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隼と周二 恋人たちの一番長い夜 1 

松本は木本に頼まれ、木庭組管轄の店に変わりがないか確認に回っていた。
ミカジメ料を取れる店はかなり減ってきているが、一応、これもシノギの出る彼等の大切な仕事の内だった。
夜はメンズキャバクラの仕事もあるが、昼間も結構仕事は忙しい。
「あれ、今のねんね?そんなわけないか」
肩を抱かれて、抗うでもなく安ホテルの中に消えていった少年を、隼のような気がしたがまさかね~と一人ごちた。
「メンズのアフターだな、きっと」
何しろ親父が、子連れ大魔神といわれる沢木なのだ。
手を出すのは、どんな玄人でも二の足を踏むだろう。
「めのほよう」といいながら、放課後は松本が世話になっている木庭組の4代目、周二と隼はいちゃいちゃしている。
どこか抜けた所のある子どもっぽい隼と、年の割には早熟の周二のやり取りが面白くて、松本も毎日、隼に会えるのを楽しみにしていた。

「松本、シマはどうだった?」
「今のところ、木本さんが出ばるような揉め事はないです。他所の組が、入ったという話もありません」
ふと思いついて、聞いてみた。
「あの、周二さん、今日ねんねは来ます?」
「おうっ、一時間前に買い物終ったからってメールがはいってた。もう着く頃だと思うんだが、ちょっと遅ぇな」
「買い物って、どこです?」
どこか、釈然としない違和感を覚えて、周二が聞いた。
「隼がどうかしたのか?」
「いやあ、違うとは思うんですけど、何かちょっと似たような横顔を見かけたんで」
「だから、どこで見たんだって聞いてるんだ!」
「三丁目の裏のホテル街ですけど」
ホテルの林立する3丁目と聞き、周二は立ち上がり松本を殴りつけて、怒声をあげた。
「確認しろよっ!!くそっ、あ~っ、電話通じねぇっ!!」
苛々と腹立たしさをぶつけるように、外へ飛び出そうとして小さな影にぶつかった。
「っと、隼!?良かった!遅かったから心配したんだ。これから迎えに行くところ……?」
幼い恋人は、焦点の合わない視線をとろりと曖昧に向けた。
どこか様子が違う。
周二が直感で悟った。

気づかず松本が声をかけた。
「ねんねさん。さあ、今日も「めのほよう」をちゃっちゃとやっちまいましょ」
松本の手が、慣れた手で隼の制服を剥ぎ取ってゆこうとした時、周二の思い人は両耳を押さえ高い悲鳴を上げた。
「ぃやーーっ!!いやあーーっ!!」
「うわっ……」
いつものように優しく甘く抗うのではなく、本気で怯えて隼は身をすくめ顔色を失くしていた。
「隼?どうした、大丈夫だから、ほら」
声に驚いた周二が、震える隼の小柄な身体を内側に巻き込んで落ち着かせようとしたとき、全身の力が一気に抜けて腕をすり抜け足元に崩れ落ちた。

一気に糸を切られた操り人形のようにぐしゃりと落ちて、手足が妙な方向に曲がった。
「周二坊ちゃん、今の声どう……あっ!」
「木本!隼の様子がおかしいんだ」
周二も、松本も今の状況が分からず、呆然としていた。
そこに倒れているのは最愛の恋人だが、まるで白蝋のように青ざめた肌は、いつもの隼の柔らかい白桃の恥らうような薄い赤みも失っていた。
大きな目を瞠ったまま、意識をなくした血の気の無い白い小さな顔は、周二の知らない顔だった。
「おい、ねんねっ」
覗き込んだ木本が、軽くぱんぱんと頬を張っても身じろぎもしない。
倒れこんだ半裸の隼を抱き上げて呆然とした周二を、同じく唖然と見る松本に、すぐに沢木に連絡を取るよう木本が指示を出す。
「松本、救急車の手配」
「了解しました」
そっと触れた手に、いつも恥ずかしげに緩く抗う指先が、冷たく力なく流れた。
「しゅ……ん?」
返事はなかった。
「隼!?おいっ!どうしたんだよっ!隼!!何か言えっ!」
大声で怒鳴る周二を、木本が指で制した。
「周二坊ちゃん、ちょっと、これ、まずいです。」
「え?どういうことだ?」
呆けたように周二が木本を見上げた。
「ねんね、息してません」
その言葉に凍りついた。







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