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隼と周二 狂った夏 4 

沢木と言う暴力団担当の刑事には、さすがの木庭組の面々も揃って頭が上がらない。

「署に何本も電話が入ったんだよね~。校門前で高校生を拉致してゆく所を見ましたって。……説明してくれるか?」
来客用のソファに、言われずとも深く腰を降ろし、ゆっくりと周囲を見渡した。
「ご丁寧にさぁ、警察にナンバーと写メまで届いてるんじゃ、来ないわけにも行かなくてね。ほら、一応、俺このあたりの担当だから」
「そ……そうっすね」
「連れてきたガキは?横付けして、攫ってきたらしいじゃないか?」
床に直接正座していた周二が、頭を下げた。
「すいません。連れて来たのは、俺の同級生です。俺が勝手に好きになって側に置いときたかったんです」
「婦女暴行未遂で年少行く気か?4代目。箔が付きそうだよなぁ」
「いや、そいつ女じゃないんで、年少は勘弁してください。しかもまだ未遂で……」
ゆっくりと、沢木が煙草に火をつけると、ふっと周二に吹き付けた。
「尻の青いひよこが、色気だけは一人前だな」
「すんません」

細くドアが開き、ひょこっと小さな顔が覗き、男達はあわてた。
「あ、ばかっ。ねんね、引っ込んでろ」
「やっぱりパパだぁ!」

沢木に飛びついた隼の嬉しそうな声と裏腹に、ぎょっとしたような顔を向けたのは、周二の守役二人だ。
「げっっ!?」
実際に聞いたことはないが、おそらく蛙を踏み潰した時に出るという、伝説の音を発して彼等は固まった。
「隼、おまえ何だってここにいるんだ?」
隼は小首を傾けて、ん~と、あのね……と可愛らしく考え込んだ。
「修理代を作るの。誰かに、ぼくを買ってもらうの」
「はあ?」
一瞬でざっと血の気が引き、蒼白になったのは保護者の沢木ではなく、先ほどまで剃刀のような怜悧な風貌を見せつけていた男だった。
玉のような冷や汗がどっと噴いたのが傍目にも分かった。
「手っ取り早く、お金を作るには身体を「売る」のが一番なんだって。自分の始末は自分でつける事って、いつもパパが言ってるでしょう?」
「まあな」
「だから、ぼくは覚悟を決めました」
沢木の顔から表情が消えた。
「隼が覚悟を決めたのか?」
「近頃は男の子も売れるから大丈夫だって」
「ほ~ぉ」
沢木は、周囲に視線を巡らせた。

うわ~、それ以上しゃべらないでくれ。
もしここに地獄の番犬、三つ頭のケルベロスが居るのなら、今すぐ俺を連れて行けと周二の守役は思った。
これ以上、ここにいるくらいなら地獄に連れていかれた方がまだましだ。

マル暴の沢木には、その度胸と人心掌握術で警察庁長官と海外マフィアも一目置いているという話だ。
全国で一番有名な組の総長が、若い沢木を養子に欲しいと頭を下げたという話も有名だった。
だがそんな完全無欠の沢木にも、たった一つの泣き所がある。
それが先年亡くした最愛の妻に瓜二つの息子だと言う話だった。
息子に何かあった日には、沢木は残虐な鬼になり「子連れ大魔神」と呼ばれる。  
……らしい。

どうすんの、オレ~と古いCMが脳内で流れた。
「そういや隼。なんで真っ裸(まっぱ)に剥かれてるんだ?しかも手錠(わっぱ)って?さらわれたの、おまえなのか?」
「んっとね。事務所で今後の話し合いをするの。それとね、商品は、きちんと検品しておきましょうって。あのね、たまたまの裏っかわをねぇ、撫で撫でしたよ」
うふふ~と、可愛い笑顔で語るのを、引きつった強面が脂汗を浮かべて聞いていた。

「へえ……納品寸前だったってことか。俺の大切な息子の息子をね~、撫で回されてこわくなかったか。」
「うん、周二くんが一緒だったから、ぼくは平気。怖くなかったよ」

すんません、ホントすんません。
まじ勘弁してください。
周二と愉快な仲間た……木庭組の面々は、生きた心地がしなかった。

「でもどこかに売られちゃうとね、パパに会えなくなるでしょう?そう思ったら、隼、涙が出ちゃった」
「そっか、そんなにパパのこと好きか?」
「んっ、パパが一番大好き」

その年で、裸で父親の膝の上に乗ってるなんて、可愛いけどおかしいぞ、隼。
大好きは俺だけに言え、隼。
俺の膝に後ろ向きに乗れ、隼。
思い切り弄ってやるから。
心の中で、周二はいちゃいちゃと隼を甘やかす父親に嫉妬し、怒り狂っていた。

今日は寝台に張りつけられた隼の小さな唇の端に、周二のものから溢れた白濁が、粘りを持って垂れているはずだった。
強引に狭い場所を拓かれた衝撃に、意識を失ってめいっぱい見開かれた目に、周二が優しく唇を落とすはずだった。
自分にない野生を持った獣に蹂躙されて、小動物は身も心も小刻みに震え、周二の胸にしがみついてほろほろと泣くはずだった。
「あぁ、俺の隼……めっちゃ可愛い」
そう言って、しなやかな野獣が、獲物をしとめる前に甘やかすように追い詰めていたぶり、追い詰めては逃がし、逃げる寸前で掴まえては甘噛みするはずだった。
「やっ……ぃやっ……周二くん、こわいっ……」
優しくしとめるように、幼い茎に指を絡め、縞になってうっ血するほど、握りしめてやるはずだったのに……。
どゆこと?
舐め上げた背中の汗が甘いのも思ったとおりだったと、夢想の中の周二はごちた。
全部、夢で終わった。

現実は厳しい。
男三人が揃って沢木刑事の前に土下座をしていた。
「すんませんでしたっ!」
蕩けるように艶やかに、保護者の膝の上の隼が、周二に向かって極上の笑を向けた。

「日本の警察って優秀だね、周二くん」






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