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隼と周二 お仕置きの夜と朝の間に 2 

夕陽の射す部屋で、周二は松本と散々けちをつけていた。
「何だぁ?木本ってばミイラ取りがミイラになったのか?」
「名前が悪かったんすよね~、ほら、この間ションベン小僧に掻っ攫われた、兄貴の好きなヤツいたでしょ?」
「え~と、サッカーの何とか蒼太って選手だっけ?」
「同じ名前だったんすよね」
周二にしてみれば隼が襲われかけたのだから面白くないが、木本が気に入ったのなら仕方ないだろうと思っていた。
サッカー選手に失恋した後の、酷い落ち込みを間近で見ていたからだ。
「仕置き」といいながら、うっかり木本は取り込まれて、愛をはぐくむことにしたようだ。
やりすぎて丸一日、腰が立たなくなった生徒会長を、甲斐甲斐しく面倒を見たらしい。

「なあ、あいつってば、サディストなのは知ってるけど、実は隠れショタなんじゃねぇ?」
「兄貴の趣味も、よく分かりませんね。てっきりガチだと思ってたんだけど、ショタコンか~。女もいけるし、何でも来いじゃないっすか?」
「すげぇな」
ふたりは、しみじみため息をついた。
「今日で、仕置きはお終いだって言ってたよな。客に見せるんだろ?」
「そうなんすよ。木本の兄貴が久々に仕切るってんで、キャンセル待ちが出てるそうです」
「あいつ、身体もつかなぁ」
周二は身震いした。
このまま、隼といたらいつか自分も沢木に「死ぬよりこわい」お仕置きをされるのだろうか。
「あんなとんがったやつ、可愛くも何ともないがな~」
「ねんねの方が百倍可愛いですけどね、早く来ませんかね~」
生徒会長のお仕置きは人事なので、二人はリビングでまったりとくつろいでいた。

ふと、松本が生徒会長の落ちた名札に気が付く。
「ん?樋渡って?どこかで聞いた名字だなぁ」
「そうっすよねぇ」
流しっぱなしになっているテレビはニュースを映していた。
『……しばらく、わが国での執行はされていませんでしたが、今回政権交代によって法務大臣の決定が下されたんですね』
『はい。犯した罪にはしかるべき罰をという信条で、認可させていただきました。どんな悪にも、全身全霊で立ち向かう所存で居ります』
『樋渡法務大臣、これからの刑執行については?』
『裁く立場に居りますので、相対的に判断して……』

うんぬん、かんぬん。ちんぷん、かんぷん。
樋渡?法務大臣……?
「似てるな~と、いうか、あいつ母ちゃんそっくりだな」
「眼鏡外したら、あんな顔なんすね」
「正真正銘のサラブレッドなんだな~って!やべぇじゃね~か!木本を止めねぇと!」
二人は木本を阻止しようと、木本の店「螺旋階段」に走ったが、時は既に遅かった。

「う、わ~……」
そっと覗いた店の中央で、隠微なライトに照らされた半円型の舞台の上、半分露わになった木本の綺麗な筋肉質の上半身が見えた。
一任されたお仕置きの仕上げは、衆人環視の中で行われている。
白いシルクに透ける、背中一面の見事な緋鯉は龍に成ろうと懸命に滝を駆け登る姿を描いたものだ。
濃い朱赤は強い色気を放ち、一目で人を虜にする……のは、おいて置いて。
初物見物で、ギャラリーは大入り、立ち見まで鈴なりだ。
ピンスポットに浮かぶ痛ましい姿。
幼い舌使いで樋渡蒼太が木本に抱え込まれるようにして仕えていた。
「いいか、歯ぁ立てんなよ。しっかり濡らしとかねぇと、きついのはおめぇだからな。そうだ……良い子だ」
優しく触れたら、背中がビリとこわばった。
短い鎖の付いた拘束具の黒いベルトが、これから使用されるために、四肢の関節に掛けられていた。
これから自分がどこへ堕ちて行くのか見えないように聞こえないように、目と耳は厚いラバーで覆われ、顔は半分しかわからないようになっている。
あれで案外優しいとこあるから、大丈夫じゃね?……と、周二と松本はアイコンタクトを取りながら、そっと扉を閉じた。

サディストの木本は経営者の顔で、生徒会長を万来の客の前で抱こうとしていた。
木本の本気の怖さを、二人は知っていた。
何をされるか分からない恐怖は、見えないと倍増する。
菱に縄目を受けた肌は、まだ青白く緊張したまま、これから仕置き用の椅子に四肢を開いて晒され、固定されるのだ。
嗜虐好みの客は、木本の罠に落ちた獲物がもがきながら色に堕ち、喜色に開花する瞬間に立ち会うのを期待していた。
慎ましい排泄器官は、透明なディルドゥを受容する紅薔薇へと形を変えられ、残酷な長い責めが夜明けまで延々と続く。
芯を持ち始めた木本のモノに、これから自分を酷い目に合わせる凶器に、必死で舌を這わせる生徒会長の……
明日はどっちだ。

「見なかったことにしよう。俺達は何も見てない。いいな?」
「そうっすね、ねんねもう来てるかな~」
「お前、隼の事、油断してると触りまくってるよな?」
「あはは……」

