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隼と周二 緊縛キューピー 

周二は部屋に入ろうとして、固まっていた。
ピンクの可愛い花の形のペニスリングをいくつも指に嵌めて、ベッドの上に転がった隼が遊んでいる。
両手には、柔らかな皮の手錠が掛けられていた。
それはいい。

首には最高級の西陣織で作られた特注の「愛犬日本一」の首輪がつけられ、細い鎖を引いていた。
それもいい。

首輪には周二が作った揃いの純銀製のペンダントが、一見、犬の鑑札のようにぶらさがっていた。
そこまでは良かったのだが、傍らには周二の不倶戴天の天敵の「子連れ大魔神・沢木」が佇んでいた。
「うわ~、やべぇ、超、やべぇ。あいつ、あんなもの何で引っ張り出したんだ。俺、今日、まじで命日になるかも」
ドアに耳をつけて、そっと様子を伺った。
「パパ、見て。すっごく伸びるの、これ。ほらぁ、びよ~んっ」
「まぁ、フリーサイズだろうからな」
「周二くんのお部屋の引き出しに、長いのとか、とげとげのとかいっぱいあるの。あ~んってした、動くお人形さんとか、こ~んなくねくねしたおしっぽもね。見つけちゃった」
隼は嬉しそうだった。
「また、色々な種類あつめたもんだな、あの馬鹿」
いちゃいちゃする父子を前にして、ドア向こうの周二は生きた心地がしなかった。
頼むから、その手でアナルストッパーの付いたしっぽをくねくねさせるのは止めてくれ。

「これね。パパが、昔作ってくれたインスタント・ゼリーのいちごの色だね。こうやって光に透かすと、紫陽花みたいに透明できらきらした綺麗な色が変わるの」
楽しげな会話は、どこまでも続く。
「隼は、詩人だなぁ」
「隼ね、パパの作った透明なゼリー、すごく好きだった」
「そっか、今度の休暇にバケツで作ってやるから、腹いっぱい食え」
「きゃあ。おなか壊しちゃう~」
「ついでに、このトラさんカーペットも、もう一度汚しちゃえ」
「や~ん、これ以上増えたら、隼、借金払えない~」
微笑ましすぎて、言葉も出ない。
ついでに、生きた心地もしない。

隼を自室に招きいれ、作ったペンダントを首にかけてやったまでは良かったのだが、喉が渇いたという隼のために、グレープフルーツ・ジュースを取りに行ってる間に、あちこち秘密の場所を開けられてしまったようだ。
そして当然のように、最悪のタイミングで沢木のお出ましだ。
「誰が何のために、こんなもの使うのかな~、誰に使う予定なのか、聞いておきたいですね~、ドアに張り付いている4代目に」
周二はそうっと、ドアの隙間から室内をうかがい声をかけた。
「沢木さん~、あの~、これは決して隼に使ってみようとか~そんな気持でいたのではなく……。純な青少年の興味本意というか……ほら、たまたま通販で、うっかり間違って注文することとかあるじゃないっすか。いや~ん、部長。あたしってば、発注ミスしてしまいました、みたいな?」
「ほ~ぉ。真っ裸(まっぱ)に手錠(わっぱ)、首輪に鎖つけて、俺の大事な隼にこの次は何してくれるのかなぁ、楽しみだなぁ、4代目。これ、どう見てもペニス・リングだよなぁ。誰のペニスに嵌めるのかな~、隼のパパに、教えて欲しいなぁ」
冷酷な声に、ざっと周二の血の気が引いた。
「すんません、ホントすんません!この次なんて考えてないんで、まじ勘弁してください!」
「そろそろ、楽しいお仕置き決定かな~。今回は木本に回さず、俺がやるかな~。幸い、お道具も色々揃っているみたいだしな」
「おっ、お道具っ!?ひえっ!」

そして……。
その時、歴史は動いた……じゃなかった、周二は沢木の背後に信じられないものを見た。
「きゃあっ。パパ、これ見て。キューピーさんが、ぐるぐる巻きになってる~」
隼が可愛い声を上げて、紅い縄で亀甲に緊縛したキューピーを連れてきた。
「あ、ばか。それは練習用だから」
「ほ~ぉ。練習した技は、誰に使うのかな~。それも隼のパパに、教えて欲しいなぁ……」

全て聞き終わらないうちに、土下座もせずに、周二は逃げた。

その姿、脱兎の如く。
死して屍、拾うものなし。
その後、意外にも沢木が上機嫌だったのを、周二は知らなかった。
「野獣のやることは、笑えるな、隼。退屈しねぇわ」
いつも真面目な可愛い恋人が、トラさんのカーペットの上で真剣に「縄大全」を広げた。
「ぼくも、練習する」

