏やかな性質の陸が、精神を削られ、苛々と言葉を荒げるようになってゆく。
脈をとる医師に陸は言葉をぶつけた。

「もう、おれの足は直ってます。ねん挫も、擦り傷も……縫った傷もほとんど綺麗になってます。どこも悪くありません。先生、おれは学校に行けていない時間が長かったら、普通の子たちより何年も遅れてるんです。折角、取り返そうとしていたのに……!望月先生、元の生活をさせてください。おれの部屋に帰してください。学校に行きたいんです。お願いします」

何度も懇願したが、望月医師は顔色を変えることなく即座に却下した。

「……うるさいね。大声を出さなくても聞こえているよ。まだ、抜糸した痕が、完全に癒えたわけではないだろう。腫れて熱を持っているのが分からないかね?それだけでも、わたしには完治しているとは思えない。それに、衛生管理もまともに出来ていない薄汚い中学校に、鳴澤家の者を通わせるわけにはいかない。破傷風にでもなったらどうするんだい」

足を投げ出して、寝台に横座りする陸に、ゆっくりと望月医師が近づいてくる。
どこか爬虫類に似た容貌は、温かみがなく伸ばしてくる青ざめた手は冷たかった。

「さぁ、話が済んだら尿検査の時間だよ」

「……じ、自分でできます。便所に行かせてください……」

「わたしはね、君のお父さまから、君の事をくれぐれも頼むと言われているんだよ。陸くん……郁人君もいつもこうして、わたしが体調を管理しているんだ。虚弱なあの子が生まれた時からね……」

有無を言わさぬ冷徹な声で、陸を転がし、両ひざを立たせると、冷たい手が着物の裾を割った。セクスを触られることを予期して、陸の肌がざっと泡立つ。

「何を怯えているんだね。これは……単なる検査だよ。良い子でいれば、君の可愛いセクスを切り取ったりしないから、膝の力を抜きなさい。緊張すると出るものも出ないだろう?強制的に小水を取ることもできるが、以前のように尿管カテーテルを使ったりはしたくないだろう?」

「……っ」

びくりと反応した陸は、医療器具を挿入された時の事を思い出して、唇をかみしめた。
数日前、大暴れした陸は、結局、注射で眠らされて処置されてしまったのだ。
目覚めた時、自分のセクスに挿入された細い管を引き抜こうとして、尿意を我慢できず粗相している。
布団を濡らしてしまって恥じ入る陸に、聞き分けの悪い子供のようだと、望月は嫌味を言った。

「だから言ったんだ。聞き分けの悪いことを言うから、こういう羽目になる。学習することだね」

遠くで眺めているだけだった望月医師と、初めて言葉を交わしたのは、郁人が倒れた夜だった。
外科医が処置を行った後、望月が部屋に現れて、いきなりこれからは自分が陸の行動を管理すると告げたのだった。

「もう少し、自由でいさせてあげたかったのだが……良くないことが起きそうなんだ。徒労に終わればいいんだが、わたしの役目は郁人さまに健康でいてもらうことだからね」

「あの……郁人に何かあったんですか?」

思わず陸が口にすると、笑ったようには見えなかったが望月は片頬を歪めた。

「まだ、詳しい話をする段階ではないよ。ただ、君には、これからわたしの言う通りの生活をしてもらう。まずは、君の身体をどこにも異常がないか、隅々まで検査するからね」

「検査……?」

陸は、意味が分からずぼんやりと望月を見上げた。

「可愛い顔だね……陸くん。どうしたのかな?聴診器をあてるまでもなく、ここまで鼓動が聞こえてくるよ。わたしが怖いのかな?」

「……怖くなんてないです。郁人のお医者様だから……でも、おれは……健康です……」

「当然だ。そうでなければ困る。君はそのために、この家に来たのだから」

部屋の外では、陸を擁護しようとする笹崎を、最上家令が懸命に止めていた。




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