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小説・約束・47 

その夜、良平はもう一度、祖父に呼ばれた。
多額すぎる債権の肩代わりを全部はできないが、凛斗のために続木の本宅と、別荘を買うことにしたと報告を受けた。

「じゃあ、凛斗はあそこにそのまま住めるんですね。」

「人目もあるし、この家に、このまま置くわけにもいくまいよ。」

「それと、もう1つ。」

「今、終戦協議が行われているそうだ。少しでもいい条件の降伏をするために、この前供出米を取りに来た日下君が草稿に関わるそうだ。」

「そうなんだ・・・」

仮にも軍国少年の良平は、脱力した。
いずれは一億総玉砕になるだろうと、配属将校が言っていたのはなんだったんだ。
正義はどこにあるんだろう・・・と自分に聞いても答えは出て来なかった。
知っている軍人の中で、唯一話しができたのは、日下という学徒出陣の若い兵隊だけだった。

「何が正しくて、正しくないかは、自分で決めるんだな。」

祖父は、父と同じようなことを言う。

「僕は、神国日本が負けるなんて思わなかった。」

「分からないことが多すぎて、僕は、本当のことを知りたいです。」

「わたしもだ。」

良平は、唇をかんだ。
だが、良平はまだ知らない。
この国が終戦を迎え、生まれ変わるには、まだたくさんの血が流れなければならなかった。
東京大空襲も、長崎広島の原爆も、これからわずか半年向こうの話だった・・・

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