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隼と周二 大人の階段上ります 5 

長いキスの後、周二くんはちらと時計を見た。

「あ~っ、やべっ。約束の時間があるから、行くわ、俺」
「あ、待って。待って」
ぼくを手放した、周二くんの腕がふわりと羽ばたいて離れた。
庇護を求める雛鳥のように、思わず声が出た。
「いっ、いっちゃ、やだっ!」
「え?隼?行っちゃいやって?まじか~隼~っ!!くそぉ~っ、たまんねぇっ!」
用事があるのに、わざわざ引き返して助けてくれた周二くんに、ぼくは甘いわがままを言った。
周二くんは、それこそ見ているほうが幸せになるくらいのくしゃくしゃの満面の笑顔を向けると、上機嫌でぼくを抱きしめた。
指が優しく頬を撫ぜる。いい気持。
そっと、下に降りてくるいたずらな手。

「明日さ、いいもんやるから、いい子で待ってろよ?」
「んっ、わかった」
「ほっといても、そろそろ沢木パパが来るだろうから、こいつに思いっきりお仕置きするよう頼んでおけよ。パパに伝言。こいつに『死ぬよりこわいやつ』な。くそぉ、相変わらず殺人的に可愛いぜ、隼。あ、やべっ!出るっ!」
手を振って、周二くんが前かがみでそういいながら部屋を出て行った。
……ぼく、周二くんのこと、好きみたいだ。

からっと軽い音がして、視聴覚室のドアが引かれた。
「おぉ、いい眺めだな、隼。襲われたか?」
「あ!パパ」
「野獣はいないのか?おかしいな、情報だとここに居るはずなんだが。げっ!何、こいつ。」
「生徒会長です。周二くんが助けてくれたの。ぼくね、もう少しで向こうにいきそうになったの」
「えっ!?」
「向こう」と聞いて、瞬時にパパの顔色が変わる。
「ちょっと待て。こいつのせいで、発作が出そうになったのか?!」
「うん。だから、周二くんからの伝言です。『死ぬよりこわいお仕置き、こいつにお願いします』」
(`・ω・´)きりっ!周二くんの怖い顔のまね!←隼

任せろ!と、パパが転がった生徒会長を蹴り起こし、近づいた。
「何だ、せっかくだけど、こいつぁパパの好きなタイプじゃないな。そうだ、下請けに回してやろ」
沢木はどこかに電話をした。
「おい、おまえ。4代目の守役の木本に思い切り可愛がってもらえ。あいつは女にはすこぶる優しいが男には容赦しねぇから、初心者にはきついぞ。おまけに、サッカー選手に失恋したところだしな。」(此花作・パンドラの夏参照)
沢木は涼しげな目もとで、さらりと恐ろしいことを告げた。
「は?可愛がる、は?あなたは誰ですか?校内に部外者の立ち入りは禁じられているはずですが……あ~っ!」
生徒会長の下あごが容赦なく捻られた。
「初めまして。社会に奉仕する国家権力です。あなたをお仕置きすることを、たった今この歩く法律、沢木がきめました。月に代わって、お仕置きよっ!」
「は?タキシード仮面じゃなく、うさぎの方?国家って、警察、ええぇ~~!?お仕置き~~?え?何?沢木~っ!?誰、このひと~~!?」
「ぼくの大好きな、パパです~」

話の見えない生徒会長は、そのまま素っ頓狂な声を出しながらパパに連れられてどこかへ行き、次の日からはぼくの側に近づかないこと、手を出さないことを血判まで押して約束させられた……みたい。
ん~っと。
よくわからないけど、死ぬよりこわいお仕置きって、一体どういうのなんだろう?

翌日、生徒会長は学校に来なかった。
……むしろ、来たくともこれなかった。
翌々日、やっと現れた生徒会長は、隼の姿を見ると脱兎のごとく離れた。

「せんぱ~い。腰曲がっちゃって、何かすごく歩きにくそうですけど、大丈夫ですか~」
隼は遠くからメガホンで声をかけていた。
「いったい、どうしたんですか~」
「君のパパと約束したから、近くに寄らないで~!」
隼がどんなに心配しても、近くに寄るなというから仕方がない。
側に近づこうとすると、腰が曲がったままザリガニの脱皮のように、素早く隼から後ずさる生徒会長だった。
「木本さんに、大人の階段上らせていただきました。あぅ、つっ!」
「ん~っと?木本さんに大人の階段?それって、木本さんの豪華絢爛なお店の名前のことですか~?」
「うっ痛っ、場所はそうです~」
木本の店の名は『螺旋階段』と言うホストクラブだった。
「だったらぼくも、誘ってくれたら良かったのに~」
何も知らない、可愛い恋人がメガホンで大声で叫んでいた。
「周二くんと一緒に、イクのに~~!」

階段の上で黙って聞いていた周二くんは、大爆笑していた。
                    

                  隼と周二 大人の階段上ります (完)






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