もうすぐ、狂った夏が終る。
秋の気配が近づいていた。

長い仕置きが終わり、やっと許された蒼太は、疲れ果てて気を失うようにして眠っていた。
目もとにできた深い隈が影を落とし、どこか寂しげで幼く見せていた。
ベッドサイドに、木本が腰を下ろすと、微かに薄く空ろに目が開くが、焦点はまるで合っていなかった。
無意識にゆらと半身を起こそうとし、小さく悲鳴を上げて樋渡蒼太は崩れ落ちた。
「ああっ……」
「いいから寝てろ」
自分の身体なのに、まるで思い通りにならない。
節々が、驚くほど痛み、全身がはれぼったく熱を持っていた。
「飲め。喉のひりついたのが楽になる」
薄いレモネードのような蜂蜜の味のする冷たい飲み物をグラスに入れて、顔の横に添えてやった。
密かに、痛み止めが溶かしてあった。
「ありがと……ござい……す……」
その声は酷い咽喉風邪で炎症を起こしたように、酷くかすれている。
震える手を見て、木本はグラスを取り上げると、口に含み喉に流し込んでやった。
「んっく……」
見上げた蒼太の目に、露が宿る。
無理もない、夕べは初めてだというのに数時間も責めを受けた。
木本は硬い身体を時間をかけてほぐしてやろうと思っていたが、つい気が急いて十分じゃない場所に大人気なくねじ込んでしまった。
驚くほど相性の良い、身体だった。

観客も一緒に、この青い身体に煽られて熱気を帯びていた気がする。
舞台上の蒼太はずっと叫びっぱなしで、初めての痛ましさに加虐嗜好の強い客も十分満足したようだ。
だが長く悲鳴を上げ続けたせいで蒼太の声はかすれ、拘束されるのを無駄に抗ったせいで、身体中傷だらけになってしまった。
空に向けて若い精を放つよう背後から抱えられた時も、狭い場所を強引にえぐられたままだった。

正面に精を放つと、ついには全身を痙攣させるようにして気を失った。
全ての毛穴が、縛められて何も見えない恐怖に粟立ち慄いていた。
沢木の言う、仕置きとは意味が違ってしまい後で詫びを入れようと思った。
「訴えてもいいぞ?すまん、ちとやりすぎたな」
「いえ……いいんです」
緩く横に首を振る蒼太に、木本が意外だという風に訝しげな視線を送る。
確かに、もし訴えるといったらこれでも?と問う材料は密かに周到に揃えてあった。
無修正で角度を変えて何本もムービーは回り、顔は分からないだろうが、山ほどの局部結合アップの写真が既にカードに入っている。
脅しのねたには困らない。
それでも、まだ木本にしては別人のように優しかった。
「ぼくが沢木に酷いことをしたから。これは、罰だからいいんです。」
「無理しなくてもいいんだぞ。きつかったな。泣いてもいいぞ、ん?」
優しく視線を絡ませた木本に向けて、健気に作ろうとした笑顔が歪み、蒼太はふいに声を上げて幼子のように泣いた。
「うっ、あぁんっ……あ~んっ!」
「蒼太……よしよし。よく頑張ったな」
昨日連れて来られた時は、妙に醒めたガキだと思ったが、今は年相応に見えた。
驚愕の連続に、さぞかし怯えていただろうに舞台に上げても泣き崩れたりはしなかった。
いじらしいと思い、つい抱き寄せた。
「人ってのは面倒くさい生き物で、酷い目に合わなきゃ痛みってのはわからないんだよなぁ。いいか?もう、沢木には構うなよ。」
しゃくりあげながら、こくこくと頷いた。
「いい子だな、蒼太。これでお終いにしてやるから、泣くな」
「お終い……?」
「ああ」
頭にそっと載せて撫でた木本の手に、蒼太がすんと鼻を鳴らして、子猫のように頬を寄せた。
「初め、てでこ……わかったけど……吐くほど痛かったし、辛かったけど、目隠し取ってくれたとき、木本さんの顔が見えて、うれしかった」
「はぁ?」
うれしかったといわれて、木本は目を剥いた。
「おい。立ち上がれないほど、酷い目にあわせたのはこの俺だぞ?」
「目も耳も塞がれて、あのまま気が狂うかと思ったけど……木本さんが、ぼくの手をずっと強く握って励ましてくれたから」
「いや、それは押さえつけてたからだろうが……よ?」
蒼太は頬を染め、初々しく腕を伸ばし胸に縋った。
「木本さん」

おいおい。これって、ストックホルム症候群?
まさかの「刷り込み」ってやつ?
まじ?
「教えて……?これが、愛?木本さん。」

清らかな幼い天使の白い顔で蒼太が問う。
脳内でウエストミンスターの祝福の鐘が、りんご~んと高らかに鳴っている。
ハレルヤ!
「うん、蒼太。まぎれもなく、これも愛だな」
木本は大人の階段を上った若い恋人に、信じられない触れるだけのキスを贈った。
あれだけ乱れたのに、蒼太はそれだけで頬を染め身を固くする。

立場上あんなこともしたし、商売上こんなこともしたし、病院へ行くほど酷くはないけど、経験上少しは裂けたから歩くのに当分差しつかえるだろう。
訴えられるかなと思っていたけど、今は、この信じられない幸運に浸るとしよう。
くそぉ、乳臭いションベン小僧のくせに、こうしてみると可愛いじゃねぇか。
ありがとう、セーラームーン・沢木。
愛を知って、確かにこいつは変わった。
……気がする。

「大切にしてやる。俺のモノになれ、蒼太」
「はい。木本さん」

今が、幸せならばそれでいいと思った。






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