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隼と周二 近づく嵐1 

木本は警察署にいる沢木の元を訪れ、頭を下げていた。
「そろそろ、蒼太を許してやってくれませんかね?」
今、沢木は時効にかかりそうな案件を抱えていて、至極不機嫌だった。
「学校で、色々不便らしいんですよ。ですから、文化祭準備期間の間だけでも見逃してやってください。」
「お前が、何で俺に頼むんだ?木本。あのガキに、なんぞ借りでもできたか」
「……いえ」
冷ややかな目は、穏やかそうに見えてその奥は決して笑わない。
最愛の息子が絡めば、この男は警察の職など投げ打って、相手を地獄に叩き込むだろう。
思えば周二も、因果な相手に惚れこんだものだ。
「まあ、お前が全責任を持つと言うのなら、いいか」
「そういうことで、お願いします。」

生徒会長は、以前、生徒会執行部書記の沢木隼にちょっかいを出して以来、接触を禁じられていた。
周囲も何かあったのだろうとは思いながら、首をかしげながら近づかない二人を眺めていた。
「先輩~!一年生の出し物候補、提出されてます~~!けほっ」
「ああっ、沢木」
伝えたいことが山積みで、メガホンを使って大声を張り上げる隼も、声がかすれかかっている。
学校では話しかけない約束の周二は、なんとか「薬用南天のど飴」を渡したくて、うろうろと隙をうかがっていた。

蒼太の携帯の着信音が、マナーで震えた。
「木本」と点滅する名前に、樋渡蒼太はうれしくて跳ね上がる心臓を苦労してねじ伏せた。
今は、頭の切れる明晰な生徒会長の顔を崩してはならない。
「あ」
『お仕置き終了、沢木隼と会話してよし』
そんな事務的なメールに思わず赤面しながら、蒼太は生徒会を仕切る。
手招きして、沢木隼を呼び「君のお父さんが許してくれたから、もうメガホンを使わなくていいよ」とささやいた。
「良かったぁ。ぼくね。もう喉が限界だったの。がらがらだもん」
「うん。ごめんね」
心から喜ぶ後輩に、樋渡蒼太は今は余裕を持って目を細めた。
愛は、人を大きくするのだ。
今はこの幼い過去の思い人よりも、甘く危険な拘束者に夢中だった。

樋渡颯太は以前のように、てきぱきと差配をふるっていた。
「たかが学校行事だといっても、飲食関係のバザーの収益がぼくの代で減収するのは好ましくないから、屋台の数はもう少し増やす方向で考えて。」
「はい、会長」
「一応、綿菓子とたこ焼きの機械はレンタルできることになっているから、業者にもう一度確認取っておいてね」
「わかりました」
執行部は彼の手足のように動いていた。
「他校には一応、文化祭がかぶらないように校長先生に調整、つまり根回しをお願いしてもらって。これは、風紀部担当で」
「はい。」
山積みの書類が、あっという間に消えてゆく。
「教室以外のつかえるコンセントの数は、昨年と同じ?物理部」
「同じです」
「普段、使用していない所が、漏電などしていないか、通電確認お願い」
「はい」
「学校保険の確認と、保健所の書類はできたかな?日曜に出勤できるか校医に確認をとっておいて。保健体育委員」
「養護の先生にお願いしました」
「文芸部が、上映する映画の手配は?」
「映画館の方にお願いしています。予算は25万円で」
「ああ、それから・・・」
学校創設以来といわれた天才肌の生徒会長は、文化祭に向けて準備に余念がない。
うっとりと周囲は尊敬と憧憬の目を持って、希代の生徒会長、樋渡蒼太を眩しく眺めていた。






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