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世良兄弟仇討譚 月影の鵺 1 

鵺(ぬえ):暗い森の中にすみ、夜、ヒーヒョーと笛を吹くような寂しい声で鳴く。
または、伝説上の妖力をもったばけもの。頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎、正体ははっきりとはしない。




兄の世良弥一郎は、心陰流の使い手で、細身の鋼を思わせる男ぶりだった。
女とも見まごう美貌の義弟の笹目、頑是ない美童の月華と共に、父の残した遺書を手に、力を合わせて仇討を「ひとつ」なし終えたばかりだ。

尾張から流れてきたという最近評判の人気役者が、街角で細身の浪人者に肩を抱かれていた。
義弟「瀬良笹目(せらささめ)」の今の姿は、河原者と言われる一座の花形役者である。
吉沢笹目と名乗り、人気役者らしく紺の着物に白く名を染め抜いた「あやめ浴衣」を身につけている。
その姿はたおやかな柳腰の美丈夫で、歌舞の名手という触れ込みだ。
舞台で立ち役と絡む、女形の絶妙なる色事の所作に、市井の人々は男も女も身を絞って悶えた。
艶のある濡れ羽色の黒髪を豊かに結い上げ、紫の頭巾で顔を覆っていてもその美貌は隠しようも無い。

しなだれかかる役者に、浪人者は軽口をたたいた。
「吉沢笹目殿。貴殿、近頃は大層な人気らしいな」
「あい。おかげさまにて。大商人やら寺社奉行さまやら大店のお内儀やら、色恋のお相手は老若男女引きも切らず。笹目は場末の飯盛り女郎のように働いております。哀れにも男根の俯く(うつむく)暇もございませぬよ」
から……と、連れ立って歩く兄は、楽しげに声を上げた。
「色と芸を売るのが仕事の河原者。陽根自慢の笹目殿とあれば仕方あるまい。」
怒りますよと、笹目は軽く睨んだ後、艶やかに笑った。
「いっそ質の悪い男衆(ひも)に捕まって、哀れな役者は金を絞られ骨抜きになったと言うことにいたしましょうか」
「それが良い。いずれ事が叶えば、一座を離れねばならぬからな」

二人は街はずれの水茶屋(連れ込み)へ消えた。
はらと、頭巾を解くと、凍える秋月のような青ざめた麗しい顔が、そっと浪人者の着物を割って中心ににじり寄った。
「兄上、今宵、笹目は憎い仇の妻女と会いまする」
「うん。殺気を静めに参ったか?」
義弟の腕を取るところりと転がし、たちまち役者は孔雀のように裾をはぐられて、狭い場所を分け入る残酷な怒張に呻いた。
「酷い、あ……にうえ。せめて、唾(つばき)で濡らしてくださらないと……あっ、ご無体な。裂けるっ」
「深いところに印をつけてやろう。女子と肌を合わせても、決して俺を忘れないように。父に似た俺が義母に似たそなたを抱く、禁忌のおぞましさに啼け、笹目。決して敵などに惹かれるなよ」
強く打ち付けられて、一歩二歩、這って逃れようとするのを、粗末な夜具に引き込んで兄は構わず奥に放精した。
「あーーーーっ!」
「く……っ!このまま中に吐精してやろう。厠で腹の痛さに呻くたび、己の業の深さを思い出すのだ。良いな、笹目」
「あぁ……」
左右に広げられた白い足の付け根をきゅうと弄られて、笹目の喉元がのけぞって苦悶の表情を浮かべた。
空しく、上げられた白い足が行き場を失って泳いだ。
「あ、兄上……そこを吸っては、いや……」
兄が頬をすぼめると、笹目が呻き、紫の野郎帽子がずり落ちた。
「長く床にいて女を抱く気なら、一度や二度気をやっておいたほうがいいだろう。わが弟ながら鬼にしても美しいな。笹目、向こうに参ったら、いずれ閻魔もその体で篭絡致せよ」
潤んだ瞳を緩くめぐらせて、笹目は細くしまった足で兄の胴を挟むと、前後にゆらゆらと揺すった。
兄の手は、気をやれといいながら放精させる気は更々なく、根元を強く縛めていた。
「あに、うえ……どうぞ、かった栓を緩めてくださいませ……このままでは、ああっ、ああっ……」
薄く意識が濁ってゆく弟の一物を上下に弄るその手は、鬼ともいえぬほどに優しい。
「あ……にうえっ。あああっ……来るっ、ああーーーーーっ!」
ぐったりと精も根も尽き果てて、先端から薄い露を滲ませたきり、笹目は吐精することなく気をやった。
「淫夫め」
額に流れた一筋の髪を、そっと撫でつけてやりながら、兄は指先で義弟の頬に流れる涙をぬぐった。 

 





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