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小説・約束・45 

「おとうさまから、あなたの部屋へ行けと言われたんだけど・・・。」

もう、秘密にしておくことはない。

「うん。入って、お母さん。」

「・・・誰が、いるの・・・?」

・・・・・

長い時間が流れた。
顔色を失くし、崩れ落ちた母の頬に流れる、静かな涙の滂沱・・・

「リン・・・」

時間が止まった空間で、母は慈愛の目で、長い間眠る子供を覗き込んでいた。
時折、凛斗が苦しそうに息をつくと、少しずつ側に寄る・・・
並んだ母子を見て、良平は納得した。
凛斗と初めてあった時の、どこか懐かしいと思ったのは、母に似ていたからだった。

「リン・・・生きていたのね・・・」

顔を寄せて、鈴の音のように言葉をつむいだ。

「凛斗。」

良平は、耳元で名を呼んだ。
ゆっくりと眼を開ける、その瞬間が好きだ。
光を弾くように、半眼のとき水底の濃い青色だったものが、眼を見張ると薄い水色に一瞬に色が変わる。

「・・・・・?」

消え行く幻を抱きしめようと、腕を伸ばす先に凛斗の求めてやまないものがあった。

「リン。」

静かにひしと抱き合う親子に、良平はちょっともらい泣きした。
勝次は、もらい泣きどころか悲惨な有様に、泣き濡れていた。

「・・・よかったなぁ・・・よかったなぁ、良平。」

「うん。」
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