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隼と周二 大人の階段上ります 3 

非力なぼくは、力の限り抗っても、あっさりと陥落して上着とシャツを失った。
解かれた二人分のネクタイでカーテン止めに、十字になるように張り付けにされた。
学校でぼくは何をされてるんだろう。
尊敬する先輩に、あっさり裏切られたような気持で悲しくなった。
「……なんで、こんなこと?」
先輩は、ぼくに周二くんと一緒にいた女の子がしていたような事をさせるの?
女の子の代わりをさせるの?
だから、こんな風に扱うの?
先輩も、獣のような声で「イク」の……?

「ぼく、先輩を尊敬しています。だれよりも人望があって、努力家で……いつか、先輩みたいになりたいって思っていました」
そういえば、全校生徒からあつい信頼を注がれている、元の先輩に戻ってくれると思った。
「そう?一皮向けば、男なんて皆同じだよ。ぼくも、醜い欲望で薄汚れた人間だよ。完璧に見せようとする努力は惜しまないけどね。だから、こうして沢木を狙っていても、誰も気付かなかっただろう?ずっと、こうしたかったよ、沢木」
「いやです……いや」
大きな手が、そこかしこを雑に弄る。
「ああああぁ……」
無意識に零れた涙を吸おうと、唇が寄せられる。
先輩がぼくに触れた時、何故だか周二くんと違って、全身に怖気が走りぶわと鳥肌が立った。
「やっだ。さわっちゃ、や」
膝をあわせ必死で身を捩ったぼくに、先輩が迫る。
「色々と調べたよ、君のこと」
「ぼくのこと?」
「君のその幼いしゃべり方は、過去の心的外傷が原因なんだってね。誘拐されたんだろ、昔……」
ずきんと心臓が跳ねた。
「なんっで、それ……?」
自分でも足の力が抜けるのがわかった。
そこに触れられたら、立っていられない恐ろしい発作が起きる。
黒い悪意に呑まれて意識を飛ばされないように、何とか背中で窓枠に縋るぼくの耳朶に、髪を指で掬いながら先輩がささやく。
「ね。犯人に何をされたのか、ぼくに言ってみて」
犯人に?
「なにも。されてない……」
「例えば、こんなこととか?」
「ひっ」
指が、ズボンの中に滑り込み中を探った。
膝をすり合わせて拒もうとするが、力が入らなかった。
奥へ奥へと、長い指が伸ばされてくる。
「何もされなかったの?嘘でしょう?こんな可愛い君に?だとしたら、そいつは特別おかしいやつなんだろうね」
「や、やっ、や~っ」
懸命に逃れようとした背後から手を回して、先輩がぼくの背中をそうっと撫で上げて聞く。

『あの時、あのお兄さんはなんていったの?』

僕の頭の中で、パパの乗る警察車両の赤色灯がけたたましく音を上げて回った。
これ以上、思い出してはだめ、だめ。
ぼくのどこかが壊れてしまう。
カーテンを掴むぼくの眼に、運動場を突っ切って周二くんが裏門から出てゆくのが見えた。
「た、すけてっ!しゅうじくんっ!」
小さく叫んだけど、こんなに遠いんだもの、周二くんはきっと行ってしまう。
もう一度何とか呼ぼうとしたけど、先輩は気が付くと窓を閉めてカーテンを引きぼくを床に転がした。
「何をするかと思ったら。あんなヤツに助けを呼ぼうとするなんてね。まったく。油断も隙もありゃしないね」

冷ややかな視線に晒されて、ぼくは動けなくなっていた。
黒い染みのような過去が、ぞろりと足元からぼくを呑み込もうとしていた。






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