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隼と周二 恋人たちの長い夜 6(最終話) 

まんまと、木本と沢木の策にはまり、周二は犯罪者にならずにすんだ。
こいつを誰が護るんだと言われて、上機嫌の周二は泣き喚いたことも忘れて、沢木に認めてもらったような気がしていた。
「木本、悪かった。俺が、考えなしだった」
素直に頭を下げる周二になんの悪びれた所もなかったが、木本は約束どおり、隼を襲った男を引きずってきた。
「どうぞ。始末の方法はおっしゃってくだされば、こちらの方で片づけます.ミンチにかけて魚の餌にしますか?後腐れなく、骨まで焼却しますか?あぁ、去勢が先ですかね?」
引き据えられた男は、まだ若い大学生と言うことで、どれだけの悪党面かと思っていた周二も木本も拍子抜けしていた。
「おまえが連れ込んだのは、この木庭周二の情夫(イロ)だぜ?覚悟はできてるんだろうな」
顔を寄せると歯をかたかたと走らせながら、その場に盛大に小便をちびった大学生に、周二はこんなヤツに泣き喚くほど腹を立てていたのかと思うと、自分がちょっと情けなくなってきた。
「くせぇな、もう」
「おまえさ、隼をなんて言ってひっかけたの?」
「ひっ、あわわ……」
「びびんなって。ちゃんと話したら、無傷で返してやるよ」
「はいっ」
返してもらえると聞いて、男は必死で話をした。
「そっ、その日、待ち合わせをドタキャンされて、イラついてる所に何かすごくうれしげに歩いているのが目に付いて……つい、声をかけたんです。あの、すごく可愛かったし」
「そうだな、可愛いのは仕方がない。それで?」
「どこへ行くのって聞いたら、宝飾屋さんに恋人にあげるものを取りに行ってきたって言うんで、その人なんていう名?と聞きました。」
「ふ~ん」
『周二くん』
頬を染めてはにかんで答える隼に、大学生は告げた。
「あ、確か、その人じゃないかな。この先のホテルで具合が悪くなったって、さっき医者を呼んでた」
「えっ!?周二くん?えっと、あのっ、こんな銀色のペンダント持ってた?」
「あぁ、持ってた、持ってた。すごく大事なものらしいね。あっ、もしかすると彼氏とおそろいなのかな?」
「そうです。周二くんがぼくのために、作ってくれました。あぁ、でもどうしよう、周二くんの所へ行かないと、心配」
大学生は言葉巧みに、隼をホテルへと誘うのに成功した。
「きっと、君の来るのを待ってると思うよ。具合悪そうだったからさ。良ければ、彼のいるホテルに連れて行ってあげる」
そう言えば、さらうのは簡単だった。
「一緒に行ってくれるんですか?ありがとうございます。助かります」

そうして付いてきた隼を、ホテルで押し倒し事に及ぼうとしたが、そこは上手く行かなかったと男は告げた。
周二は黙ったまま静かに先を話せと、顎をしゃくった。
「後孔を解そうとしたけど、あの子は全然固くて小指すら入らなくて、爪で内側を傷つけてひどく出血させてしまったみたいでした。で、仕方なくひっくり返してしようとしたけど、素股も俺が早漏だったんでぶっかけただけで終りました。その後、急にがたがた震えだして焦点が合わなくなって様子がおかしくなったんで、俺、その場にあの子をほったらかして逃げたんです。本当に、すみませんでした」
周二には、しおれてしまった男をどうこうする気は、もうなかった。
無事だったからと、まるで仏のような慈悲の心で許すことにした。
隼なら、きっとそうするだろう。

壊れそうな心を抱えながら、隼は朦朧としながらも、周二の下に必死で帰って来た。
真っ直ぐに、周二だけを目指した。
それだけ知れば、十分だった。
きっちり、奥歯が飛ぶほどの一発をくれてやって、釘を刺すのだけは忘れなかった。
「いいか、二度目は無いと思っておけよ。今度やったら、本気でミリ単位で刻むから」
「ひっ、勿論ですっ。すみませんでした」
大学生は必死で頭を下げて、その場から逃げるように消えた。

「あれ。帰しちまったんですか?俺、あいつの検査が陰性だったから、お仕置きで犯っちまう気満々だったのに~」
松本が残念そうなのが、酷くおかしかった。
そういえば、松本だけはまだ恋人がいない。
周二は、念のために取らせた免許証の写しを松本に渡した。
「縁があれば、上手くいくんじゃないの?」
「何か、周二坊ちゃん、余裕が出来たみたいっすね。男っぷり上がったみたいっす」
「おうっ。男は多少のことじゃ動じないもんだからなっ」

詳細を知る木本は、笑いをかみ殺し天井を見上げた。
あの子どもっぽいねんねに、いい子といわれ、挙句の果てに周二くんは、ぼくがずっと護ってあげるからねと、優しく頭を抱きしめられていたなんて、知らなかったことにしたほうが良いんだろうなぁ。
沢木が様子を知らせるために、ずっと通話中にしていたなんて知ったら、周二はどんな顔をするだろうか。

周二の一番長い日が終ろうとしていた。
一方、沢木もまた、周二の本気を知り気分が良かった。
「隼は、本当にあの泣き虫の野獣でいいのか?」
膝の上にいる最愛の息子は、周二と知り合って以来、ほんの少しずつ時を動かし大人になろうとしていると、沢木も気が付いていた。
このまま強い絆で結ばれて、全てが好転すれば良いと、思っていた。
「うん。周二くんは、ぼくが護ってあげないといけないから」(`・ω・´)ほんきっ!
「そっか~、隼は強いんだな」
「お兄さんだもん」   
隼は病院で長く入院加療し、その後リハビリ生活を含むと二年も入学が遅れていた。
知ったら、あの野獣はどんな顔をするだろうと、沢木は少し楽しみだった。
また、素っ頓狂に驚いてうそだろ~!と、叫ぶに違いない。

「早く、退院できると良いな、隼」
「うん。これ早く渡したいなあ。喜ぶかな、周二くん」
渡しそびれた銀色の煌くプラチナ・チェーンに、周二の作ったペンダントが光る。
「金は?小遣いで買ったのか?」
「木本さんに、前借しました。これ、めのほよう、二か月分なの」
「二か月分な~」
あってないような値段を聞いて、沢木は久し振りに声を上げて笑った。
「そうか~、放課後の真っ裸(まっぱ)で手錠(わっぱ)のあれ、まだ終ってなかったのか。借金払いもなかなか大変だなあ、隼」
「漢(おとこ)ですから、がんばります」(`・ω・´)きりっ!

ほんの少し二人の仲が進展した、狂おしい秋が深まってゆく。
狂おしく恋人を求めて泣いた、周二の一番長い夜がやっと終わりを告げようとしていた。


            隼と周二 恋人たちの長い夜 -完-






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