周二の秘本「縄大全」には、所々付箋が貼られてあった。
傍にある赤い麻縄は、周二が以前エプロンをかけてことこと煮込み、なめした上物の縄だった。
隼に似合うように、赤く色よく染めてある。
沢木が帰宅したのをいいことに、周二は隼に迫っていた。

「なあ、一回だけだって」
「やだ」
「聞き分けのない、ヤツだな」
新しい縄の掛け方を試してみたくて、周二は隼の腕をまとめて後に軽く捩じった。
「やーーっ!!」
慌てて手を離した周二に、隼は涙を浮かべてかぶりを振った。
「いや、いや。怖いもん」
確かにそこにある緊縛の写真は美しかったが、どう見ても素人に同じ恰好ができるとは思わなかった。
一括りにされた両腕は、高く掲げられ白く血の気を失くしていた。
目には幅の広い皮の目隠しがされ、その表情は分からない。
素肌に長襦袢を一枚、羽織っただけのモデルの中心は持ち上がり、そこだけは別の生き物のようだった。
弓なりに海老反って緊縛されたモデルが、身体で丸く弧を描くようにして吊るされていた。
「あのな。これ、隼が思ってるほど痛くないぞ」
「信じない」
「俺が隼に嘘言ったことあるか?」(あるけどと、言うか、最初っからつきっぱなしだけど)
腕の中の可愛い恋人は、ふるふると首を振った。
「……周二くんは、ぼくに嘘をつかないけど」
「な?それにこんな風に、天井に吊るしたりしないし、目隠しもしない。ベッドの上でちょっと遊んでみるだけだから。俺、おまえのことだけは、本気で一生大事にするって決めてるんだぜ」
隼は回された腕の中で少し考え込んでいた。
「しゅうじ……くん。ぼく……こんな風に、ぐるぐる巻きになったら、トラさんのカーペットの借金、早く終わる?」
周二はこの上なく優しい顔で、そっとついばむように口付けた。
「ああ、約束する。きっと、あっという間に終るって」
「ほんとう?あっん」
周二の指が、ゆるゆると奥をくすぐる。
「だから、ここは漢らしくぐるぐる巻きになれ、隼」
「んっ」

ぐるぐる巻きにされた隼の目が潤んで、周二の指をねだった。
もっと、奥にぼくのイイトコロが有るのと緩く腰を振って恋人が啼く。
そこじゃないの、もっと深いところを突いてと甘く囁く。
『痛くして……。もっと、虐めて、周二……くん。千切れそうなほど、ち……くび、咬んで……あぁ、もっと、赤くなるほど、吸って捏ねて』

「ん~と、こうかなぁ」
「あっ!おい、隼!何やってんだ」
ちょっと油断している間に、キューピーを本の通り見事に緊縛してしまった恋人は、そのまま周二の腕を軽々と縛めてしまった。
「こらーーーっ!解けって、隼っ!」
「やっぱり、ぐるぐる巻きやだもんっ!周二くんで試してからにする~っ」
「隼ーーーーっ!!こらーっ!待てって!!」

「……周二坊ちゃん……何やってるんすか……」
「うるさいっ!油断してたら隼にやられたんだよっ。さっさと解けっ!」
木本が部屋を覗いたとき、周二はベッドの上で縄大全の見本と同じに転がされていた。
余り、美しいとは言えない恰好で。
木本は、苦笑した。
「これは、ねんね才能有るかもしれませんねぇ。抜けないように、ちゃんと関節決めてますよ」
「ふざけろよ、木本。隼は?」
木本が指差す、ベッドの足元に可愛い恋人はキューピーを抱いて眠っていた。
細く長いリードが、伸ばされているのを外してやった。
緊縛と闘って、さすがにちょっと不機嫌だった周二の顔がすぐに甘くなる。
「やっぱ、めっちゃ可愛いな、こいつ」
「しゅうじ……くん、もっとぉ」
幼子のように無防備な姿で、恋人が周二の名前を呼んでいた。
「もっと?って、どんな夢見てんだろうなぁ、隼」

周二は自分の舌で喘ぐ隼を想像していた。
半開きの唇から、紅い舌がちろと延びて上唇を舐めた。
「もっと、して。周二くん」
「可愛いっすね」
「いいからさっさと解け~~~!!木本~~!!」

緊縛されたキューピーが、くすりと笑った。






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